第14話 ライリー・サントルデ



 私は、冒険者としての報酬を受け取りに冒険者ギルドに寄っていくことにした。

 同行者はセルフィーさんとアマンダお姉様だ。


 アマンダお姉様は隠居の身なので正体を隠している。なので冒険者としては、セルフィーさんと私の二人になる。


 アマンダお姉様はランクで表すと、実力はSランクを優に超えている。


 フルセント村を離れて、冒険者ギルドのあるサントルーデの町へ寄る事になった。

 サントルーデは、領主様が住んでいる町で、サントルデ領の中心ということで結構な賑わいを見せていた。


 サントルーデの冒険者ギルドは、セルクードの町のギルドと同じくらいの大きさだった。


 カウンターのお姉さんに話しかけると、報酬は領主様より直接お受け取り下さいと言われて、依頼達成の書類を渡された。


「え?」


 魔物とは戦っていないのに依頼達成とは、どう言うことだろう?

 確かに住民は全員女神様の奇跡で守られたけど、それで依頼達成していいのだろうか?


「領主様よりの依頼ですので仕方がありません」


 セルフィーさんの言う通り、領主様に会いに行くしかなさそうだ。


「ユベントスにシャリアには、顔を合わせられんから、私は待たせてもらうよ」


 ユベントスさんとシャリアさんと言うのは、今の領主様の父と母らしくって、昔は良くアマンダお姉様と交流があったらしい。知り合いと言うなら会うのはまずい。


 若返ったアマンダお姉様と顔を合わせたら、原因を追求される事は間違いない。


 私はセルフィーさんと二人で領主様の住む屋敷に行く事になった。


 領主様のお屋敷は、さすが辺境伯と言うだけあって、セルクロッドの屋敷よりも大きかった。城塞都市とまでは行かないけど、隣国と接しているので、街の周囲も高い壁に囲まれていた。

 これなら魔物に襲撃されても耐えられそうだ。

 

 屋敷の門番に用件を伝えると、中に通してくれた。私とセルフィーさんは魔法使いなので、武器は持ち合わせていない。


 お屋敷の玄関前には、使用人と見られるメイドさんが立っていて、話しかけると家の中に案内された。


「お待ちしておりました。Sランク冒険者のマリィ様」


「はい……え?」


「ディック様がお待ちですのでご案内いたします」


「はぁ……」

 

 ディック様が誰か知らないけど?案内すると言うので着いて行くしかない。


「マリィ様をお連れ致しました」

「うむ、下がって良いぞ」


 案内された部屋に入ると、フルセント村で私が話しかけた冒険者風の人が大きなソファーに座っていた。


「よく来てくれたマリィ殿」

「はぁ……」

「娘がどうしても会いたいと言うてな、ギルドにこっちに来るように言うておいたんだ。すまんな」


「そうだったんですか……」


「おっと、自己紹介を忘れていたな。ワシはディック・サントルデ。辺境伯とも呼ばれておる」


「これはどうも……辺境伯様でしたか」


 ディック様は、ソファーから立ち上がり、あの女の子と同じ緑色の髪にサファイヤの瞳で私をまっすく見つめていた。


「改めてお礼を言わせてくれ。息子のファルシアスを助けてくれてありがとう!」


「いえ、そんな……あの後の女神様の奇跡に比べたら……私なんか……」


「確かに……あの女神様の奇跡は素晴らしいものだったが……ワシは誰に礼を言えば良い?まさか女神様に褒美など渡せまい」


「あはは……ですよね」


「女神像を作って、村に祭る事は決定している」


 ええ……作るんだ女神像……。


「そんな相手の分からない事実よりも、ワシの跡取り息子のファルシアスを救ってくれたマリィ殿への感謝は、してもしきれん程なのだ」


「放っておけませんでしたし、助けられて良かったですよ?」


「あの後、礼を言おうとしたら、既に村を出たと言うじゃないか、それで急いで帰ってきたのだ」


「……そうですか」


 ディック様と話をしていると、入り口の扉がバタンと開いて、あの時の緑色の髪の女の子が部屋に入って来た。


「マリィ様!」


 え!マリィ様って?なんで様付けなの?


 女の子は入ってくるなり、私に抱きついて来て……離してくれない。


「改めて紹介しよう。娘のライリー・サントルデだ」


「私はライリー・サントルデです。この度は、お兄様を助けて下さいまして、ありがとうございました!」


 ライリー・サントルデって!?もしかして……ゲームでは第一王子の婚約者じゃなかった?

 ゲームでもお嬢様で、性格も良くって主人公のマリィにも優しかった。


 ――なんで今まで気付かなかったの?


 ゲームでは、大切なお兄様を亡くしていて……陰ではいつも泣いていたっけ。


 え?お兄様を亡くして!?え!?私、お兄様を助けちゃったよ!?


「私はマリィ・セルクロッドよ?」

「マリィ様!」


 セルフィーさん!?え!?


「あ……いけない。言っちゃった……」


 考え事をしてたら、本名名乗っちゃったよ?どうしよう!?


「セルクロッド?お隣の…セルクロッド伯爵の?」


「あ、あー……はい……三女のマリィです」


 何と自分からバラしてしまうなんて……仕方が無いか。聖女がバレた訳じゃないし、Sランク冒険者ということがバレちゃったけど……?


 9歳のSランク冒険者なんて普通に……いる訳ないか?


 ……ダメだわ、一応口止めしとかないと。





読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。

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