第35話 カラックの村
カラックの村に近づくにつれて、畑が増えてきた。この辺りには害獣はいないのか……畑に柵が無い。畑は、管理する人がいないのか荒れ放題になっていた。
「荒れてるわね……」
「重税がきつくて夜逃げでもしたのでしょうか?」
荒れた畑は一ヶ所だけでは無かった。
放置され、荒れ放題の畑は何ヵ所もあった。
この時間だったら畑に働く人の姿があっても良いはずだけど……。
「人の気配もありませんね」
村の入り口まで行くと、門番が立っていた。
「何だ?見ない顔だな。悪いが今、村には入れないぞ?」
入れない?どういう事?
「何があったの?」
門番は、気まずそうな顔で後頭部を搔いていた。
「あーなんだ、ここだけの話だけどな?今、徴税官が来てるんだよ……悪いが引き返した方がいいぞ?巻き込まれたくなけりゃな?」
「徴税官?」
「マリィ様、税金を集める役人の事です」
「ふーん、門番さんは、今の税率を知っているの?」
「今年は8割って話だ……そんなに払える訳ねぇ、いくつもの家族が逃げ出したよ」
「くっ……酷いねぇ」
「酷すぎますね……」
アマンダお姉様も、セルフィーさんも8割の税率は酷いと感じているようだ。
農家だって生きて行かなくちゃならないし、出来た作物の8割も持っていかれたら人件費も出ないだろうし、お金で払うなら売値がいつも安定している訳もない。
それに、関所の問題がある。
あんな関所がいっぱいあったら、買いに来る商人も来なくなり、売れるものも売れなくなるだろう。
これは、今後1年か2年くらい収入が安定するまで税金は取れないわね。
「分かりました。では入りましょう」
「って、聞いてたのかよ?今、入るのはまずい!」
「門番さん。覚えておきなさい?私は、ここの新しい領主、マリィ・エイシェルト辺境伯です」
「辺境伯?新しい領主?メルネス子爵は?」
「処刑されました」
「ははは!そりゃ朗報だ!あははは!いいぜ!入りな!あの徴税官を何とかしてくれ!」
この門番さんは良い人みたいね……。
「さぁ、行きましょう!」
私達は、カラックの村に潜入した。
門番の話だと、徴税官が来ていて税の回収を行っているとの話だったけど……。
「どうか、娘だけは!返してください!」
「ええい!税が払えんなら、娘の体で払え!それとも……お前が体で払うか?ぐへへ」
「そんな……」
「この場で払うか?ん?ぐへへへへ……なんじゃ、いい体してるじゃないか?」
「いや!やめて下さい!」
「かーちゃん!」
「やめろ!妻に何をする!」
「ええい!じゃまじゃ!」
「ぐあああ!」
「どれ……おお、肌触りもいいぞ……ぐへへへ。では頂くとしようか」
「かーちゃん!!」
「いやあああああああ!!」
酷い徴税官ね……こいつは現行犯で処刑するわ。
「アマンダお姉様……やって!」
「ぐがぁ!」
「クズだねぇ」
クズな徴税官は、アマンダお姉様の一撃で、一物を出したまま気絶した。
「もう大丈夫よ?」
「ありがとうございます!あなたは?」
「私は、ここの新しい領主、マリィ・エイシェルト辺境伯よ!」
「新しい……領主様?」
「ええ!私は、貴方たち領民を助けに来ました。もう大丈夫よ?酷い領主はやっつけて来たから!」
そうれから、食べる物も少なく、貧しい人たちが大勢いたので、一時的な物でしかないけど、炊き出しを行う事にした。
「何だ貴様ら!徴税官様!」
おっと、徴税官には護衛の騎士が5、6人付いていたみたいね。
「この徴税官は、現行犯で逮捕したわ。あなた方も共犯ってことで死罪でいいの?」
「何を世迷いごとを!やってしまえ!」
「私は、ここの新しい領主、マリィ・エイシェルト辺境伯よ!死にたい人から、かかってきなさい!」
仕方ないわね……。私は、セルフィーさんと、アマンダお姉様と三人で護衛の騎士を倒していった。
「ぐ……何て強い……」
「強すぎる……」
私達は護衛騎士を全員拘束し、邪魔なので徴税官と一緒に土魔法で固めておいた。
私は、村の広場で「開いてもボクっス」から食材と炊き出し用の調理器具を出して、調理を開始した。
「ん~良い匂い!」
もう良いかもしれない。野菜も肉も柔らかいスープが出来上がった。
配給用の皿は持ち寄って貰って、無い人はこちらで用意した。
「さぁ!配るわよ!」
「「「「「「わああああああ!」」」」」」
一斉に待っていた子供たちが器を持って集まって来た。持ってない子もいたから、大丈夫って教えてあげた。
「さぁ!新しい領主様からの炊き出しだよ!みんな集まりな!」
アマンダお姉様は集客をしてくれていた。
「はい!どうぞ」
「ありがとう!エルフのお姉さん!」
セルフィーさんは、私と一緒に配給を手伝ってくれていた。
配給に集まってきたところで、私は村民全員にこれからの事を宣言する事を決意したのよ?
「みんな集まってくれてありがとう!私は、ここの新しい領主、マリィ・エイシェルト辺境伯です!今までの重税に苦しんできた皆さんには今後、2年間税金を免除する事を宣言します!その後は他の領地と同じ水準にしますので、それまで持ちこたえて下さい!それから、食料が不足した場合は援助しますので、報告するようにお願いします!」
「「「「「「「わあああああああああああ!!!」」」」」」」
「マリィ様!万歳!」
「「「「「「マリィ様!万歳!」」」」」」
「「「「「「マリィ様!万歳!」」」」」」
「「「「「「マリィ様!万歳!」」」」」」
こうして、カラックの村は、重税と言う地獄の苦しみから救われた。
読者様へ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。
続きが気になると感じて下さいましたら、
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