第26話 叙爵お披露目パーティー2


 何とか第二王子から逃げ出した私だったけど、金髪碧眼の第三王子に捕まってしまった。


「ちょっと待って!」


 私は第三王子に手首を掴まれ、逃げられない。


「ボクはユミル。君……可愛いね」


 第三王子ユミルの顔は赤く染まっていて、完全に私に見惚れている。


 こいつは弟大好きな第三王子だから油断していた。


 第三王子ルートでは、マリィに一目惚れするんだったぁ!!


「どうも……そうね……エルクとどっちが可愛い?」


「……それはどういう意味だい?」


「貴方は……エルクが大好き」


「!!」


 第三王子ユミルの顔色が変わった。


「……君は何者なんだ?」


「私はマリィ……愛の伝道師」(但し同性に限る)


「ユミル兄様!ここにいたんですか?」


「エルク……」


「あ、英雄様!僕はエルクです!よろしくお願いします!」


 銀髪碧眼でボブカットの女の子のような容姿の可愛い男の子。それがエルクだった。

 エルクは私と同じ歳で、ゲームではマリィに良く気をかけてくれる優しい男の子だった。


「さぁ!兄様?行きますよ?」


「ああ……エルク待って!」


「弟を大事にしてね?ユミル王子?」


 第三王子ユミルは、第四王子エルクと一緒にパーティーを抜け出して行った。


「ガハハ!英雄殿と聞いて身に来たが、まだ小さい女子ではないか」


 ぐ……出たか筋肉バカのガッシュ!


「子供に言われたく無いわね……」


「俺は、ガッシュ・バレンシュタインだ!」


「どうも……」


「筋肉が足らんぞ?もっと筋肉を付けた方が良い」


 ええええ……。


 赤髪赤目で短髪のガッシュは騎士団長の息子で、ただの筋肉バカだ。気持ち悪いので近寄らないで欲しい。


 私が嫌そうな顔を引き攣らせていると、もう1人話しかけて来た。


「相変わらず野蛮だなガッシュ」


「ティレンか……お前も勉強ばかりしおって、筋肉が足りて無いんじゃないか?」


 助け舟を出してきたのは、宰相の息子ティレン。

 ティレンは、襟まで伸ばしたストレートの白髪碧眼が印象的なメガネの知的な美少年だった。


「可愛いレディ、初めまして。僕はティレン・タンデクト。あんなガサツな筋肉男は相手にしなくていい。それよりも……僕と生産的な話をしようか?」


「はぁ……?」


 生産的って何?子供でも作る気?ティレンは、頭だけはいいから……要注意人物なのよね……。


「例えば……帝国はまた攻めて来るのか?とか」


 無いと思うよ?帝都は私の支配下にあるし?


「もう攻めてこない?」


 ど、どうして?心でも読んだの?


「大丈夫……攻めて来たって、また追い返せばいいじゃない?」


「すごい自信だね。その自信はどこから来るのか……とても興味があるね」


 こいつ嫌い。


「私は努力してこの力を手に入れたの、これからもそう。私の自信は努力によるものよ?」


「英雄は努力してなれるものではない。英雄とは……なるべくしてなる物だ。英雄の素養のある者が必然的に英雄となる。ただの一般人がどれだけ努力しようが、英雄にはなれないのさ」


「何が言いたいの?」


 こいつ……やっぱり大嫌い。


「それはね……君がとても魅力的な女の子という事だね……」


「それは……どうも?」


「あはは、その動じない心!いいね……マリィ……どうやら僕には、君が必要のようだ。……君が欲しい」


「ごめんなさい。タイプじゃないの」


 ティレンまで!?決め台詞が出てる!出てるじゃない!?

 ティレンルートの攻略完了のフラグ出てるんだけど!?どうなってるの!?


「僕は諦めが悪い方でね……」


 いいえ、諦めて下さい!


「おい!嫌がっているじゃないか?」


 私がげんなりした顔をして嫌がっていると、公爵家のカイン・サンマリーナに話しかけられた。

 カインは、髪が長く紺色で目も紺色の美少年だった。青い礼服がよく似合っていた。


「お前は……カインか、英雄様に助けられた」


「私は王都にいたから見てはいない」


「興が削がれたな、また会いましょう可愛いレディ?」


 もう来るな、ティレンは頭が良すぎて嫌い。と言っても筋肉バカも嫌いだけど。


「大丈夫ですか?私はカイン、カイン・サンマリーナと言います」


「ええ、知ってるわ」


 今回の戦争で戦場になった場所。そこがサンマリーナ公爵領だった。

 カインの二人の兄は、ゲームでは登場しなかった。この戦争で死ぬ運命だったからだ。


「今回のご活躍は、兄より聞いております。本当に有難う御座いました。兄も危ない所を小さな女の子の冒険者に助けられたと言っていました。多分ですがマリィ様のことでしょう?」


「そんな事もあったかもしれないけど?」


 助けたのは確かだけど、内緒で回復魔法を使っていたので、おおやけには出来ないのよ?


「マリィ様!何かお困りの事があれば私に言ってください!何かご恩返しがしたいのです!」


 カインは私の手を取り、恩返しがしたいと訴えかけて来た。近いよ?


「ありがとう?覚えておくわ……」


 カインって、聖女と聖剣にしか興味がない研究者のはずだったから、私が聖女と言う事と聖剣を持っている事がバレなければ特に困る事は無い。


「ちょっと、僕のマリィに触れないでくれるかな?」


 え?ファルシアス?私が命を助けたライリーちゃんのお兄様が登場してしまった。ゲームの中でファルシアスは死んだ事になっていたので、攻略対象では無いけど、攻略対象に優る程の超美少年なのは違いない。


「えっと、君は……ああ、サントルデ辺境伯の……」


 私はファルシアスの陰に隠れて、ファルシアスを盾にガードした。


 ライリーちゃんの攻略にはファルシアスが必要だから、今はファルシアスを盾に使うしかない。


「僕は、ファルシアス・サントルデだ。マリィに手出しはさせない」


「私は、恩を返したいだけでマリィ様に手を出したりはしないよ?」


 なんだろう……この修羅場のような空気は何!?


「ファルシアス?この人は大丈夫よ?」


「はぁ……これだからマリィは目が離せないんだよな?いったい今日、何人の人に告白されたんだ?」


「えっと、……覚えていないわ?」


 クズ以外の攻略対象が全員揃ったのはこれが初めての事だった。


 そして、これが……まだ始まりに過ぎないのを私は知っている。


 ゲームの舞台は2年後、学園に入学してからだと思っていたのだけれど、既に現実のゲームは始まっていたのだ。






読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。

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