第4話 それではアキちゃん。ねぎらいの言葉をお願いします


 ――ここから、けいじばん――

 カルダール会戦57


 140

 結局どうなったんだ?


 176

 >>140

 ライドを見て回ったけど外地とLAW海賊の「夢の中で」と「ベリクルオンザスカイ」で消耗し合って終わり。ここからが本番だろう。ディンゴとカイザフの同盟が戦力整えて潰しに来る。持たねえだろうな。「ベリクルの中で」は規模でかいけど、外地に加えて空賊同盟に連戦できる体力はないだろ


 180

 さすが外地だな。で、ディンゴって大型艦船持ってたか? あとやつはアキちゃん派もしくはアキちゃん同盟だからな


 185

 ディンゴは持っていなくてもなくてもアキちゃん同盟の構成員がめちゃ多い。3層から出陣した戦闘艦の数、アリが群がるレベルだったぞ


 193

 大型艦船なしで4層に上がったって宣言した海賊もいねえだろ。密かに作ってたんだな。どこでだろうな。 ヘックスに噂はなかった。 ドティルティの外地近くか。


 194

 ドティルティは正義の鉄槌だが、あまり統治らしいことしてねえからなあ。

 そういや雪菜さんは生きてるのか?


 196

 ドローンが撃墜されて、撃墜した海賊を処理したところまではライド記録が残ってる。さすがにそのあとは潜伏してるんだろ。


 ――ここから、けいじばん――


 あんまり話題になってない、ヨシ!


 今私は空中をぷかぷか浮きながら低速度で南下しております。

 浮遊と飛翔便利だわ。浮遊で浮き上がり、飛翔で進む。

 浮遊はあまりマナを消費せず、飛翔の出力を下げればマナ回復が消費に追いつくので延々と進める。

 小さい人間を空中で見つけるのはかなり困難で、しかも森の上空に飛んじゃえば、そこに人が飛んでいると頭が回るはずもない。今まで何度も空賊の待ち伏せを迂回している。

 速度としては早歩き程度だけどそれで十分。いざというときはダッシュを唱えるとめっちゃ早く飛行できる。体がまっすぐ横になって飛んでるけど、布団に寝てる感じで進むので苦でもない。


「平和になったねえ」

「最初に交易していたころ以来ですね」

「のんびり行こうねえ」


 のんびりと4日ほど南下。バグ魔物が増えてきたので修復しながら進む。


 お、アキちゃん派閥からメールが来たぞ。


『カルダールの件は終わった。名誉総裁とついでに名誉副総裁のお前を救出に行きたいんだが現在地はわかるか? 大体で良い』


 返信しよう。


『GPS魔法ルクシアのx-45.7896、y12064.5287。私が名誉副総裁ってなんぞ』

『お前がいないと名誉総裁が悲しむからな。場所の把握は出来た。3日で着く。着くまでは気をつけろよ』


 やったー来てくれるぞー。ということでここでキャンプ。はぁー3日間が長く感じる。


 ってキャンプという名目でたき火を付けたらアキちゃん派閥に怒られた。煙と火で場所がバレるということだそうだ。今まで夜にたき火を付けて肉焼いてたんだけどまずかったかな? それは移動するから、危ないけど今よりは危なくないらしい。場所を嗅ぎつけられる可能性はあるけど。


「ご主人様、夜は寒いですけどどうしましょうねえ」

「ヒートアップでしのぐかー。救出される以上従わないとね」


 たき火の代わりに木を四角く切ってそれにヒートアップを掛け、発生する熱で夜をしのいだよ。最近主食のお肉は飛行して遠い場所でたき火を作り、そこで焼いて焼き肉にしてた。


 さて3日ほど過ごしたら、北の方から凄いでかい戦艦、そう、戦艦が空中を進んできたのだよ。でかい戦艦1隻とそれよりは小さい戦艦3隻。上も下にも砲塔が付いてるでかい船ばかりだ。


〈示された地点に着く。名誉総裁と名誉副総裁はいるか? いるなら合図を願いたい〉


 でかい音声が周囲に鳴り響く。

 ええー、どうしよう。

 マジックボムをLv1だけ取りそれを空中に打ち上げて合図としたよ。


〈確認した。名誉総裁はテレポートで、死に戻れない名誉副総裁はテレポートも危険と判断したので迎えの船を出す。それに乗られたし〉


 ということでアキちゃんはテレポートして先に巨大戦艦の中へ。私はカッター船を送られてそれに乗って巨大戦艦の中へ入った。カッター船だけでわかる。船員の規律と練度が良い。


 通されたのは戦闘用ブリッジ。CICとも呼ばれる。モニターがいくつも並んである部屋で艦内操作のほぼ全てが出来る場所。船の中枢ともいえるところだね。


 そこでみたのはアキちゃんにえらいえらいされてむせび泣くアキちゃん派閥の姿。みてはいけない物をみてしまった気がする。


「アキちゃん派閥、助けてくれてありがとう。凄い船だね。これの小さいのが後3隻もあるの?」

「あきちゃん……ぐすっぐすっ……。ああ、雪菜か。そうだな、これがウチの主力だ。後で空母も追加する予定だぜ。1隻はカルダールで沈んだがな」

「凄いお船持ってたんだねーさっさと4層いけたんじゃないの?」

「この戦艦はアキちゃん同盟がお金を出し合って作ったんだそうです。後の4隻はご主人様のご本の売り上げらしいですよー」

「へー。へっ? 私の本で戦艦作れるの!?」

「ああ、それで作った。カルダールで勝利できたのはお二人の力と言っても差し支えない」


 なんでも、先の同盟を組んで戦った会戦では、戦艦の戦力差ではあまり良くなかったんだけど、ジダン3層から飛び出た構成員がものすごい数で、それで圧倒したらしい。相手の戦艦の魔導防御を邪魔して、破れた魔導防御の中に死ぬ前提で突っ込んで砲塔を破壊しまくったらしい。撃沈される船も多かったけど、全然士気も落ちなかったそうな。


「アキちゃんが必死でバグを修復しているところも、それを狙ってくるLAW空賊もちゃんとライドして観させていただろ、あれで憤っていた同盟構成員がめちゃくちゃ多かったんだよ」


 カイザフだっけ、あいつも切れていたな。空賊を怒らしたら駄目だってことか。ウォールオブプリーストの地上兵士支援、正義の鉄槌の補給物資輸送も相当効いたらしい。


「それではアキちゃん。ねぎらいの言葉をお願いします」

「ええっ!? えーと。みなさんこの度の戦いではお疲れ様でした。財産を失った方もおられると思います。同盟の力で手を差し伸べ合って復活していきましょう。とにもかくにも、勝利おめでとうございます! 4層あがりたてで、ずっと4層にいた人たちに勝つって凄いことじゃないですか? アキちゃん同盟を怒らせちゃいけないって知らしめましたね! ばんざい!」

「うう、さすがアキちゃん。感涙しかねえ。構成員も泣いて喜ぶぜ」



 アキちゃんって魅了Lv10000位持ってるんじゃないかな? 嫌う人を見たことがない……。

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