第3話 さいごのいくさ
『パワーエンゲージはクランにかかってるからもう試運転は済んでるんだけど、フル斉射に耐えられるかはわからないからねー今のところパワーエンゲージは順調。スキル取りまくった甲斐がある』
『こちら5層。管制は「みんなのために」の広報が取りますね。実際に雪菜さんを体験すると凄さがわかりますね。ここにオーバードライブで力の上昇が加わるのですか』
「うがっ!?」
戦闘は思念の集合体から始まった。
100キロ以上離れているところから、極大エネルギービームをディンゴの主力艦である巨大戦艦に放ったのだ。
極大エネルギービームに包まれる巨大戦艦。
『おい、おい! ウチはほぼ無傷だぞ!? 雪菜マジックコート切り忘れてねーか!? 艦隊戦を一人で防御なんて出来ねえ!』
『切ってるよ、ただオーバーコートが反応してる。すっげー痛かった』
『ああそうか、自動でマナを防御で消費するのか。5層! 短期決戦で行くぞ!』
『合点承知です!』
数回の巨大ビームを受け止め、それでもマナは回復が上回っている。魔力がものすごいからね、回復力がえげつないのだ。
後は……。
「私が痛みに耐えきれるかどうか、か。お願いアキちゃん私を抱きしめていて」
「私はどこへも行きませんよ、ご主人様」
ディンゴ艦隊が全て出発した後、5層の出陣が始まる。超巨大戦艦「タイタン」は戦場の真上にテレポートしてきた。頭上で上下逆さまになる旋回をして主砲をこちらに向ける。
次に現れたのは超巨大空母「エンタープライズ」だ。これはジダンの北西ちょっと遠目にテレポートして、早速戦闘機を繰り出している。
『『『行くぞ!』』』
ディンゴ艦隊の猛砲撃。
タイタンの巨大ミサイルに巨大砲塔。エンタープライズの戦闘機。5層から次々と出てくる巨大艦船。
スライムが見えないほどの猛攻撃だ。
一瞬にして終わる。これは終わった。
『目標、健在です。未だエネルギービームを発射しています。次元攻撃じゃ駄目なの? 雪菜さんの痛みはどうなってますか?』
『痛みはなんとか。エネルギービームを連射されると、気を失いそうになるけどね。それで、雪菜は探感知していたんですけど、砲撃でめちゃくちゃ小さくなった後、ブチブチに潰れたかけらを再度吸収して元に戻りましたね。次元攻撃は効いてると思いますが、再生を止めないと』
『定番としては氷で冷凍でしょうか?』
『いや、カイザフのじーさんが試してる。無効だったようだ』
『足は止まってますから現状を維持したいのですが、雪菜さん大丈夫ですか?』
『5層の通常艦艇を少し切り離してもらえれば。凄い強いのですが、その分攻撃する際の負荷が厳しいです。こいつは力じゃ駄目みたいですし』
どうすればいい、どうすればやつの再生を止められる?
なにか以前に倒した方法は……なんだっけな。
「ウンディーネみたくオイル効かないんですかねえ。砲撃で燃えちゃうから駄目かなー」
「アキちゃん! それやってみる価値はあるよ!」
『これより特殊作戦を決行します。少しの間砲撃を止めてください』
『了解。何するんだ?』
『全軍に伝えました。足が動きますので手早くお願いします』
みんなの不安はもっともだ、
だいじょうぶ、だいじょーぶ! 私ならやれる!
『これから凝固剤を打ち込みまくります。誰も取らないであろうスキルと素晴らしいのに取る人がいない銃の合体技です!』
4層の出入港から敵を見据える。
少し巨大化している。バグった死体を吸収でもしたのだろう。500メートルまで距離を詰めないと武器の射程に入らない。ふふ、このでかさだと500メートルでも接近戦だ。飛翔を使って一気に飛ぶ。
「スキル取得『建築業:Lv10』スキル取得『強力粘着ジェル:Lv10』。建築凝固剤と強力粘着ジェルという魔法を取得『錬金術Lv:10』で混ぜ合わせる。これで最強の凝固剤「べとべとべったり」の完成。固めるだけじゃない、べとついて離さないんだ!」
スーパーイーグルのマナタンクにべとべとべったりを装填。
「オーバードライブ! オーバーレンジ!マルチプルショットのフィフスショットのトライショットの連射の五連撃のトリプルアタック!!」
ものすごい数の銃弾がスライムに突撃して、溶ける。溶けた先のスライムは瞬間凝固で固まっていく。
『効いた! 弱い攻撃が出来るなら打ち込んでください! パワーエンゲージしてあるからレシピはわかるはず! マガジンにべっとり残っちゃうからつど交換して!』
『海兵隊を出す! 俺たちは銃を持っている! アキちゃん派だからなぁ!』
『陸上部隊を出して支援します。さすがに銃は持っていないですね』
銃弾の波がスライムを固めていく。みるみるうちにスライムは動けなくなった。
『雪菜、ここからどうする?』
『核があるからそれを砕くってアキちゃんが言ってる』
『アキさんのバグに関する情報は間違いがないんですよね?』
『認識コードつけてディンゴ・カザエフが証言してやるぞ?』
『固めるのに結構マナを使ってます、急ぎましょう』
射撃位置の場所から接近してスライムの前へ。これは……。
「スライムと言うより、怨念の塊だ。3層で夢破れていった人たちの」
このゲームはリアルに近い。負ける人だっている。それはしょうがない部分でもある。でも怨念として残していく物だろうか。場所を変える。レンズクで、ドティルティで、スピリナで、カリアリで、レクチで、やっていくことは出来なかったんだろうか。
また所属を変え交易船団。山賊海賊空賊の賊軍団。LAWで人を守る。それで出来なかったんだろうか。
ゲームへの怨念で済ませる物なのだろうか。
今核の発掘作業が続いている。掘り出せればアキちゃんが破壊して終わる。
みんなの怨念は破壊されて終わるのだ。
「核を発見しました! ただ通常の力では固すぎて攻撃が通じません!」
「わかった」
『主力部隊の皆さんとは一度パーティ抜けますね。アキちゃんに力を集中させますので』
『あいよ! アキちゃん派としては本当に助けられて良かった』
『5層も、ジダンが守れて良かったです』
システム:パーティから離脱しました。
システム:アキちゃん というパーティを設立しました。
「よし、じゃあ締めますか。
私の魂と接触しに行く。今日の魂は笑顔だった。
「うおおおおぉぉぉ!!」
「桜花拳法・気功乱斬! だめだ、効かない」
「諦めないで!
オーバーブーストは私の脳みそと繋がる。スキルは脳みそにあるって感じかな。
「わわわ、なんですかこの力! これなら! 桜花竜巻脚! だめです、まだ固い!」
「20秒で仕留めて! オーバーブーストで上がったオーバードライブを再発動! それであがるオーバーブーストでオーバードライブを強制上昇! オーバードライブLv10! オーバーブーストLv10!!!!」
「うわああああああああ桜花奥義・至極究極波動弾!!」
その波動弾は浄化の光だった。それはこの周辺全てを飲み込んだ。人々の怨念を綺麗全て飲み込んだ。一気に浄化される怨念。消えていく恨み。気持ちの整理が付いていく魂。
その光は私をも飲み込んだ。
地面に倒れる私。地面に倒れている中で、私が浄化されて消えていくのがわかる。
私のバグの正体は私だったのだ。私こそが私をバグらせていた正体だったのだ。
わたしは、消え去るべき存在だったのだ。
なんとなくわかる。消えれば異物として排出され、ここに戻ってはこれなくなるが現実世界の榊雪菜は元気になる。
それでいいじゃないか。わたしはもうまんぞくだ。
「うわああ、ご主人様!? 私の攻撃で浄化されちゃったんですか!?」
「そうかも。いままでありがと。あーあ、ここできえてもいいやー、さかきゆきなはまんぞくです」
「まだ死んじゃ駄目です!! そうだ、ご主人様の今の状態なら」
溶けていく思考。最後はアキちゃんにやられちゃうなんてね。ラスボスはアキちゃんだった。まぁ、満足な生活だったな。死ぬ怖さより浄化されて気分が晴れ晴れとしているほうが勝っている。
「生に執着してください馬鹿ご主人!!」
しょうがないなーフルケアかけておこう。もう半分くらい溶けちゃってるけど。
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