第一話 ー吸血鬼ー
「おい! 急に何処に行くんだ、
パーカーの少女を追って建物の上から降りてきた黒いシャツに赤いネクタイを締め。
白のスラックスに黒い革靴を履き黒髪を後頭部で1本に纏めた少年が。
「遅いよ、
「──たく、面倒事にすぐ首をつっこみやがる」
「困ってる人を助けるのが私達でしょ? 人類と私達吸血鬼の共存が理念なんだから」
「あーはいはい。めんどくせぇ」
刃は頭を搔くと片腕に赤い刃を生やした。
「何だお前等? なんで餌を守ろうとする。もしやお前等は──」
「──はい、終わり。帰るぞ」
気が付くと刃は男の背後におり、ゴロッ、と首が地面に落ち膝から崩れるようにして倒れた。
倒れた男はみるみる砂へと変わり赤く光る心臓のような形の物を残して砂は宙を舞い、刃は意識を失っている護の元へと歩を進める。
「おい、起きろ。起きねぇと食っちまうぞ」
「その言い方は辞めた方が良いよ、色々語弊がうまれそうだから」
刃は護の肩を掴むと揺さぶり起こそうとする。
「──ん、んーん。 わっ!! 辞めてください、殺さないで」
「うるせぇ……。お前を殺したりなんかしねぇから少し落ち着け」
「え? でも、貴方達の目……。さっきまで居たスーツの人と同じ」
「そうだよ、私達も吸血鬼だからね。だけど、私達は無闇に人を襲ったりしないから。それに──」
「お前も吸血鬼だろ? 匂いは変わってるけど。その目」
目を見られた事に驚き咄嗟にフードで顔を隠す。
「ん? ちょっとよく顔見せてみろ」
刃は顎を支えるようにして掴み振り向かせ、まじまじと護の顔を見る。
「お前……。どのくらい血を飲んでないんだ? 顔に亀裂が入りだしてる」
「──ほんとだ!」
「え? 入院もしてたので3ヶ月以上くらいは」
「よくそんなに飲まずに生きてられたもんだ。吸血鬼の渇きはエグいってのに」
「私達に付いて来ると良いよ」
刃と佳奈が踵を返すと背に向けて。
「──で、でも!!」
「めんどくせぇな。付いて来なきゃお前は死ぬ! それだけのこと。俺はお前の命なんてどうでも良いんだよ」
「そんな冷たくしてると友達なくすよ?」
「うっせぇ……」
「ほら、行こ!」
佳奈が振り向き手を差し伸べた。
護はその手を取ると立ち上がり、二人に付いて進んで行く。
「じゃーん。ここが私達のアジト"鳥籠"だよ!で、自己紹介が遅れちゃったけど私は『
「俺は『
「──僕は倉元護です」
オレンジ色の照明でライティングされ、ダーツ台や所々に観葉植物が置かれている。
カウンター席の奥にはLEDライトがズラっと並べられた酒瓶で反射し煌びやかに。
大人な雰囲気でいてオシャレなBARになっていた。
「夜はBARなんだけどマスターが不在だからやってないんだ、昼に食事だけ提供してるの。とりあえず二階に行こう」
「う、うん」
──三人は階段を上がり従業員用の休憩室に入る。
「ここに座って待ってて、今持ってくるから」
部屋に入るとソファーに座って待たされ。
佳奈は冷蔵庫から瓶を取り出しコップを手に持ち歩き出す。
護の向かいにあるテーブルにコップを置き、酒瓶から赤くサラサラとした液体を注いだ。
その液体からは微かながらも獣の香りとハーブのような匂いが。
「──これは?」
「うちで取り扱ってる商品の試作品だよ。飲んでみな? 美味しいと思うから」
「分かりました」
言われるがままにコップを手に取ると赤い液体を口内に流し込む。
ハーブの香しい匂いに負けじと野性みのある香りが口内に広がり、鼻腔をくすぐる。
「これはね、吸血鬼用のドリンクで動物の血液と臭い消しと香り付けも兼ねたハーブをブレンドした飲み物なんだ。そこにお酒を混ぜた商品なんかもあって結構売れてるっぽい」
動物の血液!?
血液という単語に思はず含んでいた液体を口から吹き出してしまった護。
「うえぇ、何するんだよ全く。服が濡れちゃったじゃんか」
「ご、ごめん。血液って言われたから思わず」
「勿体ねぇことしてんじゃねぇよ。誰が掃除すると思ってんだ」
「でも、顔の亀裂は無くなったみたいだね。取り敢えずこの一瓶は飲み干し時なよ、3ヶ月も飲んでなかったんだから」
そんなやり取りをしてると休憩室の扉が勢いよく開かれ。
「──うるさいぞ!! 」
部屋に入ってきたのは背丈が小さく眼帯をし片手に兎のぬいぐるみを抱えたワンピース姿の小学四年生くらいの幼女だった。
幼女は部屋に入るなり佳奈の膝上にちょこんと座る。
「紹介するね、この子は『
どうにか瓶に入っていた液体を飲み干し終え。
「一体吸血鬼ってなんなんですか? 佳奈ちゃんの言うメンバーって」
「そうだよね、急にこんな所に連れてこられて混乱してると思うけど説明するね」
佳奈の説明によると、この日本に留まらず全世界で吸血鬼という者が存在し、人に紛れて暮らしているらしい。
その事は一部の人間しかしらなかったのだが、ここ最近活発に行動する吸血鬼が増え始め、今では時折ニュース何かでも取り上げられたりしているとか。
そして吸血鬼には吸血鬼のコミュニティがあり、少数から大人数でチームを作り何かしらの行動をし。
佳奈をリーダーとしたチーム『ピースフル』は人間と吸血鬼の共存を目指して行動を起こしており、人間の血液は摂取せずに動物の血液だけで生活をしている。
「ま、こんな感じかな? あとは個人差あるけど一週間に一度は血液摂取しないと渇きに襲われたり、吸血鬼内で人間の血液を摂取している者を肉食と呼んだり、動物の血液を摂取する者を草食なんて呼ぶ奴らもいる」
「ありがとうございます、色々教えてくれて」
「良いよ良いよ、気にしないで。新人の吸血鬼には優しくしないと」
「そんなに吸血鬼になる人がいるんですか?」
「まぁまぁだけどいるね! 赤い満月の夜に一度死んだ者が稀に」
一度死んだ人が吸血鬼に──それって僕も。
「吸血鬼として蘇った人達には何らかの叶えたい強い『欲望』があるんだよ。それが原因でさっきも言ったけど、満月の夜に復活するの」
「それじゃ、ここに居る皆さんにも?」
「そうね」
「まぁ、俺にもあったな」
「うむ!!」
てことは僕はあの時に一度死んで蘇った、何らかの欲望を叶える為に……。
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