第31話
今回の出題は、
コムさんはコンクリートの床に腰を下ろし
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考えることに疲れたのでしょう。コムさんは気分転換がてら、密室内を歩き回り始めました。天井や床、コンクリート壁をボケーっと眺めたりしています。多分、今のコムさんの脳内は空っぽでしょう。
いやぁ……惜しいですね。そこを見ていても正解は見つかりませんよ。
コムさんは特に床が気になったのでしょう。座り込むと……何か細工でもないかとペチペチ床を叩いています。
これも惜しい。あとちょっとですね。
そして、コムさんは床を調べている体勢のまま、トレーラーハウスの外壁の方を眺め始めました。
そうそう……それです、それ。
「あ……わかった」
気づいたようですね。さあ……それでは答え合わせといきましょう。
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「これ、ズルいよ。だって、おゆきさんだったら目の前なんだし……」
コムさんは不満そうに不公平を訴えています。ですが、
お分かりになりましたでしょうか。答えは【トレーラーの下はくぐれる】でした。トレーラーハウスから出るのに段差があったぐらいですからね。その車輪分の高さは浮いているんです。その空間はそこまで高いものではありませんが……
トレーラーハウスの下を匍匐前進し……通り抜けた先は完全な漆黒の闇に包まれていました。
コムさんは匍匐してくるのに難儀してきたようですね。体格の小さい
乃済さんはコムさんほどは苦労せず……むしろスムーズに出てこられました。頭を打った様子もなく立ち上がると、汚れた服の前面を手で払っています。彼女は現世で一度、こちらの世界では複数回の匍匐移動経験者なのですから慣れたものなんでしょうね。ですが、それだけが理由じゃないのは……
「そりゃ、引っ掛かるような出っ張りがないですもんね」
「あ゙?」
敢えて聞こえるように呟いた言葉は、しっかりと彼女へ届いたようです。濁点付きの【あ】を返答として頂きました。真っ暗だったので、その時の表情が見えなかったのには悔いが残りますね。
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【トレーラーハウスの密室の先の密室を抜けると密室であった】
はい、密室です。具体的に説明しますとですね……漢字の【臼】を思い浮かべて頂けるといいんじゃないかなと思います。臼の真ん中の横線、穴が開いてる部分があるじゃないですか。そこにピタリとトレーラーハウスが設置されていたと考えてください。そして、そのドアから出られるのは臼の下側の四角い空間だったんです。はい、そこが先程までの空間です。
そして、
要は、臼と曰の合せ技みたいな密室なんだと思ってください。臼曰くって感じですね。ひょっとしたら……今後、あの臼が喋るのかもしれません。
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さあ、こちら側の密室の詳細な調査を始めましょう。
こちら側の密室も……天井・壁・床のすべてがコンクリートで出来ていました。外壁は臼の下側の部屋と同様に分厚く造られているようです。そして真ん中の線に当たる部分も同じ程度の分厚さのコンクリートとトレーラーハウスで塞がれています。まあ……下をくぐることは出来るんですけどね。
「基本的な造りは同じみたいですね」
「そうだね。元々は一つの大きなコンクリートの立方体を、真ん中の壁とトレーラーハウスで区切っただけなのかな」
「ただ、これは……ちょっと雑な仕事だね」
そう言うと、コムさんは壁際を照らし示します。そこには建築用の資材が山積みにされていました。おそらくは、この建物を作った時の建築資材の残骸かと思われます。
そこにあった物は……工事現場でよく見る手押し車。これ猫車って言うんですよ。カラーコーンに沢山の材木。ホームセンターで売っているインスタントコンクリートが積まれていたり、空袋が散乱したりしています。他にもスコップや吸殻入れ、輪郭が凸凹になったドラム缶や一斗缶。土に汚れたバケツなどが乱雑に置かれていました。
「どうせなら……これ、片付けておいてほしかったですね」
「多分、工期とかが厳しかったんじゃないの」
コムさんは現場の残酷さを指摘しました。殺人現場用密室工事、工期要相談とかで営業取ってくるんでしょうか……。そして現場が苦労したと。
「やっぱり、手がかりはこれしかないみたいだね」
「はい……そうみたいですね」
その壁には、【次丁巳 日乙巳】と書かれています。
「この文字の意味……分かりますか?」
いつの間にか背後にいた乃済さんは、落ち着いた声で……壁の文字の謎について出題するのでした。
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