第31話 エイシェルト辺境伯領へ



 私が拝領したエイシェルト辺境伯領は、サンマリーナ公爵領、ターコイズ公爵領に次ぐ広大な領地で、北はセルクロッド伯爵領、東がターコイズ公爵領、西がサントルデ辺境伯領と隣国パンタニアに囲まれた領地だった。

 

 南側には海があり、魚介類の期待できる海に面した領地だった。


 私が王都から自分の領地に連れて行くのは、まだ統治が安定していないので、アマンダお姉様とセルフィーさんの二人になる。ただそれだけだと統治できないので、統治が安定するまでは王国から王国騎士団がついて来ることになった。


 私達は十分強いから護衛は要らないんだけど……。見た目は重要らしい。


 弱そうに見えるかな?私。って私まだ10歳の子供だったわ?


 私が統治するにあたって、困るのは信頼出来る人間が女の子しかいない事なのよ。


 そこで、私は思いついた。私の起こした秘密組織「姫蜜百合の会」の本部を私の領地に開設して、信者を私の領地に集めるのよ?


 今帝国で、信者を増やしつつあるけど、次のターゲットは隣国パンタニア!


 まだどんな国か知らないけど?信者を増やすなら他国から攻めないとね?


 後は女神教を操るのも面白いかもしれない。女神様を顕現させて女神教に指令を出せば動くでしょう?


 私は教祖として極秘に指令を出した。本部をエイシェルト辺境伯領の主都、エンパニアに作りなさいと……。



◇◇



 そして、エイシェルト辺境伯領へ向かう為、王都出立の日がやって来た。

 王都のセルクロッド伯爵邸には、大勢の見送りの人が集まっていた。


「それでは行ってきますね?」


「シーナちゃんまたね?」

「マリィ……いっちゃやだぁ」


 シーナちゃんは泣いてしまった。私と同じ歳で今までずっと一緒に過ごして来たのだから……仕方が無いか。


「セーラ!領地が安定したら、ちゃんと戻ってくるから!」

「マリィ様!さみしいですわ……」


 私の恋人セーラと離れるのは辛いけど、国王の命令で領地を貰ってしまったので、領地の制圧……もとい領地が安定するように統治しないといけない。


「ライリー様!ちゃんと迎えに来るから待っててね♡」

「お待ちしております。マリィ様♡」


 寂しいけど……ライリーちゃんとも暫くお別れだ。


「マリィ様♡離れていても心は一つですわ?」

「アンジェ♡行ってくるね?」


 アンジェとは、親公認で婚約を交わしているので、もう夫婦も同然だ。早く帰ってきて子作りをしたいけど、仕事が先だ。


「マリィ様の事は、このアマンダにお任せ下さい」


「お祖母様……お気をつけて下さいまし……」


 アンジェも涙目になってしまった。


「お嬢様……お気をつけて……必ずお帰り下さい」

「ミスティも元気でね?」


 使用人のミスティは、私の愛人だ。セーラのお付きだったけど、ミスティには、セーラとの情事を見られたので、可愛いから口封じに私が愛人にしちゃったの。


「マリィ様……気を付けてね?」

「マリィお嬢様……待ってるわ」


「サリィお姉ちゃん、アンナお姉さん。準備が出来たら迎えに来るからね?」


 お姉ちゃんズは向こうの屋敷が安定してから連れて行く予定なの。だって二人は弱くて危険な所には連れていけないから。最低限、自分の身を守る術が無ければ連れて行くことは出来ない。


 だから早く、身を守れるようにする結婚指輪を準備する予定なの。戦えない人を守る為の魔道具。これが無ければ危険な所に連れて行くことは出来ない。


「さぁ、行くわよ!エイシェルト辺境伯領へ!」


 私達は、王国軍とは別行動をとる事になる。だって王国軍が遅すぎるから!


 旧クラディア辺境伯領と、旧メルネス子爵領には既に通達が言ってると思うけど、王都で処罰を受けた領主以外の家族はそのままの状態らしいので、まだ領主として領主の館に住んでいるみたい。そこに新しい領主が来て、その家族を捕まえるのが領主としての初めての仕事になる。家族を捕えなければならないのは、とても気が引けて悲しい事だ。本当は、こんなことやりたくはない。


 どうか悪人でない事を祈るわ。いい人なら……私が助けてあげてもいいんだけどね?


 女の子4人は私が貰う事になっているので、他の家族をどうするか?生殺与奪権は私にある。


 王都を徒歩で出ると、飛行魔法を使ってアマンダお姉様とセルフィーさんの三人で南へと飛んだ。


 旧クラディア辺境伯領は、私が生まれた村からさらに南に行った場所で、王都からしてみれば、一番遠い領地で……ど田舎になる。


 王都から遠いからこそ、裏切りに走る原因となったのかもしれないし、王都よりも隣国パンタニアの方が地理的には近い位置にあり、海を介して流通があるのかもしれない。


 そろそろ、私が住んでいた村のあたりだ。あそこは、本当に畑しかない所だった。

 サリィお姉ちゃんとアンナお姉さんとセルフィーさんに出会ったのもその村だった。


 そして、シーナちゃんとアラン夫妻を助けたのも……。全てはそこから始まったんだ。


 そして今、私はただの村娘(聖女)から、Sランク冒険者になり、子爵、辺境伯として出世を果たした。


 流石に辺境伯への陞爵パーティーはやってられない。それどころじゃないからだ.


「見えてきました!マリィ様!」


 セルフィーさんが指さした方角には、広大な海が見えた。


「海だ!」


「いえ、その前です……」


「え?」


「都市が見えるだろうよ?」


「本当だ!町?都市があるよ?」


 アマンダお姉様の言う通り、大きな町が見えた。大きな城壁に囲まれた都市だった。


 その形は円形で、コンパスで線を引いたように綺麗な円形、それがとても大きい。


 空から見ても大きいんだから、地上では形は分からないだろう。


「あれが、エンパニアだよ」


「あれが……私の町?都市……エンパニア」


 文字通り……ここは、私の領地なので、この辺り全てが私の支配する土地で、私の都市なのよ?


「この辺りじゃ最大の海洋都市だねぇ」


「海洋都市……エンパニア……なんて綺麗な都市なの?ここの領主は、なんで王国を裏切ったのかしら?」


「海洋都市が綺麗過ぎて、自分は王だと思って、欲が出たんだろうね?」


「そうなのかな?綺麗な都市なのに……」


 私達は、海洋都市エンパニアに降り立った。今は正式な訪問では無いので王国軍が到着するまでは、お忍びによる調査及び、内部からの制圧が今回の目的だ。だから門番のいる門からは入っていない。


 とにかく情報を集めるのが目的で、領主の家族の一家心中や逃亡を未然に防ぐのも仕事のうちに入っている。


 私達が地上に降りたのは、海の近くで港が近い海岸だ。


「さぁ!調査開始よ!」







読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。

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