青い羽音

第2話

スマホを確認すると、見慣れないアプリのポップアップが出ていた。

「バズリ体験してみませんか？」

うまく認知できない言葉の並びが、頭がぼーっとする寝起きの状態のせいなのか一瞬わからなかった。ポップアップには、今まで見たことがないアイコンが出ている。怪しみつつもタップしてみると、ブラウザが立ち上がり広告サイトが表示された。

「特別割引価格、500円で１バズりできます。」

そんな内容のページだった。ポップアップ以上に怪しい文言の載ったサイトだったけれども、好奇心が非日常的な体験を求めて、クレカの登録まですぐに済ませてしまった。

試しに500円で1バズリを買ってみると、ホーム画面の青い鳥マークにプラス1のサインがついている。

ツイッターを開いて何を投稿するかしばらく迷ったあと、さっき買った「近所のコンビニで買ったアイス」を写真と共に投稿した。

少し興奮気味になって数分TLを見ていたが、いつもと変わりない雑多なつぶやきが流れるだけで、宣伝効果があるようには見えない。そうしているうちに、眠気が再び襲ってきた。

◆ ◆ ◆ ◆

次に目が覚めたのは、鳴り止まない通知の音に起こされてのことだった。

近所で買ったコンビニのアイスが、投稿から一時間ですでに3万いいねを稼いでいる。いいねやRTをしているアカウントもサクラではないみたいだった。

あの広告を使えば、本当になんでも、何の投稿でもバズることができるのか…？ 圭佑は考えた。

絶対にバズることがないものを投稿してみたい。。

う○こを撮影して投稿してみようか？？

さすがに、やめておこう。。

圭佑はまた少し考えて、

「今日はいていた靴下に穴が空いていたw」

と打ち込んだ。

これって、絶対バズらないよね。。

変に面白い要素とかはいってないよね？？

ねこは写ってないし、柄もない靴下だから、面白みは一切消せたはずだよね。

バズリ要素は全部排除できてるよね？？

なんの変哲もない灰色の靴下に、大きい穴が空いている写真を撮った。

この投稿は、30分で1万いいねを超えた。

コメントが15件ついていて、大体靴下を褒めてくれている。何の言語かわからない外国人のコメントもあった。

さらにコメントを見ていると、新たにポップアップが出てきた。

有名人にリプライしてもらいませんか？

「有名人ブースト、１回 100円です」

「+ 100円で指定のアカウントに必ずコメント貰えます」

圭佑はほとんど考えることなく、こう思った。

大好きなあいに返信もらいたい..!

あいとはポップミュージックのアーティストで、圭佑は大ファンである。

後は、あのEVメーカーの社長とかにもコメントもらいたいかな。

次の日起きると、山ほどの返信の中に、目的のものを見つけた。

EVメーカー社長　「cool sox ;)」

あい

「ほんま、それな！

わたしのくつしたも、今日は破れてたー！！！

はーと」

あいのくつしたの写真が返信されていた。

これは言葉にできなかった。あまりに嬉しくて、めまいがするような気持ちだった。

これは、すごい。。！

ネットニュースにもなっていて、朝の情報番組でも取り上げたいと言われた。

もっと意味のある投稿ができないだろうか。

こんなくだらないものじゃなくて、何を投稿すればいいんだろう。