第30話 王様の呼び出し再び



 私は着替えを持ってきていなかったので、アンジェの服を貸してもらった。アンジェはあげるわって言ってくれたので、遠慮なく貰っておこう。


 アンジェの部屋に入ると、私の部屋よりも広くて豪華な造りをしていた。


「わぁ……アンジェの部屋だぁ♡」


 天蓋付きベッドに装飾が細かいテーブルに椅子。勉強用の机も完備されていて、王都で勉強するための部屋なんだなぁって感じだった。代々王都で勉強する公爵家の人が使っていたんだろうなぁ……。


「まだ、掃除も途中なんですのよ?あまり見られると恥ずかしいですわ……」


「良いじゃない?私達は婚約者でしょ?」


「ええ……まだ夢みたいですわ?」


「夢じゃないよ?」


 私はアンジェをベッドに誘うと、キスを交わして……一緒に抱き合って眠りについた。


「お休み……アンジェ♡」


「お休み……ですわ……マリィ様♡」


 

◇◇



 次の日、私は王城に呼ばれていたので、アンジェの家で朝ごはんを食べさせてもらい、王城へ行く準備を整えた。


 すると、セルフィーさんも迎えに来てくれたので、二人でまた王城へ行くことになった。


「マリィ様?また何か面倒ごとを起こしたのですか?」


 セルフィーさんは右手を額に当て、目は瞑っているけど眉毛は怒っていた。


「えっと……ちょっと?」


「……マリィ様はまだ10歳なんですから、少しは自粛してくださいね?」


 私は、珍しくセルフィーさんに怒られた。セルフィーさんって滅多に怒らないんだけどな?それほど……王様の呼び出しは怖いのだろう。


「では、行くわよセルフィー!」


「はい!マリィ様!」


 来たばっかりの白い王城に、また来ることになるとは思っていなかった。


 大きな白い王城は、そのままだった。当たり前だけど、でも前回よりは小さく感じられた。慣れたのもあるかもしれない。


 王城に入ると、また案内人が来てこの間と同じように待合室へと通されるかと思ったら、そのまま王様の執務室まで案内された。子爵だから?なんか前と扱いが違うんですけど?


「入るが良い」


「……はい」


 以前と同じ王様の部屋に入ると、前と同じように黒髭を生やした王様が王の椅子に疲れたように座っていた。


「まぁ、まずは座れ。マリィ・エイシェルト子爵」


「はい。しつれいします!」


「此度呼んだのは其方の結界を王城に施して欲しいからだ」


「王城にですか?」


「ターコイズ公爵より話は聞いておる。悪人を排除する結界をな?」


 やっぱりその件だったか……私の結界は悪人を選別出来るのよねぇ……。


「知っての通り、王城は多くの人が出入りする場所だ。もちろん悪意を持った人が入る事も容易い。配下や部下が悪事を働いてるかもしれん。悪意を持った貴族が王国の転覆を狙っている可能性もある。あとは分かるな?」


「私の結界があれば、全ての悪人を排除出来る……」


「その通りだ。もちろん破格の報酬は用意する」


「いいんですか?貴族だって、王族ですら悪人だったら排除しますよ?」


「良い心を持った者しか入れぬ城。良いでは無いか?この機会に、王国の全ての膿を出し切ろうと思うのだ」

 

 思い切ったね?王様!?いいよ?やってやるよ?


「範囲はどうしますか?」


「王城の城門から内側を頼む」


「分かりましたが、城ですと結構な人数の悪人が排除されると思うので、捕える準備をして下さい。準備が出来次第結界を張ります」


「承知した」


 王様が何か指示を出して捕獲準備に取り掛かったみたい。王族や貴族だったらどうするの?


 なんとなく言っちゃったけど……私、王様に指示出しちゃったよ? 


 暫く待っていると、王様からオッケーサインが出たので。私はターコイズ公爵邸でやった事と同じ結界魔法。悪い人だけ出しちゃえ結界を王城全体に行きわたるように広げた。この結界は一度かけると継続する継続性結界なので、効果はかなりの期間持続する。


 すると……出てくる出てくる……なんかゴキブリみたいにわらわらと、悪人がどんどん弾かれていく……。


 でも、どんな悪人なのかは、自白させてみるしかないか?


「すごいな……こんなにいるのか?」


「お金をちょろまかすとか、盗むとかの子悪党も含まれてるのではないかと?」


「それでも悪人は悪人という事か?」


「その中でも大悪党は貴族とかでしょうね?」


 王城の門の前には、弾かれた人がどんどん増えていった。


「どうなっているのじゃ!儂をはじき出すとは!この無礼者が!」


 早速貴族が引っ掛かったみたいね?

 

「あれは……クラディア辺境伯ではないか?」


 あらら、クラディア辺境伯は、セルクロッド伯爵領の南側に領地だったはず。


「何をする!放せ!おい!誰か!居らぬのか!?儂は辺境伯じゃぞ!」


「王族であろうと貴族であろうと、全て捕えよとの王の命令です!」


「なんじゃとお!!バーン国王め!やってくれたな!くそが!」


 あれは。悪人だわ……。絶対に隣国と繋がって悪い事してる顔だよ?


「パンタニアに栄光あれ!!」


 さらに、隣国の名前言っちゃってるよ?真っ黒だよあいつ。


「まさか……クラディアが、裏切っていたとは……」


 こうして、エスパーニャの王城から悪人は排除された。


 捕えられた悪人は100人を超える人数だったそうだ。


 そして、王族に悪い人はいなかった。貴族については。クラディア辺境伯と、その隣のメルネス子爵が裏切者の大悪党だった事が判明し、二人とも断頭台行きが決定した。

 その親族は奴隷落ちになるそうで、女の子だったら私が引き受けると言ったら、クラディア伯の娘が2人、メルネス子爵の娘が2人。私の所で面倒を見ることになった。



◇◇



 そして、今回の私の働きにより、王城の浄化が進み、悪い貴族を粛清出来たので私はまた、褒美をもらう事になった。


 また、王の執務室に呼ばれた私は、王の前で片膝をつき、恐縮していた。


「マリィ・エイシェルト子爵よ、今回の王城の悪人排除並びに裏切者の処罰に対して王国に対して多大なる貢献を行った事、まことに大儀であった。よって、今回の功績により、子爵は陞爵し伯爵とする。さらに、今回断絶となったクラディア辺境伯とメルネス子爵の持っていた領地をエイシェルト伯爵に与え、辺境伯の爵位を与えよう」 


 ええええええ!?私、辺境伯になるの?聞いてないんですけど?


「それでは王よ、陞爵の儀を」


「そうであったな」


 王はそう言うと、近くにいた宰相から剣を受け取ると、膝をつく私の元へ歩み寄り、剣を私の方に載せた。


「マリィ・エイシェルトよ、其方に辺境伯の爵位を与える。共にエスパーニャを支える力となれ」


「えっと……我が剣はエスパーニャの為に」


「うむ、共に王国を支えようぞ!」


「御意に……」


 こうして私は、遂に領地持ちの辺境伯になってしまったのよ?


 しかも、お家断絶となったクラディア伯とメルネス子爵の女の子を4人引き受けることになってしまった。


 王都の学園入学前に何とかしないと……。女の子達の精神のケアが先かもしれない。流石に奴隷落ちは辛いよね?父親は仕方ないけど、母親が悪い人じゃなければ引き受けても良いけど……母親も悪人じゃ手に負えないし……。


 私は王都の暮らしを後回しにして、自分の領地エイシェルト辺境伯領の統治に手を付けることにしたのよ?






読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。


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