第7話 苦戦と敗北

彼が速すぎて彼の能力は…などとゆったり考えている暇もないですが。

侮れないと異名についているだけあって見た目と動きが一致していません。

従軍でもしていたのならば、毒や拘束なんかの搦手は効果が弱そうです。でも、まずはやってみないとわかりません。私は、袖口に仕込んだ毒針弾トキシックニードルボムを取り出して投擲しましたが、爆発で散る針も含めて全て避けられてしまいます。

「ふむ……なかなかの威力だね。でも、まだまだだ。こんなんじゃあ私を倒すことは到底できないよ。」

「そうですか……。残念です!」

私は、月の石で身体強化を行い、一気に距離を詰め、刀で斬ろうとしましたが、なんと腕で受け止められてしまいました。半ばまで切ったものの、彼が力を入れると血が止まり、傷が癒えていきます

「ほほう、この私の腕をこうまで傷つけるとは大したものだ。だがな、甘いよ。」先程とは全く違う若々しい声色に顔を反射的に上げてしまい、炯々と光る彼の目に視線を合わせた刹那、身体が硬直。その時初めて、あたしは彼が《魔眼》持ちだったのだと悟りました。

しかも気づけば、彼の体は20代と見紛うかに老いが消え去り、体中が分厚い筋肉に覆われているではありませんか。

「降参するんだ。そうすれば君は殺さないであげるよ。」そう耳元で囁いてきます

「殺してはならないはずですし、そもそも私が降参するとでもお思いですか?」

私がここまで強気な姿勢に出たのには、実は理由があります。勝ち筋が見えたのです。

「そうか。なら……仕方ないな。死なないように頑張ってくれよ?」

そう言うと、彼は私の方に向き、拳を構えました。そして、私はその拳に向かって、全速力で駆け出します。

「ん?なんだいそれは。まさか、特攻でもするつもりかい、死なば諸共ってか?残念だが、それはかなわないよ。【浸透拳・空殺】」

「っぐぅ!?」

彼が、彼の前の空間を殴ると、私に衝撃が突き抜けていき、壁に激突しました。

この人がまだ技を隠していることは明らかに分かっていましたが、少し強いですね。

でも、これなら手持ちの技で対応できそうです。

「はははははは!これが俺の能力さ。空間を飛ばして相手の体内に衝撃が浸透して内部を破壊する。つまり、どんな頑丈な奴でも耐えられるものじゃないのさ。だからもう諦めろよ、お前じゃ俺には勝てねえ!」

「そうでしょうか……。私は、死ぬわけには行かないのですよ。【幻に沈めスワローイングミラージュ】」私は立ち上がります。

「まだ立てるのかよ……。まあいいや。これで終わりだ。【浸透拳・焉式】」彼が技名を言った途端、莫大な量の衝撃波が四方八方に飛び始めました。しかし、私の周囲から溢れ出していく【幻に沈め】の黒い気に飲み込まれて消えていきます。おそらくもう彼自身幻しか見えなくなっていることでしょう。

そしてついに、彼が、私が起きろと言うまで起きられない呪眠についてしまいました。こうなればもう簡単です。彼の首を桜毒に濡れた短剣で刺し、……「そこまで!勝者成田恭也!」無事勝つことができました。

マスターの温情により、明日は休んでいいことになりました。次はいよいよ最初に告げられた第弐位セカンド、『時見』の進藤愛花氏に相見えることとなります。

「さぁ、次の相手はボクだよ。『時見』こと第弐位セカンドの進藤愛花さ。」

「はい、よろしくお願いします。」

「うん、よろしく。それじゃあ早速始めるけど、いいよね?」「はい、いつでもどうぞ」

こうして戦闘が始まりました。異名から察するに彼女はおそらく時間操作系の能力なのでしょう。

彼女の体が光ったと思ったら一瞬で目の前に現れ、斬撃を放ってきました。

それをなんとか受け止め、鍔迫り合いとなりましたが、そこで突然視界が暗転し、意識を失ってしまったのでした。

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