第2話 お前の再ログイン地点とアキちゃんを守り抜こう。

「植林のお手伝い、ですか」


 私に接触してきたOrderの代表オットー・ファネルさんが合いたいと言ってきたのでスピリナで落ち合う。白い服装と、目より下が隠せるように垂れた布をかぶってる? そんな出で立ちだ。

 なにかLAWに引っかかることしたっけそういや盗賊襲って犯罪因子あるよなはわわわわとなっていたら、冒頭の台詞。


「ええ、今アマール全域で伐採の方が進んでおり植林が間に合っておりません。大変な人気があるあなたが協力してくれればと思いまして」

「ううーん、今ちょうどカルダール方面に行こうと思っていたところで」

「あそこは紛争していますね。現実世界で2ヶ月くらいは争うのではないでしょうか」

「7日で1年なんだから、8週間で、ざっと8年もですか……」

「全員が常にログインできているわけではありませんからね。会戦するのも一苦労ですよ」


 いやまずいな。2ヶ月ってぇと夏休みが終わる。今までの流れだとカルダールの4大精霊を倒さないとしっかりとした帰還は出来そうにない。でも2ヶ月も接近できないのはまずい。超長期ダイブが可能な設備でダイブしているけど、2ヶ月ダイブしたらさすがに精神錯乱を起こすのではなかろうか。意識をサルベージしている最中だけど、サルベージで帰ったら復帰は極めて難しいのでは。


 紛争を避けつつ4大精霊を探すことになるのか。


「そこで我々に協力して頂ければ、カルダールへの道を開けようかと思ってまして」

「……出来るんですか、そんなこと」

「ジダンからは行きません。さすがに厳しく封鎖されてます。でもカリアナ~スピリアを通るLAWを襲うやつはほぼいませんよ。いかがでしょうか?」


 LOW地帯を通るってやつか。うーん、自分たちで走っても良い気もする。でも道がわからんか。


「お手伝いをする期間によります。高速ドローンで走っちゃった方が早いかもしれませんし」

「2週間ほどお手伝いして頂ければ。取得して頂くスキルもありますが、経費はこちらが持ちます」

「それならば」


 ということで了承した。



「肥沃な土地、植林、範囲化、ていっ」


 広大な範囲に耕された肥沃な土が出現し、木の苗が植えられる。


「範囲化、すくすく育つ、えいっ」


 木々がすくすくっと育ち始める。



 なんて平和なのだろう。



 使い勝手が良いので買い取った4人乗りドローンの上からぼんやりと眺める。



 なんて平和なのだろう。



 ドローンや車、船の燃料は精製魔石だ。ゴブリンでもいいし、火熊でもいい。ただ、強い魔物の魔石の方が航続距離が伸びる傾向にある。ドローンはそれを気にしなくて良いほどの航続距離だけど。



「ご主人様、最近心が急ぎすぎです」

「んまーねぇ。心配事が増えたし」

「ご主人様の心配なんてなくなっちゃえ! ぽーい」


 私の胸から物を掴むようにして、空中へ放つ動作をするアキちゃん。かわいいなぁ、もう。


 今サルベージ出来そうという連絡が来ている。データは壊さない方法でお願いと頼んであるが、どうだろうな。


 まあ、7月後半くらいに一度サルベージして貰って、夏休みが始まる8月に勝負に出るくらいが良いのかもね。全部うまくいけばだけどさ。

 単位は足りてるけど7月前半から急に顔を出さなくなったのはまずい感じだよね。そこからさらに一ヶ月も二ヶ月も顔を出さないのは会社の代表としても高校生としてもまずいし。

 ……帰るだけならただただサルベージ待てば良いんだけどね。こっちに大切な物を結構作っちゃったからね。


 さってっと。植林観察を続けますか。

 何もスキル放ってぼんやりするためだけに、ふわふわしているわけではない。


「ヒット。245度に3名。斧を持って収穫している」

「頑張ってください!」

「音声拡大。あーあー、そこの3名、ここはOrderの植林地である。直ちに窃盗行為をやめなさい」


 3名、巨漢と標準と女性、逃げるどころか戦闘開始行為をしている。


「あーあー、やめなさい。私は請け負っているから先制攻撃が出来るぞ。警告だ」


 ぷかぷかとドローンが浮かぶ。彼我の距離は300m前後。この距離じゃあ、この4人乗りドローンの場所わからないだろうなあ。座席としては窮屈だけど、その分このドローン小さいからねえ。前座席だけ大きくする改造しようかな。アルダスさんの体だとひどく窮屈だもんね。


 ああ、あくとーさんのことをやらないと。


「それでは先制攻撃をする。スコープよし。狙う、複数ターゲット可能化、トリプルショット、トリプルアタック、GO。あれ、ジャムった弾詰まりを起こしたうーんメンテしにくいのがつらいなあ9ミリアサルトライフル。もう一度……ショット!」



 スピリナのOrder倉庫で3倍スコープ見つけて取り付けてあるのでスコープ倍率強化Lv5も相まってめっちゃ見える。

 300メートルってアサルトライフルの射程としては長め、でも射程距離増加もあるし、狙う付ければちゃんと届く。口径も9ミリあるしね。基本的にでかい方が長く届く。


 アサルトライフルやマシンガンのトリプルって大体9発程度出るんだけど、それが2回出て18発。それが3個グループになって飛んでいく。

 相手側に全然見つからなかったので、未発見時攻撃倍率増加Lv5がもろに発動。250パーセント増しのヘッドショットを食らって全員オダブツだぁーッ。

 未発見時攻撃倍率増加って短剣を扱うローグ用なので倍率がえっぐいよね。それを銃で使わせて頂いてます、ありがとうございます。


〈こちら雪菜、X66.3422:Y12.5433 付近に盗賊を発見、処分した。遺体の処理願う〉

〈こちら植林地警務隊。了解した〉


 Orderの武具や道具は性能良いなあと思いつつぷかぷかするのであった。




 ――ここから、チャットルーム――

 456AEdcFVgうぇ呵々FF


 雪菜

 というわけで私がサルベージされる日が決まったのよ。こっちの3日後くらい。かなり急でしょ。


 アキちゃん派閥

 おう、そうか。よかったな。ここの生活は楽しかったか?


 雪菜

 簡単に考えないでよ! 私とバグを取るために召喚されたアキちゃんをどうするのよ!!


 アキちゃん派閥

 い、一緒にログアウトするんじゃないのか? 名目上はペットなんだろ?


 雪菜

 名目上はね! 実際は独立したきつねの少女よ! 現地民の! 誰かお世話しないといけないの! どう考えても一緒にログアウトはしないわ、傭兵もそうでしょ。


 アキちゃん派閥

 じゃあ誰かがお世話しないと! 俺か!?


 雪菜

 お前だ。


 アキちゃん派閥

 え


 雪菜

 あなたよ。お願いできるかしら?


 アキちゃん派閥

 お、俺で良いのか? 他にだれかいねえか?


 雪菜

 いないのよ。私とつるんでるって言ったらディンゴ・カザエフが率いるドエクサの交易旅団、アキちゃん派閥が一番でしょ。ここに今、エリーさんもいないのよ? アキちゃんを守って、お願い。


 ディンゴ・カザエフ@8790RF5781C22V

 わかった引き受ける。お前の再ログイン地点とアキちゃんを守り抜こう。


 雪菜@4444TG9999IC11A

 ありがとう、必ず帰ってくる


 ――ここまで、チャットルーム――


 植林事業はちょっと早めの切り上げになっちゃったけど十分なお礼をしてくれた。

 GRFー200という船と木材を20枚ほど。アマール産木材は一個1万で売れるから、20万位じゃん!

 GRFは正式な戦闘艦。コルベット一番小さいクラスだけどね。4人乗りドローンは一緒に乗せられるから大丈夫。現実の駆逐艦に乗せるヘリみたいなもんだからね。木材20枚はこれに入るパンパンサイズなのだ。交易船じゃないからあんまり入らない。

 あっちも顔合わせとして仕組んだ感じなんだろうね。顔合わせできているから報酬も十分に、と。

 コルベットクラスは船の中じゃかなり速いので3日後にジダン到着も用意でしょう。


 あれこれ用意したらさっさとジダンへ戻ろう。

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