第29話 アンジェの婚約者



 ターコイズ公爵のお屋敷に悪人を排除する結界魔法をかけた私は、公爵家に歓待され、その夜はターコイズ家でご馳走を頂くことになってしまった。


 その歓待の席にはターコイズ公爵も当然いた訳で、私の叙爵パーティーにも来ていたのだから当然お屋敷にもいるのよね?


 その晩餐の席は貴族が良く使う長テーブルで、私の正面には金髪のイケメンが座っていた。そして、私の左側にはアンジェが座っていた。


「良く来てくれたね。マリィ・エイシェルト子爵。今日はもう遅いから泊っていくと良い。そちらの屋敷には使いの者を出しておこう」


「ありがとうございます」


 アンジェの家にお泊り!やった!


「こうして、面と向かって話をするのは初めてだったね?私は、アンジェリーナの父親のサマルテ・ターコイズだ。これでも公爵家の当主をしている」


 サマルテ・ターコイズ公爵はアンジェと同じ金髪でエメラルド色の瞳のイケメンだった。


「私は、マリィ・エイシェルト子爵です。よろしくお願いします」


 知ってるだろうけど、私は、一応挨拶をしておいた。


「それにしても、エイシェルト子爵には母を助けてもらって本当に感謝しているんだ。その後、母は元気にやっているか?」


「ええ、アマンダ様はお元気です。今は私の賢者の師匠として王都で暮らしていますよ?」


「王都に?……そうか……それは良かった」


「わたくしも、マリィ様のお屋敷でお祖母様にお会いしてきましたわ!ターコイズにいた時よりも元気でしたわよ?」


「あはは!そうか!それはいい。母上は、あれで嫁には小煩いからな……元気過ぎても困るんだ」


「はは、そうなんですね?」


 アマンダお姉様は若返った事で、全盛期の力を持て余している。確かに元気過ぎても困るのかもしれない。


「ところで、今日の一件だが……説明してくれるかい?」


「はぁ……」


 私は、アンジェの為に、悪人だけを排除する結界魔法を屋敷にかけて、安全を確保しようとしたら、悪人が5人出て来たので捕縛して自白させた事をターコイズ公爵に説明した。


「……そういう事か」


「そういう事よ?」


 ターコイズ公爵は腕を組んで、真剣な目付きをしていた。 


「何とお礼を言ったらいいのか思い付かないが……説明しよう。一人目の男は隣国のスパイで俺の命を狙っていた。毒殺をするつもりだったんだろうな……毒を隠し持っていた。二人目は、娘の誘拐を企てていた盗賊の一味だった。誘拐に使う予定だったのだろう大きな袋や眠らせる薬品などを持っていた。三人目は、買い出しに出ていた小間使いだったが、商人と結託して偽の領収書を用意して差額を懐に入れている泥棒だった。そして4人目は、娘の体が目的で屋敷にもぐりこんだ強姦の常習者だった。本当に危なかった。最後の5人目については、胸糞悪いが嫁のユーリエを騙して体をもてあそんだ間男だ。全員許せんが、特に5人目は許さんから即刻処刑した」


「……そうですか」


 ユーリエさんが、席を外しているのはそういう事なのね?

 愛人に騙されていたなんて、顔を合わせづらいのね……。


「ユーリエには、暫く謹慎するように言ってある」


「ああ……でも事前に事件を解決できて良かったです」


 ターコイズ公爵は悔しそうな顔を一転して、やさしい顔を私に向けた。


「ああ、エイシェルト子爵、全ては君のおかげだ。ありがとう!」


「お役に立てたなら何よりです」


「もう、俺には褒美が思いつかないんだが……何か欲しいものはあるか?」


「……でしたら、アンジェを私に下さい!」


「娘がほしいと?……だが、エイシェルト子爵は女の子ではないか?」


「アンジェ♡」

「ええ……マリィ様♡」


「私達、好き合ってるんです!」


 ターコイズ公爵は、口を大きく開けてびっくりしていた。


「アンジェリーナ?そうなのか?」


「ええ!わたくしは、マリィ様をお慕いしておりますの♡」


「しかし、子供はどうする?子爵ならば世継ぎは必要だろう?」


 私は考えてあったシナリオをターコイズ公爵に説明した。


「帝国では、女の子同士で子供を作るようになったそうです」


「な……そんな事が可能なのか?」


「私が帝国兵と戦っていたのは知っていますよね?」


「帝国は……そこまで進んでいたのか?」


「ええ……そして私は決めたんです。アンジェを絶対に幸せにして見せるって」


 ちょっと話すのは早かったかもしれない。でも帝国の情報はこっちには入ってこないから、押し通すしかない!


「この話は、まだ公には出来ないが、もし本当に子供が作れるなら認めてやろう」


 ターコイズ公爵は、出来る訳ない、子供の夢だと思っているかもしれないけど、私は本気なのよ?言質はとったし、これでアンジェと子作りが可能になったわ。


 でも……私達はまだ10歳と、子供が出来る年齢に達していないので、まだ先の話になる。


「では、私達の婚約を認めてくれますか?」


「公には出来ないが、いいだろう」


 やった!認めてくれたよ!これで私達は本当の意味で婚約者になれたのよ?


「アンジェ♡好きだよ♡」


「マリィ様♡わたくしもです♡」


「はぁ……、まぁいいか。ちゃんと子供を作るんだぞ?いいな?」


「分かりましたわ!」


「あ、そうだ。忘れていたが……エイシェルト子爵。王様より出頭命令が出ているぞ?明日必ず王城へ行くように……忘れるなよ?」


「王様が?何の用でしょう?」


「エイシェルト子爵?今日ここで何をしたのか……自分の心に聞いてみるか?」


「このお屋敷に……悪人を叩きだす結界を張りました?」


「それだよ?」


 だって5人だけだよね?


「え?」


「捕まえたのは、何者だったんだ?」


「隣国スパイに、誘拐犯、泥棒に、性犯罪者、乗っ取り計画していた間男?」


「それだけあれば、国王に呼ばれるのに十分だろう?なんて精密な結界だよ?本当に悪人を見分けるなんて聞いたことも無いぞ?」


「あー…………」


 ですよねぇ?


 その日の夕食は美味しかったんだけど、最後は味なんて分からなくなってしまった。


 そして、私はアンジェの部屋で寝ることになった。もう親公認の婚約者なので、堂々と同じベッドで寝れるのよ?


「マリィ様♡一緒にお風呂に入りましょう?」


「アンジェ♡」


 昨日は入れなかったから今日はしっかり洗っておきたい。今夜の為に。


 アンジェと一緒にお風呂に行くと、宮廷みたいな大きなお風呂だった。


「すっごい。ここも大きなお風呂なのね?」


「お風呂には、こだわりがありますのよ?」


 私はアンジェを綺麗に洗ってあげて、代わりに私も洗って貰った。


 私の婚約指輪があるから悪い男は近寄れないけど、アンジェを事前に守る事が出来たのは良かったと思う。


 私は湯船に入ると、アンジェの隣に座ってアンジェに頭を預けた。


 アンジェも同じように私に頭を向けて……自然と二人の口は重なった。


「ん♡……アンジェ」

「マリィ♡」


 私は、ゲームでは悪役令嬢で敵だったアンジェと、本当の婚約者になれた幸せをアンジェと一つになる事で実感していた。






読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。


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