第75話
そんな様子を見てでしょうか……コムさんが歩み寄ってきます。
「もうちょっとで開きそうな気もするんだけど……ギリギリで力が足りないかな」
コムさんが玄関扉との戦いを諦めるのを見届けた平安名さんは、奥の方へと歩みを進めます。
「うわ……」
「さて……ほんじゃ、ワイの提示させてもらう【謎】なんやけど……この館からの脱出ゲームでどやろ?」
お……脱出ゲームですか? 楽しそうですね。提案された時にも思ったんですが、やっぱり実際に体を動かして【謎】に挑むのは……没入感が圧倒的に違いますよね。この感覚は多分……VRゲームのそれに近いのかもしれません。
「やります、やります」
「ほな……決まりや。多分、出る方法は何通りもあると思うんやけど、この館から脱出できさえすれば、何でもええ。ただ……あんまセコい手段は感心せーへんけどな」
ふふっ。まさか、この
「お、自信満々やな。しかしあれやな……そんだけ余裕やったら、制限時間でもつけて難度を上げたほうがええか?」
お。ひょっとして、
「いいですよ。その挑戦……受けて立ちます」
「おゆきさん……調子に乗りすぎじゃない?」
と、コムさんからは異議申し立てをされたのですが……
「却下!」
「おーおー。ええやん。いい返事やな。この館は防音設計になっとるさかい、おゆきちゃんがどれだけ元気に騒ごうが平気やから……楽しんだってーな」
はい、楽しませて頂きます! よし、それじゃ……室内の探索と行きましょう!
「あの、もし制限時間が切れたら……どうなるんですか?」
コムさんから平安名さんに質問が飛びました。
「そやなぁ……せっかくやし、館を爆発でもさせよか。いやいや、安心してーな。こっちの世界やから何度、館を爆発させても再建は可能やさかい」
は? 爆発? いやいや、聞いてないですよ。しかも館が再建可能とか以前に、こっちの身の心配をしてくださいって……そういえば、もう死んでましたね。なら……大丈夫……なの? よくわかりません。
「ほんじゃ、用意……スタート。制限時間は5時間ってところやな」
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制限時間が設けられたのはいいとしてですね……流石に爆発には驚きました。いくら我々が死なないとはいっても……爆発する建物の内部に取り残されるのは御免被りたいです。そういった訳で……
まずは……広間の四方の壁に存在している無数の扉。ここから取り組みましょう。
そして
ゴチーン
「痛っ!」
痛いのを我慢しながら、
その作業を何回か繰り返したときです。ようやくにして、扉の先が壁ではない場所を発見できました。扉の向こうに道がある。たった、それだけの事に感動してしまう
そして、
とぼとぼと行き止まりから戻ると扉を閉めます。八つ当たりに強めにドアを閉めてしまったので、大きな音が広間に響きました。その時……
「おゆきさん、こっちの扉から下に降りられそうだよ」
コムさんが遠くから、自身の発見を報告してくれました。本当に降りられるんですか? 実は行き止まりなんじゃないですか?
そして、扉の先を観察すると……確かに扉の先は壁ではありませんでした。その先には下り階段がありますね。しかし、これ……もしも
「とりあえず、行ってみようか」
コムさんは階段を下り始めました。
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