第6話 スーパーイーグル

 急だけど、遠いけどレンズクまで交易しようと思う。

 なぜなら少ない積載量でも十分に利益が出るから。

 ジダンからは定番商品はないけど、レンズクからはプラチナが産出される。交易所で確認した限りだとあっちのプラチナ価格は2万くらい。こっちに移すだけで6万に跳ね上がる。

 希少品なので海賊も多く、リスクは高め。ヘックスがあるもんね。コルベットなら十分対処できるでしょう。

 一応確実に利益が取れる鋼鉄を5個積んで代理輸送で貴金属を積み、レッツゴー。


 途中までは自動操舵モードで十分。のんびりのんびり。コルベットでも3日はかかるからね。遠いんだよ、レンズクって。ヘックスまでは1.5日くらい。だからヘックスは繁栄してるのかもね。賊だから近寄らないってのは、3層でも上位に入ってくると常識ってわけではない。海賊とでもやり合えるから。


 さてその海賊が多発する地域に着いたら自動操舵を解除。操舵、加速、運動性、火器管制の4スキルは1スキル全部とっても350ドルエンとやっすいので取り切ってある。課長昇進のおかげだね。操縦士基本スキルだもんね。付属品改良も全部取って1000ドルエンなので取っておいた。


「大将ばかりやること増えるなあ」

「まあ、好きでやってるし。執筆でくそ忙しいのに無駄に生徒会に入った女だよ、私は」

「ご主人様はお仕事が好きなんですねー」


 賊多発地帯は森の飛行区域下限すれすれなんかを走る。しかし自分で操舵するとめっちゃ速いな。

 無事に抜けてレンズクへ。久しぶりに帰ってきたなあ。とりあえず鋼鉄5個と貴金属を卸してお金にする。

 まずはどざぁるちゃんのところ行こうっと。どざぁるちゃーん。

「あにゃ? 帰ってきたのかにゃ?」

「交易で寄ったの。どざぁるちゃんは元気?」

「私は元気に洋服作ってるにゃ。雪菜の方はいろいろあったようだにゃあ」


 少し歓談してその場を離れる。どざぁるちゃんはかわいくて好き。

 次はわんわんお! だな


「わんわんお!」


「……誰かと思えばお前か。今日はどうした」

「顔出しに。元気だった?」

「ああ、お前から巻き上げてる収益で傭兵の環境はずっと良くなった。依然雇われないがな」

「おお、有効に使われているなら何より!」


 少ししゃべってその場をあとに。

 つぎは本命のグゥレイトォ! だ


「こんちゃらちゃらすー」

「グゥレイトォ! 雪菜じゃないか! 元気だったか?」

「うん、おかげさまで。えっと、銃のことについてなんだけど」


 私は用件を話す。


「なるほど、5ミリミニマシンガンと9ミリアサルトライフルをどうにか良いバランスにしたいわけだな」

「うん。5ミリミニマシンガンは悪くはないんだけど良くもないというか。9ミリアサルトライフルも物は良いんですけど、私の身長に全然合ってない感じで」


 情けない感じだけど事実なので。グゥレイトォ! なら解決してくれるかもしれない。


「なるほど、それなら大型拳銃の12ミリスーパーイーグルの2丁持ちだな。スーパーイーグルは特別仕様の12ミリスペシャル弾を使う。射程も通常の人で150メートルを超える超大物だぜヒャッホウ! スコープ使えば狙撃だって可能だ!」


 イーグルシリーズだっけ、それの特別仕様版かな。反動凄そうだな。


「ふむー。12ミリスペシャル弾を使う拳銃ってなんか凄いですね、反動も凄そう」

「完全魔導銃だから出来る。反動はスーパーイーグル自体に反動を押さえ込む魔導回路が仕組まれているんだ。マガジンがないからグリップは自分の手に合わせた形になる。一発撃つだけでも莫大なマナが必要だが、それを蓄えるためのマナタンクは銃後部の左右に膨らむように付く。ちょっと変な格好をしているな。これをミスリル白銀で作ればお前さんの馬鹿みたいな魔力を十分に引き出せる逸品となるだろうさ!」


 馬鹿魔力かー確かにそうだよねえ。魔力をしっかりと使うという点なら2丁持ちも頷ける。

 完全魔導銃は弾薬を自分のマナで形成し、自分の魔力で押し出すからね。口径が12ミリのスペシャル弾なら貫けない物はなさそうだ。スペシャル弾は拳銃弾とライフル弾を合わせたような弾薬だったよね。専用弾薬。


「欲しいんですけど、お高いんでしょう?」

「そうでもない、ミスリル白銀は扱いが非常に面倒だからあまり使われていない。全部自作するなら1丁4万ドルエンくらいでできるぜヒャッホウ!」


 2丁で8万ドルエンか、あるな。ガンスミスのスキル取って、上位ガンスミスさらに上級ガンスミスまでスキルを取り切れば十分作成できそうだ。幸いそんなに高いものじゃない。不遇職で良かった! 魔導回路は誰かに作って貰おう。


 よし、まずは交易だ! プラチナを持ってジダンへ行き、何らかの品物を持ってレンズクへ行く。これを数回繰り返すだけでウッハウハ。数回往復すればアタリを付けた海賊が狙うようになるけど、付属品改良Lv5で連装ブースターに点火したコルベットに追いつける船はそうそういない。いたとしてもドローンくらい。通常の艦砲射撃で十分落とせる。


「プラチナがなくなるまでやって80万ほど稼いだぞっと。上級スミスLv5まで10万、利益分だけでも残り70万ある。うしししし」


 とか思っていたら。


【ワールドアナウンス。榊雪菜様が傭兵女王の称号を獲得しました】


 と響いてきた。なんじゃそりゃ? わんわんおー?


「称号獲得おめでとさん、これ以降は天引き率が半分で済むぜ。へっ、久しぶりに聴いたな」


 な、ん、だ、っ、て。

 倍雇えるってことじゃねえか!

 まあまずはスーパーイーグルだ。


 ミスリル白銀を露店バザーで購入し、グゥレイトォ! の工房にある、高熱が出せる溶鉱炉で溶かす。そのあと様々な段階を経て形になり、魔導回路を書いて貰う部分に。ここはやはりこの人でしょ!


「ふにゃー、じしんないにゃあ。魔導回路は書けるけど、ミスリル白銀は扱いにくいにゃあ」

「どざぁるちゃんなら出来るよ。自信持って」

「うにゃー、やってみるにゃ」


 自信ないとか言っていたけど、見事な魔導回路を書くことに成功。やっぱレンズク民よなー。


「ありがとうどざぁるちゃん、大好きー(ギュー」

「ふにゃー、よかったにゃ。もう書きたくないにゃあ」

「壊れたらまたくるね!」

「ふにゃにゃぁ」




「これでスーパーイーグルも完成ですね!」

「ノンノンノン、最後に重要なことがあるぜ、刻印だ。自分の名前を刻むのさ」


 おお、そういえばそういうのがある。丁寧に刻印を彫って完成!


「今度こそ完成ですね、回り回って拳銃に帰ってきました」

「拳銃とは思えない拳銃だけどなヒャッホウ!」

「これを超える銃ってあるんですか」

「めちゃくちゃあるぜ! 身長が足りないからこれになった感じだぜ! ビームランチャーやグレネードランチャー、対艦ミサイルなど何でもあるんだぜ!」


 そっかーしんちょーかー。




 そういや謎の店はどうしているんだろう。深夜にアキちゃんと一緒に出向く。

 あった。今はLv45らしい。バックパックとかホルスターにポーション入れ。アキちゃんとアルダスさんとルウラさん用の各マジックバッグなど買い漁っておいた。


 武器も道具も良いのが手に入った。

 次の目的地はやはり……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る