第2話 結託した奴らに命を狙われる

「ジンは倒せ、報酬はやらん、ですか? 舐めてますか?」


 白い服をゆったりと着た男がこちらに向き直ってこう言う。


「ジンを倒す権利をやるんだ、それでかまわないだろう?」

「ジンが相手の勢力にいて、どうにもならないってことは知ってますよ。倒した瞬間そっちを攻撃するかもしれませんよ? 私は4層だと中立なので」

「クソガキがよう」


 茶色の服を着ている男性が悪態をつく。多分白がLAWで茶色が空賊だな。


「とりあえずジンを攻略しているときは邪魔をしないでくださいね。もしかしたらLAWと空賊の結託が盗撮されているかもしれませんよ」

「へっ、高レベル逆探知に引っかからねえんだ、あり得ねえよ」


 これは本当に盗撮しているのだが、Lv5は通常でもあるようなので逆探知されそうで危険。だから盗撮はLv10で取ってある。6万ドルエンからの1万ドルエンコースで良かった。ライドではなく盗撮なのでお金が降ってこないのが残念。

 お金がちょっと心許ない。お金はジンに使いたいんだ!


 そんなわけでジンのところへ向かう。アキちゃんが場所を教えてくれるからね。


 ジンは、正体不明の巨大な空間で出来ていた。雲を掴むような、霞がかっているような。空間の上には顔があって、それを取り巻くように風が入り乱れている。


「とりあえず攻撃してみよう。スーパーイーグル!」

「斧の一撃!おりゃぁ!」

「桜花打開!」

「ホーリーレイ!」


 歯ごたえが全くない。


「効いてないねこれ。っ! 反撃が来る!」


 とっさに防御行動を取る4人。そこに殴りつけるような砂が飛んでくる。


「いっってぇ。マジックコートLv6じゃ痛みが治まらない」

「お嬢、空間を攻撃する技はないか!?」

「持ってないです、桜花拳法・気功乱斬なら空間を攻撃していますけど、ここまで大きくては」

「聖攻撃も無意味です、一度引きましょう」


 オーバードライブをしてアキちゃんにパワーエンゲージ、気功乱斬を強くして、ジンがひるんだところで一度撤退。作戦を練る。


「ライドはまだ付けておくね。ふがいない結果になってみんなごめん。何か突破する技があれば」

「気功乱斬でも、あれだけ大きいと倒すのは難しいです」

「空間を攻撃できれば良いのですが」

「そんなスキルねえだろ」

「一応検索してみる」


 フィルター、空間攻撃


【次元攻撃:相手を空間ごと切る。50万ドルエン】


「……というのがありました。買えなくはないけど、確証はない」

「高すぎるぜ」

「ライドの収益はどうなってますか?」

「ルウラさん、あんまりライドで収益とか言わないでね。それを含めて50万ドルエン支払えるってところ」

「あ、すみません」


 うーん、Lv1とって、それで足りるかってのもわからないしなあ。


 簡易コメント欄では投げ銭が飛び交っている。やっちまえ、それしかない、お金は俺らが支払う、など、好意的だ。


「買うか。あと6万貯まったら。みんなのお金、命、私にください」


 6万は数秒で貯まった。


「みんなの力、本当にいつも感謝だよ。やるだけやってみるね!」


 次元攻撃、取得!


「何かが変わった感じはしないね。パッシブなのかな。あ、これLv2以降がない。天買人は必ずLv5まで存在するんだよ。なのにこれはLv2がない」

「次元に攻撃することを許可するってことだろうな。だからレベルがないんだ」


 なるほど、と思いつつジンの元へ。


「他スキル同時使用をみんなに! 全員次元攻撃可能だ! 長期戦になるからオーバードライブは使わないよ!!」


 ああでも、オーバーレンジは使っておこう。オーバーレンジ使用! 私の腕よ距離を伸ばせ!


「やっぱオーバーレンジは消費が軽い。さあ、やりまくるよー!」


 そうしてジンへの集中砲火が始まった。

 飛距離が大幅に伸びたアルダスさんとアキちゃんが足止めをして、私とルウラさんが後ろから攻撃する。


 攻撃は効いた。明らかに削っている感触がある。アルダスさんは明らかに切れている感触があるという。50万ドルエン無駄にならなかったよ!


 ふざけた火力の風塵攻撃は、アルダスさんは耐えたあとミドケア、アキちゃんはマジックコートLv8でしのがせる。


「雪菜さん、ミドケアは私がやります。マナの残りに注意してください」

「ああ、そうだね。お願いする」


 普通の戦闘の2倍以上の時間が経過する。まだジンは倒れない。

 風塵攻撃は後方にもやってきて、ルウラさんの防御と私の防御で容赦なくマナを削っていく。


「もう一度撤退かな……」

「諦めないでご主人様! 相手の核らしき物を発見しました!もう少しでアルダスさんと私で切り込めます!」

「オーバードライブは!?」

「大丈夫、パワーエンゲージはいらないです! マナの回復に使ってください!」


 もうすこし、もうすこし!


「うおぉぉぉ!! オーバードライブ!!」


 爆発的な力を手に入れる。

 でも今回はマナの回復に努める。それでも維持するくらいでいっぱいいっぱいだ。ジンで味わった範囲攻撃、個々で防御できないと支援は本当につらい。


「核が割れたぁ!!」

「やったあ、バグの本体、さがさないと」


 ヘロヘロな状態で報告を聞く私。


 そしてちょっとすると。




 大規模会戦が始まったのである。なんでこんなに人が!? ヨネダおよび関連企業の夏休みだっけ!? ユニバースも合わせたの??


 びっくりしたのは外地の集団は私たちを襲わなかったこと。

 逆に。

 空賊のベリクルオンザスカイとLAWの夢の中へは私を狙うのだ。

 どういうこと??

「疲労困憊な三層のちびを潰しておこうって感じか!?」

「とにかくバグを回収しましょう! 回収すればいつでも雪菜さんに戻せます!」

「バグはこっち! 大きいから時間かかりそう!」

「ルウラ、傭兵の役割が来たみたいだぜ!」

「そうですね!」


 そういって私たちはバグのところへ直行。4層の結託? している人がガシガシ攻撃していたけどスーパーイーグルでバシッと倒す。凄い強い銃だ。


「じゃあ、少し待っていてください。この間私は無防備です」

「任せろ。爆虎化ばくとらか!」

「アキさんの時間くらいは持たせて見せます! ホーリーモード!」


 も、モードチェンジして近寄る4層の敵を屠り始めた。ルウラさんはアキちゃんを中心に防御膜を張って邪魔されないようにしている。


「私も何かしなきゃ」

「大将は結託を暴露しろ。LAWと空賊が領土を狙って結託したなんてことは大騒ぎになる」

「わ、わかった」


 ということで私は盗撮の全てをライドでばらして、ブロードキャストにもばらして行った。


「私は戦わなくて良いのだろうか?」

「雪菜様は情報戦をしているのです」


 簡易コメント欄は大荒れ。ブロードキャストに大物が来ていると言うことで行ってみる。


 ――ブロードキャスト――


 カイザフ・ドエルスキー@3344KK6709L15T:雪菜ってやつの情報は信頼できるのか?

 ナスケ:4層空賊のカイザフじゃねえか

 ヒョルフ:雪菜は嘘を言わねえタイプだぞ

 榊雪菜@6657OL0845KK64V

 :雪菜の本名です。二日間あるのでそれもライドで流します

 カルク:うわまじかこれ

 れんこ:今日のお花は私でどうかしらー?

 ゆきこ:外地を求めるためにLAWと空賊が結託って、それじゃゲームにならないじゃないの! どっちも空賊で良いわよ、もう!

 カイザフ・ドエルスキー@3344KK6709L15T:ふざけたことしやがって、いまけいじばんに宣戦布告を書いた。本物の空賊をみせてやるよぉ!!

 ディシーズ:声デカ


 ――ブロードキャスト――


 なんか凄いことになってる。それほどまでに結託はイケないことみたいだ。警官と泥棒が仲良しこよししたら駄目ってことか。光と闇を混ぜないというロールプレイを本気でやってる文化があるんだね。みんながそう思えばそれは思想になり文化になる。貴重な体験をしてしまった。


 ――チャットルーム――

 にんにん


 ディンゴ

 今日から俺たちは4層に上がるぜ。今まで書類整理で何も見てなかったわ


 雪菜

 4層LAWと空賊の結託で凄いことになってる。私の盗撮映像とブロードキャストのログ見て


 ディンゴ・カザエフ@8790RF5781C22V

 お前には秘密にしておきたかったが今日からアキちゃん派を作るんだ。俺は海賊でも空賊でもLAWでもねえ、中立ですらねえ、アキちゃん派だ。企業はアキちゃん同盟でまとめる。


 雪菜

 それはブロードキャストで流して!今空賊さんが結託に対して宣戦を布告したの。ああ、アルダスさんもうだめか。ルウラさんもキツい


 ディンゴ

 今どういう状況だ?


 雪菜

 アキちゃん派閥なら知ってると思うけど、アキちゃんがバグを修復してるの。その時間を守ろうって傭兵さんが傭兵をしているのよ。4層の連中は私たちを狙ってるの!


 ディンゴ

 回収できたら傭兵をおいてカリアナ~スピリナの間で逃げろ。カリアナは4層メンバーの巣窟なはずだ。戦闘艦は捨てろ


 雪菜

 ルウラさんを捨てるわけには……いや、わかった。こういう戦は海賊だったディンゴが一番知ってるもんね。


 ディンゴ

 よし、原稿ができあがった。ブロードキャストで叫んでくる


 雪菜

 健闘を祈る。


 ――チャットルーム――


 状況はぐちゃぐちゃで、戦闘艦の艦砲射撃は来るわ(マジックキャノンで相殺した)、魔法は飛んで来るわでルウラさんも駄目に。

 私もないマナを使ってアキちゃんを守り、やっと修復が完了。すぐさま背負ってダッシュを使いとん走した。途中で3人乗りドローンがあったので乗り、戦場から離れることに成功。


 自動操縦に任せてブロードキャストのログを見たら、ディンゴと、えーと、カイザフ・ドエルスキーさんの率いる空賊が手を組んで結託同盟を攻撃するって。ディンゴは密かにアキちゃん同盟の戦闘艦と兵士を増やしていたみたい。

 そして正義の鉄槌とウォールオブプリーストがこの二つの空賊の後方支援を担当するってことになってた。


 そして自動操縦でライドも付けていたことが馬鹿で、海賊の簡単な対空砲に当たってドローンは撃沈。海賊は処理できたけどマナが本気で足りない。


「み、みなさん、私にマナ向上をマナ回復速度向上を取らせてください、お願いします……」


 こういうときって本音しか出なくて。でも凄い金額が集まって取り切ることに成功。

 ばったり倒れて回復している間にアキちゃんがバグを私に渡してくれた。


「バグポイント35万……一つの5万6万ドルエン……スキルを取り切れってことかな」


 バグは通信関連が大体バグとれたみたい。


 とにかく今は休みたい。でも少し歩いて海賊から目をそらさないと。

 あるこう。サバイバル生活が始まるかな。ああ、行軍スキルにポイント使いたい。

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