第32話 海洋都市エンパニア 


 ああ!海の匂いが懐かしい。


 この世界の海も塩分があって、しょっぱかった。


「うわ!しょっぱ!」


「マリィ様?遊んでないで調査しますよ?」


「はーい」


 ここ海洋都市エンパニアは海の町と言われるだけあって、町のいたるところに運河が走っていた。全ての運河は海につながっているみたい。


 この都市の作り方だと、津波が来たら全て流されて終わりね……。


 私は津波の怖さを知っているから、この都市の脆弱さがとても怖かった。


 私なら結界を作って津波から都市を守るかな……。


 なんて既に都市計画を考えていた私だったけど、最近セルフィーさんがお母さんみたいになってきた。


 セルフィーさんは、私の恋人だよね?お母さんじゃないよね?


「まずは領主一家の評判を聞き込みしましょう」


 近くにいた漁師に聞いてみた。


「領主様?ああ……昔は良い人だったよ?でも……最近は人が変わったようになってしまってねぇ。酷いもんだったよ。え?婦人はしらねえな?」


 いい人だった?これは何かあるわね……。


 私は、断頭台行きになった領主二人の遺体を秘密裏に回収してあった。

 この調査の結果、もし本当は良い人だったなんてなったら……夜も眠れなくなってしまうからだ。子供を残して亡くなっているので、残された子供のケアもしなくてはならない。

 それに、遺体さえ残っていれば、私の蘇生術で復活可能だからだ。でも、普通には復活させる気はないけど?もちろん性転換させてやるわよ?


 近くのパン屋さんに聞き込みしてみた。


「領主様かい?ああ……可哀そうにねぇ……下の娘さんが病で倒れてねぇ……不治の病らしいよ?」


 どうやら、子供が病気らしい。不治の病?怪しいわね……?


 関係ないけど、この辺の領地って跡取りがみんな女の子しかいないの?ターコイズもセルクロッドもメルネスもクラディアも、男子の跡取りを見た事が無いんだけど?


 次に、領主様ご用達と書かれた洋裁店に聞き込みしてみた。


「領主様の奥様、メルティ様は良く来られますよ?とてもやさしい方でねぇ……でも最近は過労がたたって倒れたって聞いたよ?」


 領主の奥さんは優しい人で過労で倒れていると。


 なる程……ここの領主一家は元々は優しい家族だった。

 ……けど娘が不治の病に倒れ、その病を治すため、領主は治療法を探したはずだ。

 そして、ここから一番近いのは……パンタニアか?


 とすると、パンタニアに治療法があったのかもしれないかな?


 それと交換条件でパンタニアに寝返った可能性が高い。


「だったら、その娘さんの病気を治せば解決じゃない?……もう遅いけど」


 領主は処刑されてしまったし、ここの領主はすでに私だ。


 私は変装して、領主の館へ行くことを決めた。


◇◇



「私は、百合の女神ユリィ……過労で倒れたのは貴方ですか?メルティ?」


 メルティさんはとても綺麗な人だった。


「貴方は?女神様ですか?」


 私の背中には幻影魔法で白い翼が見えているはずだ。


「残念なお知らせがあります……ハーゲストは死にました。パンタニアに寝返った罪です」


「そんな……あなた……だから、パンタニアは駄目だと言ったのに……そうですか……私達はもう死ぬしかないのですね……娘と自害します……」


「待ちなさい……条件次第では……命を助けましょう」


「いいんです……娘はもう……不治の病で助かりません……諦めました……」


「娘も助けましょう……」


「分かりました……条件とは?」


「ハーゲストを女の子として再生します。貴方はその子を愛しなさい」


「え?生き返るんですか?あの人が?」


「生き返ります。娘の病気も治ります」


「そんな……奇跡があるなんて、信じられません!」


「このあと、新しい領主が来るでしょう。可愛い女の子です。貴方はその女の子の元で働きなさい。きっと幸せが訪れるでしょう……」


 メルティさんは信じられないと言った表情で空中に浮かぶ女神を見つめていた。


「まずは娘さんの所へ案内なさい」


「……どうぞ」


 私はメルティさんに案内され、娘さんの部屋に入った。


「娘のキリシアです。まだ六歳なんです。助けて下さい!」


 私は魔力制御の力でキリシアの状態を確認すると、キリシアには呪いがかけられてる事が判明した。呪いならば聖女の力で解除可能だ。


 私は聖女の力で浄化魔法、回復魔法、状態異常回復魔法をキリシアにかけた。


「キリシアよ貴方にかけられた悪い呪いは、今払いました。さぁ、起きなさい?」


「ん……あれ?天使さま?」


「私は女神ユリィ……」


「キリシア!治ったの?治ったのね?」


「うん……全然大丈夫だよ?」


 キリシアは、満面の笑みを浮かべていた。


「では、ハーゲスト召喚!」


 私は首を繋いだハーゲストの遺体を「開いてもボクっス」から取り出した。


「あ……あなた……ああ……」


 メルティさんが泣いているけど無視だ。


「女神召喚!クロッティ!」


 すると女神クロッティが目の前に現れた。


「どうしたマリィ?」


「私は女神……ユリィ」


 もう!マリィ!って言っちゃダメ!


「ああ……ユリィどうした?」 


「この者を女の子として復活させます手を貸して?」

「いいよー!」


 帝国で行ったように、私の性女の力で肉体改変美少女化を行ったあとに、クロッティの力でハーゲスト(美少女)の蘇生を行った。


 メルティさんと、キリシアちゃんは、ポカーンと口を開けて見ていた。


「さぁ、美少女ハーゲストよ、今ここに蘇らん!」


 白い光と共に、美少女ハーゲストはこの世に蘇った。


「んあ……ワシは?クビを落とされ死んだ……あれ?ワシ生きてる?」


「あなた……なの?」


「おお!メルティ!キリシア!会いたかったぞ!え?キリシア?病気はどうしたのだ?」


「元気だよ?この女神様が治してくれたの♡」


「そうか!そうか!良かった!キリシア!治ったんだな!あああああ!よがったああああああ!」


「良いか?ハーゲストよ。領主のお前は死んだ。これからは新しい領主に仕えよ。新しき領主の名は……マリィ・エイシェルト辺境伯だ」


「ははぁ!女神様ありがとうございます!このご恩!絶対に忘れません!」


「約束をたがえた時、その命は尽きるであろう……」


「守ります!守らせてください!」


「良いか?女神はいつも見ておるぞ?」


 私はそう言って約束を守らせるように言い聞かせると、クロッティと共に空へと飛んで行った。


 あぁ……疲れた。


 元が良い人ならこれで問題なく統治できるはず……だよね?








読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。

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