第三話 ー吸血鬼の戦い方ー
「おい、起きろ!」
刃は気絶した護を叩き起す。
「ななんの音!? ──あ!! 護!」
とてつもない騒音に驚いた佳奈が階段を駆け下りると。
「あ? 猫又、なんか用か?」
「なんか用か? じゃないよ! 一体何があったの、護気絶してるみたいだし」
「──ぶん殴った」
「なんでそんなことしたの!!」
「俺のやり方で教える、って言っただろ? 戦い方もコントロールも」
「にしても──」
「──痛ったー!! 急に何するんですか!」
ようやく意識を取り戻した護が飛び起きると叫び声の様な大きな声で刃に話しかけた。
「吸血鬼だろ? それぐらい我慢しろよ。自己再生すんだから」
「え? そうなんですか?」
「やり方が雑だよ。私がちゃんと説明するね?」
「んだよ、なら最初っから猫又が教えれば良かっただろ、めんどくせぇ」
そんな事を言うと佳奈が睨みを効かせ、バツが悪くなった刃は顔を逸らす。
「吸血鬼には基本的に二つの固有能力があるの! 『自己再生』と『
殴られて少し崩れた護の頬がグジュグジュ、と耳障りな音を立てながら修復されていく。
「血力について説明するからサンドバックの所に行こうか」
「分かりました」
──護が立ち上がると二人はサンドバックに向かい、前に立つと佳奈は手招きして刃を呼んだ。
「試しにやってみせてよ、刃」
「しょうがねぇな」
刃はサンドバックの前に立つと右足を下げ左拳を突き立てる、その姿はボクサーの様な。
すると腰を捻り右ストレートがサンドバックに命中すると、留め具が軋む音をたて一回転する程にサンドバックが浮いた。
「俺の血道術ならこんなもんか」
「す、凄い。どうやったらそんな力が?」
「先ずは水が流れるイメージをしてみて? その流れを右手に集中させる感じかな。血道術の扱いが上手く出来ると、瞬時に肉体を固めたり爆発的な力を生み出せるの」
「分かりました、やってみます!」
瞼を静かに閉じると先程聞いたイメージを連想させ、血液の流れが強く腕、手、指先にいくのが何となく分かる。
今だ!! と言わんばかりに右拳を振るうとサンドバックの留め具が粉砕し宙を舞うと地面に落ち、中の砂が床に散らばった。
「出来た。──あぁぁぁぁ!! て、手が!」
余りの激痛に自身の腕を見やると腕はねじ切れ折れた骨が皮膚を貫き肉が見える程悲惨な状態に。
「これを今すぐ食べて!」
「おい! それは──」
佳奈はポケットから心臓のような形をした赤い何かを無理やり護の口に入れると、一瞬にして傷が癒え。
「し、死ぬかと思った……。先程食べさせてくれた物って」
「護を助けた時に手に入れた『吸血鬼の
「それってまずい行為だったんじゃ……」
「再生するまで痛みが続くより良いかと思って」
ありがたい行いだし痛みに苦しみ続けるよりは良いけど、楽観的過ぎる考えだなぁ。
倒れ込んでいた護は起き上がり、負傷していた右手を握っては開いて、腕を振ってみたりと回復を確認する。
本当に一瞬でこんな回復するんだ、あんなにボロボロだった右手が。
「回復したことだしめんどくせぇけど、組手の続きやるぞ!」
「え!! まだやるんですか? 治ったばかりなのに」
「再生限度があるといえど不死身に近い身体なんだ、今日で吸血鬼の戦い方の基本は全て教える」
そういうと刃は両腕を振り下ろし赤く輝く刃を生やした。
「俺の
「なんですかアレは!」
「私達吸血鬼には固有能力の他に特殊能力があってそれが『血技』。自身の性格や欲望によって発現するだよ」
欲望……、僕の欲望って一体何なんだろう。
「来ないならこっちからまた行くぜ!! 殺す気でやるから覚悟しとけよ!」
「──ちょ、ちょ」
戦いの最中考え事をしてるとまたも刃が一瞬にして間合いを詰め。
「血道術で五感を研ぎ澄まして!」
「そんな事を急に言われても。わっ、ちょ、危ない」
よたよた、と危なっかしい足取りではあるが、間一髪で振りかざされる斬撃を躱していく。
「ちったぁ吸血鬼らしい戦いが出来るかもな、おぼつかないが」
「そんな事言わないで褒めてくださいよ、初めてなんですから」
「だったらこれはどうよ!!」
床を蹴り天高くまで飛び上がると両腕に鳥の羽のような赤い刃を生やし、両腕を振り下ろす事で全てのその羽の刃一枚一枚が護を襲う。
ほ、本当に刃君は僕を殺す気で。
このままじゃ本当に死んじゃう! もっと僕に力があれば。
何も失わずに済むだけの 護れる力が!!
「──うわぁぁぁぁぁ!!」
自身の頭を守るようにして上げられた腕が斬れ、身体が斬れ、辺りは煙幕で覆われていく。
──煙幕が薄れていき見えてきた護の姿、うっすらと紅蓮に輝くその身体が顕となった。
「へぇ、それが護の血技か」
「全身真っ赤だね! 血技に目覚めたって事は頭にその力の名前が浮かんだ筈だよ」
「僕の血技……『
新たな力に驚きながらも変わり果てた自身の紅い肌を見渡す。
これで僕も皆と同じ特殊能力が。
──もしかしたらこの力を磨けば家族を殺した彼奴を倒す事も出来るかもしれない、いつか必ずこの手で。
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