第10話 伯爵領での生活とアマンダさんの呪い
私は、
ただ、既に聖女としてアランの家で暮らしていたので、特に生活に変化がある事もなく、サリィお姉ちゃんとアンナお姉さんとの暮らしも順調だった。
「おはようございますマリィお嬢様♡」
「おはようアンナ♡」
アンナお姉さんが、私の私室へ朝の挨拶に来た。ちょっと私が貴族になったくらいで口調を変えちゃって、顔も緊張してるしいつものようにして欲しいんだけど……。
変わった事と言えばアンナが、私の事をマリィちゃんじゃなくてマリィお嬢様と呼ぶようになってしまった事かな?
私は貴族になってしまったので、仕方が無いのかも知れないけど……。アンナは私のお嫁さんなのよ?
「アンナ?二人っきりの時くらい……マリィって呼んで欲しいな?」
「はい……それでは……んん!……ふぅ……マリィちゃん♡おはよう♡マリィちゃんが貴族様になっちゃうなんて……お姉さん寂しいよ?もう、お姉さんのご飯はいらないのかな?って考えちゃうのよ?」
アンナお姉さんは、んん!って気合を入れると前のお姉さんに切り替えてくれた。
「アンナお姉さんのお菓子は、大好きだからまた作ってよ?」
「マリィちゃんのためなら作っちゃうよ?でも材料と調理場をお借りしないとならないのよねぇ」
「それは、任せて?調理場の担当の人に頼んでみるから」
「分かったわ。そっちはマリィちゃんにお願いするわね?」
「それよりもね?おはようの忘れてない?」
「あ……うん♡……ちゅ♡」
アンナは私に、おはようのキスをしてくれた。最近はサリィお姉ちゃんとアンナお姉さんは朝交代でやってくる。今日はアンナお姉さんの日だったようで、明日の朝はサリィお姉ちゃんの番だ。
逆に夜は朝と逆なので、今日の夜はサリィお姉ちゃんが来る予定になっている。
「そうそう、朝食の準備が出来たので、呼んでくるように言われたのよ?」
「はーい♡」
私は、浄化魔法で身体を綺麗にして、服を着替えてアンナお姉さんに身だしなみを整えてもらうと、お屋敷で食事を取る為の食堂へと足を運んだ。
私が貴族になってから、食事のとり方にも変化があった。
今までは、お父さんお母さんと、アンナお姉さん、サリィお姉ちゃん、セルフィーさんの6人で食事をとっていたんだけど……。
私だけ、フィナリアさん、セーラちゃん、シーナちゃんと一緒に食事をとるように変わった。
領主のアランは王都に行ったりするので忙しく、家にいない事が多いので、この三人と食事を取るのが普通になった。
「おはよう!セーラ♡」
「うん、おはようマリィ♡」
「おはよーマリィ!」
「シーナもおはよう♡」
「おはようアンナ?みんな揃ったわね?それでは椅子に座って?頂くわよ」
「「「はーい」」」
「エスパーニャの神々よ……今日も恵みをありがとうございます」
「「「ありがとうございます!」」」
「さぁ、いただきましょう?」
貴族になって変わった事は、食事をする時にお祈りをするようになったの。
最初は慣れなかったけど、セーラの家族みんなが一緒だからもう慣れてきた。
「マリィ様?お代わりはいかがですか?」
「大丈夫だよ?ありがとうサリィ♡……また夜ね?」
私は屋敷の中ではマリィ様、マリィお嬢様と呼ばれている。聖女様とは呼ばせない。だってどこで誰が聞いているか分からないから。お屋敷の中は大勢の人が働いているのでどこで話が漏れるか分からない。
そして私にとって重要な、魔法の修行とレベルアップの方も、セルフィーさんの指導の下進めている。
そして、以前のように自由な活動は出来なくなったけど。少しずつ冒険者としての活動も再開している。
「マリィ様、今日はギルドに行きましょう」
「セルフィーに任せるわ」
セルクロッド伯爵領の今いる町の名前は、セルクードという町で王都にも近いので人口もそれなりに多い。
領地の北側には、エスパーニャ王国領があって、国では一番大きな領地となっている。
東側には、ターコイズ公爵領があって、確か第三王子の婚約者がターコイズ公爵令嬢でゲームではマリィを虐める悪役令嬢だった。
西側には、サントルデ辺境伯領があって、第一王子の婚約者は、確かサントルデの伯爵令嬢だったと思う。
南側には魔物が住む森に旧クロズフィルネ領と、その南にも他の領地があるらしいけど、今の所気にする事は無いと思う。
◇◇
セルクードの町の冒険者ギルドは、私が住んでいたイノールの町のギルドより大きかった。多分王都に行くともっと大きいのかもしれない。
ギルドに入って依頼票を確認していく、セルフィーさんはAランクで、私はBランクなので、Sランクまでの依頼が全て受注可能だ。パーティを組んでいれば一つ上のランクでも受注出来る。
「これなんてどうでしょう?」
「Sランクの依頼?白金貨10枚?随分と高額な報酬だけど大丈夫なの?」
Sランクにでも報酬はピンキリで通常なら金貨100枚程度なのがこの依頼には白金貨が設定されていた。白金貨は金貨1000枚に当たる。この依頼の報酬は金貨で10000枚の報酬という事になる。
「悪夢の呪い……その悪魔に呪われたものは植物状態となり、夢から覚める事は無い」
悪夢の呪いの情報と回復方法の調査、さらにその呪いを解いたものには別途報酬を与えると書いてあった。
「で、依頼主は誰なの?」
「アンジェリーナ・ターコイズ。隣の領地ターコイズ公爵のご令嬢です」
「いいわ受けましょう」
あの悪役令嬢が依頼主なんて何かありそう……。
私は、依頼を受けると一旦屋敷に戻り、アランが屋敷に戻っていたので、ターコイズ公爵領へ行くことを話すと、一緒に行ってくれることになった。
なんと、ターコイズ公爵のご婦人はアランのお姉さんなのだとか?
え?ってことは悪役令嬢のアンジェリーナ・ターコイズは、セーラとシーナの従妹って事?
という事は、私にとっても義理とはいえ、アンジェリーナは従妹という事になる。なんて狭い世界なの?
◇◇
馬車を出してもらい、東隣のターコイズ公爵領へと移動する。
王都程は遠くもなく、盗賊の出る街道も無かったので、問題なくターコイズ領の公爵が住んでいるというサーマルト町へ到着した。
ここが?町というので想像していた街とは大違いで、もはや王都と何ら変わらない都市がそこにはあった。
大きさもそうだけど城壁に囲まれた巨大な城塞都市というのが、私の見たままの感想だった。
馬車は城門を難なく通過し、城塞都市へと入っていった。
「おっきい城壁」
「公爵家は、王族に連なる家系だからね。どっちが王都か普通の人では見分けがつかないだろうね?」
「へぇ……そんなすごい人に会いに行くのね?」
アランが説明してくれたけど、ちょっと不安になって来た。だってあの悪役令嬢だよ?
「ははは……そんなに緊張しなくても良い。ターコイズ公爵とは旧知の仲だ。ユーリエ姉さんもいるし問題ないよ?」
ユーリエ姉さんとは、アランのお姉さんの名前だ。子爵家から公爵家に嫁いだなんて玉の輿じゃない?……どうでもいいけど。
馬車はそのまま公爵のいる城へ入っていった。そう!城だよ?お城!お城にしか見えない公爵の屋敷に馬車は泊まった。
「着いたぁ!」
「お疲れ様ですマリィ様」
「では降りようか?」
馬車を降りると、使用人とメイドが数名迎えてくれた。
早馬を出して訪問を伝えていたので、問題なく受け入れてくれる。
「ようこそいらっしゃいました。セルクロッド卿」
「うん、出迎えありがとう。だけど今日はただの付き添いでね?」
「はぁ……取り合えず、ご案内いたします」
私達は、城の中をメイドさんに案内され、応接室に通された。
応接室にはすでに人が待っていた。早くない?
「アラン!よく来てくれたわ!」
「ユーリエ姉さん……元気そうで良かったよ」
ユーリエと呼ばれたアランのお姉さんは、アランと再開の抱擁を交わしていた。まぁ姉弟だからいいよね?
「それで、この子がそうなのね?」
「養女のマリィだ。訳あって俺が養女にしたんだ」
「どうも……マリィと言います。よろしくお願いします?」
「あら、可愛い♡歳はシーナちゃんと同じなんですって?」
「8歳になります」
ユーリエさんは、アランと同じ金髪が腰まであって、綺麗な緑色の瞳をしていてとても素敵な人だった。まだ20代でとても若くて……私も好きになりそう。えっと、人妻に手は出さないよ?
「こちらはAランク冒険者のセルフィーで、私はBランクの冒険者です」
「まぁ!こんなに小さいのにBランクだなんて、凄いわ」
「という事で、私は冒険者ギルドより依頼を受けて、依頼者のアンジェリーナ様に会いに来たのですが?」
「そうなのね?アンジェが依頼をね……依頼というのは聞いてもいいのかしら?もしかして呪いの件とか?」
「そうですね、悪夢の呪いの情報と回復方法の調査の依頼があったので」
「もう、3年になるかしら……私の義理の母、アンジェの祖母のアマンダお母様が悪魔の呪いに侵されたのは……」
ユーリエさんの話だとアマンダさんは3年前、禁書庫の本を誤って落としてしまい。その時に悪魔の呪いにやられて、発見された時には既に手遅れでそのまま意識が戻らないんだとか。
医者に見せても、植物状態となっていて意識は戻らず助からないと言われて、お婆ちゃん子だったアンジェは、アマンダさんを治すために医者や魔法使い回復薬などあらゆる手段を試したけど意識は戻らなかったんだとか。
「失礼するわ!」
「いらっしゃいアンジェ。もういらしてるわよ?」
「まぁ、アラン叔父様。いらしていたのね?」
「大きくなったね?アンジェ。見違えたよ」
「そんなお世辞を言っても、何も出ませんことよ?」
「今日は、依頼主のアンジェに、依頼を受けた冒険者の娘を連れて来た」
「どうも、紹介を受けたマリィ・セルクロッドです。Bランク冒険者です」
「貴方が?アラン叔父様の養女になったって言う子ね?」
「はい……そうですね。よろしくお願いします?」
アンジェリーナは、ユーリエさんに似て、金髪縦ロールの美少女で、瞳も同じ綺麗な緑色をしていた。白いワンピースのドレスがとっても似合っていて、ゲームの悪役令嬢にはとても見えなかった。
「それで……依頼内容は覚えていて?」
「悪夢の呪いの情報と回復方法の調査の依頼……ですよね?」
「お祖母様の呪いを解いて欲しいの!依頼を受けたなら出来るんでしょ?」
「たぶん?私の力なら……呪いなら解除も可能かと?」
「出来るのね?お願いします!お祖母様を助けて!」
アンジェリーナとユーリエさんに連れられ私達は、そのお祖母様の寝ているという部屋に案内された。
その部屋に入ると、痩せてしまった綺麗な、お姉様が横たわっていた。まだ若い、多分40くらい。呪いの影響で歳を取らなくなってるのかもしれない。
「寝ているわね」
「悪夢の呪いは、寝たまま起きないのが特徴らしいわ」
「一つ条件があって、これから見る事は他言無用です。私の力を悪用されたくないので。いいですか?」
「分かったわ」
「約束するわ」
アンジェリーナとユーリエさんに一つ約束させると、私は聖女の力を解放した。使うのは浄化魔法と状態異常回復魔法、そして上級回復魔法。多分体力も落ちてるし。
「……悪魔の呪いよ……聖女の奇跡によって浄化せよ!全ての状態異常よ消え去りなさい!そして、上級完全回復魔法!オールヒーラー!!」
別に呪文はいらないんだけど?
ほら、なんか呪文があった方がかっこいいじゃない?だから考えておいた呪文っぽくしてみたのよ?
聖なる光に包まれたアマンダお姉さまの顔に赤みが戻っていき、瞼が開いてその綺麗な瞳に力が宿った。
「お祖母様!良かった!目が覚めたのね!良かったぁ!良かったですわぁ!」
「あなたは……アンジェ?いつの間に大きくなったの?」
「もう、お祖母様が倒れてから3年も経ってるんですのよ?」
「3年?」
「お母さま?ご無事で良かったです……うぐっ……うぅ……」
ユーリエさんの瞳には涙が溢れていて、アマンダお姉様は起き上がって、ユーリエさんを優しく抱きしめていた。
「良かったね?アンジェリーナ?」
「マリィ様!ありがとうございますわ!まさか……マリィ様が、あの伝説の聖女様だったなんて、このご恩は、一生かかっても絶対にお返しいたしますわ!」
「あ、聖女って事は言わないように?約束よ?」
「流石は聖女様です……」
「セルフィーは正常運転ね?」
セルフィーさんは当然ですといった顔をしていた。まぁそうなんだけど?
私は親子の再会を見ながら、そっと部屋を出た。
あとは、家族でだけで語り合って下さいな。聖女は手を貸してあげるだけだから。
読者様へ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。
続きが気になると感じて下さいましたら、
☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。
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