青い羽音

北見 遥

第1話 バズリ体験

圭佑のスマホは、通知が鳴り止まなかった。


つい2時間前ツイッターに投稿した、近所のコンビニで買ったアイスの写真がバズっている。


自分で言うのも何だが、どうしてこんなしょーもないツイートが2.5万いいね、1万リツイートももらえるんだろう。


どうやらリツイートしているアカウントも、偽アカウントじゃないみたいで、一般のアカウントが多そうだ。何件かリプライも来ているが「やっぱ定番のやつはいいよね」「ソーダ味が一番」などと一般的なリプライのようだった。


こうやっている間も通知が鳴り止まない。



土曜日のお昼に自室のベットで目が覚める。部屋の窓からは外が晴れているのか曇っているのかわからない。適当にご飯を済ませて、家事掃除に取り掛かる。それが済むと、特に用事もないのでスマホを見ながら一人で椅子に座る。


友達がインスタでキャンプの写真を投稿している。今日は晴れているのかもしれない。


ツイッターを見ると、大好きなアーティストや、いつも絵を投稿している人がつぶやいていた。


トレンドを見ると、政治的なネタで煽ったり、何かの事件の犯人を晒したり、喧嘩したりする人も目につく。特段、言い争いを見たいわけではないが、小さい画面に流れる細切れの情報を漫然と眺めている。平日にためていた家事を一気に片付けてエネルギーを使い果たすと、しばらくは座ってスマホを見ていることしかできない。


そういえば、最近は戦争の話をしている人たちも多い。



しばらくスマホを眺めたあと、圭佑は寝落ちしていたことに気づいた。リビングの机の上にうつ伏せになった状態で目覚めて、手にはスマホを握りしめていたことに気づく。窓の外は薄暗くなっていて長い間寝てしまっていたようだった。


時間を確認しようと画面を見ると、見慣れないアプリのポップアップが出ていた。「バズリ体験してみませんか?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る