第52話 マリィ様と聖女の奇跡


 マリィ様の部屋での私の報告は、まだ続いていた。


 マリィ様の興味は、リリーシアに向いたみたいで、色々と彼女について聞いてきた。


「それで、リリーシアちゃんのお姉さんは美人?可愛い?」


「はい……お姉様は、リリーが言うのもなんですが、とても可愛い人でした……いつもリリーの事を大切にしてくれる……お姉様だったのに……なんで……ぐす……」


「そう……その、お姉様のお墓はある?」


「……はい」


「今から、お姉様のお墓参りに行くわよ?」


「ありがとうございます!お姉様も喜ぶと思います!」


 マリィ様は、リリーシアのお姉様の墓参りに連れて行ってくれるらしいけど……私にはちょっと無理かもしれない。


「あの……私、翼が仕舞えないんですけど?」


「飛んで行くから、そのままままでいいのよ?」


 えええええ……。


 私達が向かったのは、墓地では無く……王都が見渡せる丘の上だった。


 マリィ様は、私に飛び方をレクチャーしてくれた。


「うん、少しは女神様らしい飛び方になって来たんじゃない?」


 女神らしい飛び方ってなんですか!?


「ここです……」


 そこは、石を乗せただけの簡単なお墓だった。


「なるほど……お姉様は、余程妹のリリーシアちゃんが大好きだったのね……」


「分かるんですか?」


「ええ、今も……ここに魂が残っているわ?」


 マリィ様は……涙を流していた。


「そう……死にたくなかったのね?」


 マリィ様には、死んだお姉様が見えるのか……何やら会話しているようだった。


「メリッサ?聖女には奇跡を起こす力があるわ……でも、奇蹟は起きる物じゃ無い……起こすものよ?……強く強く……願いなさい?」


「はぁ……」


 マリィ様の言いたい事は分かるけど……。


 奇跡を起こせるのは、聖女だけ?


 私にも出来るのかな?


「時間を戻すわよ?」


「え?」


 マリィ様がそう言うと、咲いていた花は蕾に戻り……草は小さくなっていった。


 時間が本当に戻っていく?


「この間、時空の女神様と……ねんごろになったのよ?」


「はい?」


「だから……少しなら時間を戻せるわ?」


 やっぱり……マリィ様は、マリィ様だった。


 暫くすると……乗っていた石が取り除かれ……どんどん穴が広がって……穴の中から、長い薄ピンクの髪の女の子の遺体が出てきた。


「お姉様!!」


「まだ……死んだ時のままよ?後は、メリッサ?貴方がやるのよ?」


 私が!?


 とにかく……私は、横たわっているリリーシアのお姉様を確認した。


 ああ、こんなに可愛いのに服がボロボロになって……綺麗な服を着せてあげたかった……せめて、着ている服だけでも直してあげたい!


 私がそう願うと……お姉様の着ている服が綺麗になっていった。


 これが……修復魔法かもしれない。


 リリーシアのお姉様は、リリーシアに似てとっても可愛い女の子だった。


 このお姉様を助けてあげたい!生きてる姿を私に見せて欲しい!抱きしめたい!お願い!生き返って!!


 私の聖女の力と、女神の力が合わさって……マリィ様の魔力が感じられた。


 これは……マリィ様の蘇生魔法?


 私は、普段からマリィ様の魔力……聖女と女神の魔力の供給を受けていたようで……蘇生魔法の使い方が頭に入ってきた。


「お願い!生き返って!!」


 すると……青白かった肌に赤みが差してきて……元の肌の色が戻ってきた。


「まだよ?」


 そうだった!お姉様は、病気で亡くなったんだった……。


 このままだと……すぐに衰弱して死んでしまう……。


 私は、リリーシアのお姉様が息をしている事を確認してから、浄化魔法と状態異常回復魔法、そして回復魔法をかけてあげた。


 私が出来る事、出来ない事も出来るようになって、やれる事は全てやったと思う。


 マリィ様は、私のやり残しが無いか、調べてくれている。


「うん、どこにも異常は見られないわ!良くやったわね!メリッサ!上出来よ?」


「あの……お姉様は?」


「生き返ったわ!病気?も治っているわよ?」


「本当に!?お姉様が生き返ったんですか!?」


「私は、嘘をついた事がないのよ?」


「ありがとうございますぅ!!」


「お礼なら、メリッサに言うのね?私は、時を戻してあげただけ……生き返らせて病気を治したのは、メリッサよ?」


 いや、時空魔法の方が凄いと思うよ!?


 普通なら、聖女にだって時間を戻す事なんて出来ないよ!?


「メリッサ様!!ありがとう!!大好きです♡」


 それから、マリィ様の転移魔法でリリーシアのお姉様を連れて帰った私は、いつの間にか部屋に増えていたベッドに、リリーシアのお姉様を寝かせてあげた。


「大丈夫……寝ているだけだから。直に目を覚ますと思うよ?」


「はい……でも、お姉様が生きているなんて今でも信じられなくて……こうしていないと心配なんです……」


 リリーシアは、お姉様の右手をぎゅっと握っていた。


 温もりが消えてしまわないように……。


 手を離してしまえば……また何処かへ行ってしまうような気がして……。


 リリーシアは、お姉様の冷え切った右手をずっと温め続けていた。


 しばらくして、エミリィが夕飯を持って来てくれた。


「ここに置いておきますね?」


 ロザリー様の分も入れて四人分。


「うん、ありがとう!エミリィ♡」


 私は、我慢できず……エミリィに抱き付いてキスを交わした。


「エミリィ♡いつもありがとう」


「その翼は……メリッサも女神様に?」


「うん……まだ、全然未熟でポンコツだけど……」


「そんな事無いと思いますよ?現に……何人も幸せにしているじゃ無いですか?」


「そうかな?」


「私だって、メリッサのおかげで幸せですよ?それに……そこにいる少女達も……メリッサが助けたんでしょう?」


「うん……エミリィ♡もう、大好き!」


「私もです♡」


 私は、ロザリー様、リリーシアと一緒に夕飯を食べて、エミリィが淹れてくれた紅茶を飲みながら、今日あった事を考えていた。


 自由市場でリリーシアを見つけて、私は即決でリリーシアを買った。


 リリーシアを買うのに、お金は必要無かった。


 リリーシアを家族として、恋人として引き取るつもりだったから……。


 そして、リリーシアをお持ち帰りした私は、ロザリー様とリリーシアとの婚姻の儀で……ロザリー様の魔力を浴びて……何故か女神になってしまったらしい?


 そして、マリィ様が女神様だったり、リリーシアの墓参りに行ったら、マリィ様の無茶振りで……死んだ直後のリリーシアのお姉様を……私が何とかする事になって……なんだかんだで、私は修復魔法と蘇生魔法が使えるようになった。


 そして……私は、リリーシアのお姉様を生き返らせる事に成功したんだよね?


 今でも信じられないけど……お姉様が、ここに寝ているのは事実だった。


 さて……ご飯を食べてお腹が膨れた私は、リリーシアをお風呂に誘おうと思って声をかけたけど……。


「リリーシア?お風呂に……」


 リリーシアは、お姉様の手を握ったまま、ベッドの脇で幸せそうに寝息を立てていた。


 私は、幸せそうな顔で眠っているリリーシアを起こすのも可哀想だと思ったので、そのまま……お姉様と同じベッドに寝かせてあげる事にした。


「おやすみ♡リリーシア♡」


 そう言えば……リリーシアのお姉様の名前、聞いてなかったな……。









 読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。


マリィの手引きにより……メリッサも、奇跡を起こせるようになりました?

リリーシアのお姉様の名前はありますよ?


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。


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