第壱幕

執事編

第2話 執事編

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不肖、成田恭也、戦う執事として心の平静を信条として生きてきておりましたが、やはり突然のゲームの開催発表には驚きました。

「こんな世界だ。老い先短く、敵の多い私はすぐに死ぬだろう。君はこれからこの羽織とともに自由に旅すると良い。」白狼のお館様はそうおっしゃい、昔日より私が使っていた羽織を自ら手渡してくださいました。

命を受ければ、従うのが執事たるもの。私は、数多ある戦場で培った勘に従って強くなることを目的とした旅に出ることにしました。

いよいよ殺し合いが始まるようです。いやはや、私がこの手で再び人を殺める時が来るとは思っても見ませんでした。

私の『役職』は、この流れでお分かりのように、『人狼』…ではなく、『一匹狼』のようです。

説明書きには、人間サイドを死に導きつつ、人狼たちを追放させるという、難易度が高いがスリルや殺戮の快感を味わいやすい役職、と書かれておりますが、やはりここはお館様の意志を考えると少し読み替えたくなります。まさに望み通りの役職でございます。この役職は、他のプレイヤーにバレてしまうと、途端に不利になりますので、気をつけなければなりませんね。

そういえば、『役職』について詳しいことは書いてありませんでしたが、このゲームは誰が誰だかわからない状態でスタートするのでしょうか?

恐ろしいものです…… そして、ゲームホストが言っていたことを思い出してみましょう

【ギルド】は、1度決めたら戻れない、と つまり、ここで所属【ギルド】を決めてしまったら、他の【ギルド】は選べない、ということなのでしょう。まあ、仕様として一匹狼のギルドは人狼のギルドに一部内包されているようなのでどうでもいいといえばどうでもいいのですが。

人間の皆さんにとって、人狼は脅威の存在ではあるかもしれませんが、人狼の皆さんは人狼の皆さんで大変そうですね。

さて、そろそろ夜になるようです。

まずは、ギルドウォッチを確認しておきましょう。

ふむ、この機械はやはり便利ですね。

この機能を使えば、自分が人間なのか人狼なのかすぐにわかる。そして、自分のいる位置も。しかもインターネットに接続すればここから連絡や情報発信もできるようです。ただ、寝るときや料理をするときなどにゴツゴツして邪魔なのが欠点ですね…神器なのですから肌の中に入れられないのでしょうか。

それは置いておいて、それでは早速、人狼を見つけてしまいましょう。

私はギルドウォッチを操作して、【ギルド】メンバーを確認することにしました。………………

なるほど、そういうことですか……

『役職』の確認を終えた後、私は早速動き出すことにしました。

幸い、第3勢力とはいえ人狼に近い孤狼には、夜のターンというものが使えるようですし、これを使って人に見つからないように考えを巡らせながら暗器で御霊を切りましょうかね。

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