第7話 シーナちゃんと仲良くなった



 私は、さっき助けて家まで運んで来た貴族のような服を着た人が目を覚ましたと言うので、セルフィーさんと様子を見に行ってみた。


 3人を寝かせておいた部屋に入ると、3人は怯えたように部屋の中心で3人で子供を守るように抱き合っていた。


「エルフ?……君が、……俺達を助けてくれたのか?」


 セルフィーさんに話しかけて来たのは、金髪オールバックの男の人で、まだ20代位の若いイケメンの緑の瞳には、怯えが見えていた。


「いえ、私は手伝っただけです。助けたのはこのお方、マリィ様です」


「私がマリィだよ?……確かに谷底に落ちていた馬車の下敷きになっていた貴方たちをここまで連れて来たのは私ですよ?流石にそのままにしていたら魔物の餌になってしまうじゃない?」


 私は家まで運んできたという事だけを伝えた。まさか生き返らせて、さらに回復して連れて来たなんて言ったら、聖女だってバレちゃうじゃない?


 もしかして、人攫いだと思われてる?うーんまだ、緊張が解けないみたいね。


「心配しなくても、家はただの農家だし、見ての通り……何もないでしょ?」


「そのようだな……何も無いか……」


「あなた……悪い人じゃなさそうよ?」


「かあさま?」


 私と同じくらいの年齢で、父親と同じ金髪で、緑の瞳が綺麗な女の子が話に加わった。


「うふふ、可愛い女の子、お名前教えてくれる?」


「……わたし、シーナ」

 

「シーナちゃん?私はマリィだよ?よろしくね?」


「うん!マリィちゃん!」

 

 シーナちゃんはとってもかわいい女の子だったので、抱きしめてあげた。

 ……あ、でもシーナちゃんの服は、土と血の色に染まっていたので、浄化魔法で綺麗にしてあげた。これなら寝かせる前にやっておけば良かったと後悔したよ。


 でも浄化しても、汚れが消えるだけで、服はボロボロのままだった。

 そこで私は、修復魔法を使ってシーナちゃんの着ている服を元通りに直してあげた。元は白いワンピースで、とってもかわいい服だった。


「うわぁ、すごい!マリィちゃん?どうやったの?わたしにも出来る?」


「うーん、シーナちゃんには無理かなぁ……あはは」


 なんか見られてるような気がする……。私、何かやらかしたかな?


「今のは見た事のない魔法だが、……浄化魔法に修復魔法?……いやまさか、そんな馬鹿な……しかしシーナがこんなに懐くとは、……ならば、信用しても良いか……」


 いや、それって、ほぼバレてない?大丈夫かな?うんダイジョウブ。


「いや、疑って悪かった。俺は、アラン・セルクロッドだ」

「セルクロッド子爵ですか?」

「お、俺を知っていたか?エルフの少女よ」


「私の名前はセルフィーです。Aランクの冒険者で、今はマリィ様のお付きをしています」


「ほう、農家の娘にAランク冒険者のお付きがついていると……」


「私は。Bランク冒険者だからパーティを組んでいるってことよ?」


「その年で、既にBランクだって?規格外もいい所じゃないか?」


 ……あ、これは言っちゃダメな奴?


「まぁ……いいか、こっちは俺の嫁のフィナリアだ」


「フィナリア・セルクロッドです。今回は助けて頂いたそうでありがとうございます」

 フィナリアと呼ばれたご婦人は、ブラウンの瞳に茶色の髪がとても綺麗で、汚れたドレスが勿体無く見えた。


「えっと、お二人にもかけます?魔法」


「是非!お願いするわ」


 破けて血で汚れている服に気が付いたフィナリア婦人は、こちらを見て是非と了承してくれたので、二人にも浄化魔法と修復魔法を掛けてあげた。


「うわ、本当に素晴らしい魔法ね?、ねぇ……マリィちゃん?家に来ない?」


「すばらしい!実際に直に感じてみると、今かけてくれたマリィの魔法のすばらしさに感動したよ」


「えっと……どうも?」


「マリィ様は、素晴らしいお方です」


「うん、マリィちゃんはすごい!シーナもマリィちゃんになる!」


 シーナちゃんは私になりたいって言ってるけどそれは無理だと思うな?あれかな……よく大きくなったら、○○マンになるとか。魔法少女○○になるとか。そんな感じなのかな? 


「それで、ここはどこになるのかな?」


「ここはイノールの町のはずれですね。見た通りの農家ばかりの町なので何もありませんが……」


 セルフィーがかわりに答えてくれた。ホント何も無いのよこの町。


「なるほど、ここは隣の領地の南側か、確か馬車が落ちたのもこの領地に入ってからだったな」


「そう、それでたまたまその近くで狩りをしていたセルフィーさんが気になる気配がするっていうので駆けつけてみたら、谷底に落ちている馬車を見つけたって訳なのよ」


「いや、気配ね……エルフだからそういった力があるのかも知れないか……」


 アランさんは顎に手を当てて考えているけど、考えても何も出ないよ?


「それで、谷底に落ちたんだ。普通なら今頃はこの世にはいなかっただろう?さっきのボロボロの服と血痕を見れば嫌でも分かる。俺と嫁はほぼ致命傷だったろう。それに……シーナは……あの量の出血量ではもう……死んでいてもおかしくない。生きているのが不思議なくらいだ」


「まぁ……そうかもしれませんね?シーナちゃんは手遅れでしたから……」


「だろうな……手遅れ……そうなんだ。なぜ、手遅れの娘に致命傷の私達が、こうして生きているのか?そんな奇跡が起こせる人物なんて……過去に存在したと言われている、伝説の聖女様しか考えられないんだ!」


 ああ……そうよね?バレるよね?でも、このセルクロッド子爵ってゲームに登場しないんだよね?もしかして……馬車が落ちて死んでいたからゲーム中には登場しなかったとか?まさかね?


「それで……仮に私が聖女だとしたら……子爵さまはどうするつもりですか?私利私欲に走り、私を使い潰す気ですか?教会や王家、ここの領主ならやりかねないでしょう?」


 貴族は信用できないけど、この人なら……ゲームに登場しなかった、この人ならもしかして信用できるかもしれない。だからこの質問を投げかけてみたの。


「マリィ、貴方は俺の、いや俺と嫁そしてシーナの命の恩人だ。貴方を危険にさらすことなど、絶対にしないと誓おう」


「では、私のをセルクロッド子爵の家で面倒を見てもらえますか?」


 もちろんその家族には、私の嫁のアンナお姉さんとセルフィーさんも含まれる。


「分かった。命の恩人の願いであれば、うちで面倒を見よう」


 良かったぁ、これであのクズのいるクズ男爵領から脱出できる!私の未来も明るくなってきたよ?


「あ、それと……あの馬車の事故は、多分事故に見せかけた暗殺だと思うので、用心はしておいた方が良いと思います?」


「暗殺だって?」


「あの馬車は大破していましたが、馬と御者が落ちていませんでした。普通なら一緒に落ちるはずですよね?」


「まぁ、確かに……という事は……あの御者か!あいつが犯人というわけだな?」


「雇われた殺し屋かもしれません。貴方が死んで得する人は誰でしょう?」


「得するやつ?ここの領主のクロズフィルネか!あのやろう!」


 アランの話では、ここのクズ男爵領とアランの領の丁度中間地点に山があり、その山のアランの領地側に銀の取れる鉱脈が見つかったとかで、その鉱山をここのクズ領主がねらっているとか、他にもアランの長女をしつこく追い回すクズの愚息がいるとか……。


 シーナは、次女で上にお姉さんがいるようだった。


 でも、クズ男爵家が狙っている子爵家の女の子って、ゲームで見た気がするんだけど?誰だったかな?見たら思い出すかも。


 十中八九犯人はクズ男爵だろうけど、アランの方でも調べてみるとは言っていた。

 ここで3人を匿ってあげるとも言ったけど、置いて来た姉が心配なので戻るという話だった。それにクズ男爵に先手を打たれる前に鉱山とか守らなくてはならないものがあるとかで、とりあえず迎えが来るまでは家で休んでもらう事にした。


 アランの領地への連絡には。ギルド経由で早馬を走らせた。


 そして、私は両親とサリィお姉ちゃん、アンナお姉さんに相談し、安全な隣の領地への移住を決めてもらった。説明が大変だったけど、しっかり説明したら納得してくれたよ?


 ――そして、迎えの馬車がやって来た。







読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

これは、百合ハーレムを目指す女の子の物語です。


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆☆☆♡にて評価コメント、応援よろしくお願いします。


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