第五話 ー地下闘技場ー
夕暮れがオレンジ色に染めた海がさざ波立て、カモメが飛び交い心地よい風が吹く。
港の広々とした空間に三つの倉庫、その並んだ倉庫の真ん中に入ると数多くの人々が居る。
入口らしき扉の前に黒服の男が二人とフードを被りその中から覗き込む真っ白でニッコリと笑顔な仮面を付けた低身長の男が刃の存在に気が付くと両腕を大振りに手を振り、人混みを縫うように進み素早く目の前に現れた、誰一人にかすることなくその場を通ったことも気づかせず。
「やぁやぁやぁ!! 我が闘技場のチャンピオンである刃っちじゃないか。して、このお隣さんは?」
「今日はこいつの修行として使わせてもらおうと思ってな」
「ほうほうほう、チャンピオン直々に推薦ですか、それは楽しみだ。ささ、有象無象はさておき、お二人さんはこちらに」
──仮面の男の後ろを刃と護は付いて歩き。
「この方は?」
「この地下闘技場を管理してる”スマイリー”。素性は誰も知らん、それが例え地下闘技場の奴等だとしても」
「やや! 私の紹介ですか? チーム”
と、スマイリーは丁寧にお辞儀をして見せた。
「この地下闘技場は各場所で活動している腕自慢の吸血鬼が集まる場所でして、闘技者に観客は金銭を掛けたり純粋にこの闘技場のトップを目指す者も。──話してたら付きましたな、それでは護っちを借りてくよん」
護は刃と分かれ闘技者用の部屋へと向かって歩を進めていく。
薄暗い廊下の先にある一室に入ると自分の番になるまでベンチに座って待っていると。
「軽く地下闘技場の説明するけどOK?」
「──はい」
「まぁまぁそんなに固くならないで楽しんでこうっ!! で、説明なんだけど戦いに関しては何でもあり! 武器と血液の持ち込みは禁止。それだけだから楽しんで」
女性のMCが手にマイクを持ち機械仕掛けのアームに取り付けられた人一人が入れる空間に立ち。
「今宵もやって参りました! 今回の闘技者であるチャレンジャーはこいつらだ!!」
掛け声と共に巨大な電子蛍光板に映し出されたトーナメント表、歓声が鳴り響き渡った。
一回戦の相手は”
護が鳥籠状の大きなリングに入ると外から南京錠で鍵を閉められ。
「どうして鍵閉めてるんですか!?」
「あ? 闘技者が戦いを放棄して逃がさないようにする為だろ。お前もしかして何も知らないのか?」
「は、はい」
「言っとくが死ぬか戦闘不能になるまで終わらないからな? リングに上がった以上覚悟決めとけ」
──そ、そんな。
死ぬまでこのリングから出られないなんてどうしたら。
「護るとか言ったか? 見た感じ新人ぽいけど悪いが勝たせてもらう」
袖の長い中華服に身を包んだつんつん頭の男が喋りかけてきた。
「それでは観客の皆様カウトダウンの方を御一緒に!! 三・二・一、ファイト!」
カウトダウンが終わると同時くらいに翔太は床に両手を付き、袖の中から複数の真っ赤な蛇が蠢き床を這う。
その蛇達は護を取り囲み行く場所を与えない、間違ってでも動けば噛まれない保証はなかった。
「おっと、無闇に動かない方がいいぜ? 俺の血技”
「僕だってやれるだけの事を!!」
護は少し多めの血液を消費する事で四肢を
その場から高く跳躍すると
空中から素早く拳を何度も振るい何発もの拳圧によりリングを這う蛇諸共翔太を殴り付ける。
ふぅ──、
今全力くを出して負傷しないで済むのは十パーセント、それも
これなら五パーセントは出せる、素の状態で。
「やるじゃねぇか……」
翔太は血をリングに吐き飛ばすと。
「これでもくらえや!! ”
片腕を突き伸ばすと袖から無数の蛇が出現し、護に噛み付き絡めとる。
そのまま振り回し鉄格子、リング床に何度も何度も叩き付けた。
血を垂れ流し毒のせいなのか叩き付けられているせいなのか意識が朦朧とする中でこの状況をどう打破するか、何か打つ手はないかと思考する。
血液の量で形状を変える事が出来る……、それなら!
「”
右手の
蛇から解き放たれた護はリングに足が着くなり駆け出し元の
その勢いで翔太は鉄格子に衝突し気絶、護も程なくして蛇の毒が回りその場に崩れ落ちる。
どうにか勝てた──、次もこのまま。
勝負の決着がつくとMCの女性がマイクを手に取り。
「──な、なんと! この戦いを制したのは新人チャレンジャーにして旧チャンピオン直々推薦でやってきた”倉元護”選手だぁ!!!!」
MCの声と共に観客の熱狂的な叫び声が会場全体に響き渡たった。
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