第54話 ラムネちゃんからの情報
「お腹が空いたかしら?」
ロザリー様の、その一言で……私は思い出した。
そうだ!ご飯!ラムネちゃんは、お腹を空かせているに違いない。
一ヶ月も、何も食べていなかったんだから?
まぁ……実際、死んでたんだけど?
朝起きたばかりだったけど、私以外は今日も学園に登校するので、朝食の準備は出来ているはずだった。
「ご飯、食べに行く?」
「はい……です」
「お姉様?」
「ラムには、払うお金も……無いんです」
「大丈夫だよ?お金の事は気にしないで?実は、この家はすっごいお金持ちなんだから!……私も、この家のご主人様、マリィ様の愛人だから……住まわせて貰ってるんだけど……あははぁ♡」
うん、ちょっと笑えないかな?
「ふーん、メリッサは、あの聖女の女神の愛人だったのよ?」
「うん……でも、ちゃんと爵位は貰ったから?」
居候だけど……ニートじゃ無いんだよ?
そして……私は、ロザリー様とリリー、ラムネちゃんを連れて食堂に移動した。
食堂に行くと、エミリィとマリィ様のお姉様が、食べ終えた食器の片付けをしていたので、学園に行く他の子達は、もう家を出たみたいだった。
「おはようございます!お姉様!」
「あら、おはよう!メリッサちゃん、マリィは、もう学園に行ったわよ?」
「はい……私は、今日も休みなんです……」
「そうなの?まぁ、いいけど……直ぐに朝食を用意するわね?えっと、四人分でいい?」
「はい!お願いします!」
マリィ様のお姉様は、私の背中の翼の事にも、私が連れて来た三人についても……聞いては来なかった。
結構、目立つんだけどなぁ……この翼。
多分、マリィ様から翼の事も……三人の事も聞いているのかもしれない。
マリィ様と、そのお姉様は……その、特に仲良しだから?
私は、マリィ様の部屋で……お姉様とマリィ様がエッチな事をしている所を思い出していた……。
はぁ……凄かったな……。
「えっと、メリッサ様のお姉様です?」
「ああ……違うよ?今の方は、マリィ様のお姉様だよ?……そっか、ラムネちゃんは……まだマリィ様と顔を合わせて無いんだっけ?」
「お姉様!マリィ様は、凄いんですよ?ビューンって飛んで、お姉様をお墓から出してくれたんです!」
実際は……マリィ様は、時間を戻したんだけど……リリーには、理解出来ないだろうから、突っ込むのはやめておいた。
流石に骨を蘇生するのは、無理だから……。
……無理だよね!?
「そうなんです?会ったら、お礼を言わないとです……」
ラムネちゃんは、その意味を理解しているようだった。
「お待たせしました!病み上がり?という事でしたので、胃に優しいものを用意しました」
「ありがとう!エミリィ!」
エミリィが、気を利かせてくれたみたいで、ラムネちゃんの為に消化の良いものを用意してくれた。
「マリィ様が帰って来たら、改めて紹介するから!さぁ、遠慮しないで食べて?」
「はい!お姉様!食べましょう!」
「リリー……では、頂くです……」
ラムネちゃんは、遠慮して……と言うよりか、恐る恐るという感じでスプーンを口に入れた。
すると……ラムネちゃんの目からは、次々と涙が溢れて来た。
「うう……美味しいです……」
多分、生前は……妹の為にろくに食事が取れていなかったのかもしれない。
「いっぱいあるから、無理しないで食べて?」
「はいぃぃ……」
私は、涙を流しながら食べる姉妹を見て思った。
王都には、マリィ様が見逃しているラムネちゃんやリリーのような女の子が……まだいるかもしれない。
もし、私の助けを待っている女の子がいるなら……出来る限り助けてあげたい。
本物の聖女として覚醒した私には、聖女としての自覚と重責への覚悟が芽生え始めていた。
「ねえ、リリー?王都の自由市場とかで、リリーと同じような境遇の女の子って見た事無い?」
「すみません……自分の事で精一杯だったので……」
リリーは、知らないらしい。
「メリッサ様?見るからに可哀想な女の子は見た事あるです……」
「え?ラムネちゃんから見て、可愛そうって……どんな子だった?」
「それが……右目に眼帯を付けて……片足が不自由そうで、杖をついていたです……」
眼帯に杖少女!?
中二病じゃなければ……かなりやばい状態じゃない!?
まさか……この世界に中二病がある訳ないので……その女の子がまともな性格であれば由々しき状況だった。
「その子!どこに居るか分かる?」
「ラムがその子を見かけたのは……貧民街です……」
貧民街……。
王都には、平民街の他に……特に貧しい人達が集まってテントのような家とも言えない所に住んでいる場所があった。
スラムと言うと分かるかもしれない。
特にお金を失い……流れ着いた者達や、親を失い生活に困窮する子供達が集まって街を作っていた。
また、戦争で手足を失い働けなくなった者も、一定数いるらしいと聞いた事があった。
そこに……親を失い……貴族であった事を隠しながら、日々をギリギリで生きている女の子がいるとしたら……。
そう考えると……私は、居ても立っても居られなくなってしまった。
貧民街の治安は、良くないと聞くけど……。
知ってしまった以上、私には放っておくことは出来なかった。
「ロザリー様!」
「メリッサなら、行くと思っていたかしら?」
私は、リリーとラムネちゃんの事をエミリィに任せて……貧民街へ、眼帯の女の子の捜索に向かう事を決めていた。
「力を貸してくれる?」
「嫌と言っても、着いて行くかしら?」
「行こう!貧民街へ!」
そして……私達は、貧民街と呼ばれる場所に向かって出発した。
「メリッサは、あたしが守るのよ?」
「うん、その時は……お願い!」
そして……私は、背中の翼の事をすっかり忘れていた……。
読者様へ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
メリッサも、聖女としての自覚が出来たようです?
続きが気になると感じて下さいましたら、
☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。
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