第5話 第一戦

「承知致しました。」

「ルールは簡単です。どちらか一方が戦闘不能になるまで戦い続けてください。双方ともに人狼系であることを考慮して、武器は何でもありとします。これまでの入隊試験で【時見】こと序列第弐位、進藤愛花氏に勝った者はいないので、あなたには勝ってもらえることを期待していますよ。」

「全力を尽くします。」

「では、始め!」

こうして、私の人狼としての初の戦いが始まったのです。

まずは、遠距離攻撃からいきましょう。私は袖口から薄柔刃を取り出し、鞭のごとく振るいました。「おっと、危ねぇな。でもまだまだ甘ぇよ!」そう言うと彼は、腰に下げていた刀を抜き取り、刀身を使って弾き落としてしまいました。防御が難しいはずの撓り刃を防げるという時点でこの方のレベルの高さがよくわかります。しかし、ここで引くわけには参りません。私は、素早く袖口に手を突っ込み、鎖鎌を取り出すと、そのまま投げつけました。

「こりゃまた珍しいもんを。だがな、当たらなきゃ意味ねぇんだよ!!」

もとより初撃で当てるつもりはありません。回避したところで分銅を掴み、投げ落としつつ引き寄せることで背後から斬る方針で行きましょう。

「ふむ、なかなか考えた作戦だな。だが、俺相手には無意味だぜ?」

確かに、彼の動きは常人の目には止まらぬ速さと言っていいものでした。

しかし、私も戦闘執事としてそれなりに鍛えております。そう簡単に負ける気はいたしません。

私は、持ち前の眼を生かして相手を視つつ、手の細かい動きで不規則な軌道を鎌に描かせ、撹乱していきます

「くっ、なかなかやるじゃねぇか。なら、こっちもそれなりでいかねぇとだな。」

そう言うと、彼は精度の高さと連発の速さで知られる機械誘導拳銃をホルスターから取り出し、乱射してきました。

やはり簡単には勝たせてもらえないようです。私も1段階ギアを上げましょう。私は、懐に手を入れると、袖口の中から短剣を取り出し、投擲しました。「おいおい、そんなものまで隠し持っていたのか。まあ、無駄だったようだがな。」

確かに、投げたものは全て彼の銃弾に弾かれ、地面に落ちていきました。しかし、こちらは脳波誘導型。そして生半可な物質では傷つけることすらできないスペシャルアロイ『アルカラン』で作られた短剣です。これで終わりではありません。 短剣は弾かれつつも正確に相手の弾丸を切り裂き、「機械誘導」と言う強みを削っていきました。そして、ついに、彼の体に数本の短剣が刺さります。

私が念の為とさらにもう一本の短剣を取り出そうとすると……「そこまで!勝者成田恭也!」審判の掛け声が聞こえてきました。

「流石このギルドに入ろうとするだけある。まさかあの弾幕を初見で対処してくるとは思わなかったよ。」

「いえ、こちらこそありがとうございました。しかし、なぜ最初から銃を使わなかったのですか?」

「あぁ、それは、あんたが遠距離戦が得意そうだと判断したからだよ。」

「なるほど、そういうことでしたか。」

「まぁ、これからどんどんキツくなってくとは思うが、頑張ってくれや」

「ありがとうございます。精進させていただきます。」

「おう、そうしてくれ。んじゃ俺はそろそろ行くわ。」

「はい、失礼いたします。」

「ああ、それと一つ言い忘れていたが、このギルドには序列制度がある。低位レッサー中位ミディアム高位エルダー最高位ロードキングの5つだ。そして、最高位の定員は7名、それぞれが王から称号をもらっている別名『七鬼神』だ。俺は高位の永世覇者、大野義紘ってもんだが、今のロードたちはかなりやばいぞ、気をつけろ。」

「承知致しました。肝に命じておきます。」

「よし、話は終わったか?じゃあ今日はゆっくり休んでくれよ、成田くん。明日は早速七鬼神に相見えることになるだろうからね。」

「わかりました。では、お言葉に甘えて失礼させていただきます。」

こうして私は訓練場を後にしました。

翌日、私は指定された場所に向かいました。そこは、街の中心にある大きな建物でした。

「ようこそ、ムゲンの闘技場フィフス・コロシアムへ」出迎えてくれた方はまさに好青年然としていました。

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