研究所編

第11話 身体能力や頭脳が見た目に全く合っていない…

「聞いとるのか?」

「あぁ、悪かった。ぼーっとしていたよ」

「もう、しっかりしな!もうあんたは昔のようなか弱い男の子ではないんだからね」

目の前の少女は頬を膨らませながら、俺を睨む。

その表情は愛らしいのだが、

怒っている原因はどう考えても俺だ。

俺は苦笑いを浮かべながら、少女に謝ることしかできない。

「悪いな……」

「まあ、いいわ」

そう言った彼女は、とても可愛らしくて、つい頭を撫でたくなる衝動を抑え込むので必死だ。

こんなことを言ったら、また彼女に怒られてしまうだろうけど……

「それで、なんだったか? 確か、人狼について話をしてもらってた気がするんだが?」

「ええ、そのとおり。 今度はちゃんと聞いてね」

「ああ。」

「人狼のことですが、彼らは夜に人を襲わないと生きていけない」「それは大変ですね」

「そうです、だから人狼になった人は、自分の命を守るために人を襲うしかない」

「でも、そんな人狼を人に戻す方法もあるんでしょ? それを教えてくれるんじゃなかったのかしら?」

俺たちの話に割り込んできたのは、隣に座る俺の同僚、天王寺桜だ。

「う〜ん。正確には、戻す、というより輪廻させる、かな。人狼を殺すには特別な力が必要で、殺すための武器は、ある人が持っているって話だったよね、先生」

「もう私はお前の先生じゃないといつも言っておるではないか、刈谷。」バチバチバチ…

「ごめんなさい、ちょっと調子に乗ったことは認めるよ。だから、その物騒な両手持ちの電撃戦鎚をしまってくれないかな。「…うむむ…」…でも、やっぱり先生は僕にとって先生だよ「やはりお前は許さんわ」ちょっっ、死んじゃうって」

「まったく、お前は昔からそうだな、すぐに私の事を子供扱いする」

目の前の“先生”は、少し拗ねているようだったが、その姿すら、100人が見たら100人が可愛いと思うものだろう。

実際、今も周りにいる職員や子供たちが微笑ましい顔をしながらこちらを見ている。

しかし、この場において、この先生をからかいたい気持ちがある者は俺以外一人もいないだろう。

なぜなら、この人は、ただの子供好きの優しい女性ではなく、ここ、世界最高峰のローゼンベルグ大学の裏部門の一つ、地下兵器研究所の主任研究員兼所長であり、表では工学部機械工学科の特任教授として弱冠20歳で世界に名を轟かせている天才なのだから。特殊な病のせいで成長がすごく遅く、まだ10歳にも満たないようにしか見えないことを考えても、ほぼ完璧と言っていいと思う。“先生”の名は、……近衛志穂。その名の通り、平安時代より続くあの近衛家の血を受け継いでいる。ただ、前当主の近衛実典が誰にも、そう、マスコミはもちろん現当主である彼の長男、近衛芳樹にも知られないように教育していたせいでこの学校にも彼女の本名を知らないものは多い。

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