第3話 次の一手。難しい、難しいよう 蟹蜘蛛はうまかった


「こりゃあ。うめえ」

「酒場で食べた味と違うね」

「鮮度と処理方法が全く違うのでしょう」

「ここにもちこんでせいかいでしたね」


 そう、ここは料亭「河南」という高級なお店。ARチップも交換を要求されて、ミニドレスのアキちゃん、強化訓練から呼び戻した優雅なドレスのルウラさん、ハイソなワンピースを着た私。そして超大型スーツを身に纏ったアルダスさん、と。なんかみんな、むずむずするくらい変な感じがする衣装で着たのだ。


 まあ、その結果もあり(本当にそうか?)4匹の引き取りと、かに割烹をご用意していただくことになった。

 決まったらすぐに料理長から。


「市場がひらいているウチに残りの蜘蛛を売っちゃいな! 本当鮮度が大事だからさ!」


 とご助言頂き、私だけARチップを切り替えて市場へダッシュ。早く到着したおかげで市場は開いていたよ。でも競りは終わってるから明日朝一番の競りに掛けてくれるって。冒険者が飛び込みで持ってくることがざらにあるだろうし、市場の人も手慣れてたな。


「うへー、傷無しかい。切断も見事。相当の高値だろうなあ。3万4万は覚悟しておきなよ(ニカァ)」

「うわあ、楽しみです。明日この電子データを持ってくればいいんですね」



「って感じ。んふふ、楽しみだね。あ、私ライドの編集するから話半分で聞くねー」

「ほー、ライドってのは編集が出来るのか。蜘蛛頭をソースにしたパスタ、絶品だな」

「これを切って、これも切る。エフェクト掛けてー」


「編集している間は私たちはお酒でしのぎましょうか。冷酒「奪還」を二つください。あと、普通のおつまみを」


 さっと出てくる奪還とたこの唐揚げそして鶏の唐揚げ。奪還は濃いのに合うんだろうねえ。


「こんなもんか。ん、なにをつくっていたんですかーだって? アキちゃん、君の真の派閥を作りそうな動画を作成していたんだよククク」


 中身は今回における天真爛漫な時のアキちゃんを中心にまとめ上げたもの。最後はアルダスさんに桜花打開をするところで締められている。魔物はぼやかした。


 ――ここから、けいじばん――

 雪菜からのプレゼント

 加工と2度複製不可にしてあるからねー。ここにある電子データを一度どこかに移すのはオッケー。それ以降のことをすると消えちゃうから。

 映像添付


 5

 なん、なん、だ。この天使は


 7

 これが、真のアキちゃん、なのか


 8

 経典だ、これは経典だ。このスレッドが消える前までに可能な限り集めて分散しつつ保管するぞ。こんなアキ様初めて見た

 ――けいじばんおわり――


 少し経って、よい感じで宿屋でくつろいでるころ


 ――ここから、けいじばん――

 神聖アキちゃん同盟


 同盟長

 俺たちの使命は何だ!


 5

 アキちゃんを幸せにすることです!


 同盟長

 では情報が必要だ、アキちゃんのな!


 8

 しかし、アキちゃんは雪菜様とべったりでして。調べるのはいささか無理です!


 10

 アキちゃんも強いしな。なんか勢いだけで作ったよなこれ。ぬけよっかなー


 アキちゃん派閥

 ぬるい、ぬるいんだよ同盟長。そういうときはすでに知っている人から情報を集めて形にしてみるんだよ


 13

 兄貴!


 14

 兄貴だ!


 アキちゃん派閥

 俺が知っているアキちゃんの情報はよう、雪菜さんが最初に出会った現地人の人で、まだ雪菜さんがバグまみれでどうしようもなかったときに頑張ろうって応援してくれた子なんだ。

 そのタイミングで何らかの契約をしたそうだ。バグ娘の状況を顧みずな。どっこい契約はバグったんだが、うまい感じにバグってくれて、今は名目上は、雪菜さんのペットという扱いだとさ


 46

 ペットじゃ成長しねえだろ!?


 アキちゃん派閥

 名目上のペットって言っただろうが! どういう契約なのかはわからねえんだよ!

 二人だけの秘密なんだ!


 65

 雪菜さんと秘密の関係を持つアキちゃん。悪くねえどころかぁぁぁ。いい!! 良すぎるぜ!


 アキちゃん派閥

 俺はもう行く。情報収集は直接ではなく間接で行えよ。またな。これで7個目のスレッドだ。8個目の布教に出る


 ――ここまで、けいじばん――


 急いで私が作ったスレッドを処分。やべー奴らを作ってしまった。

 まあでも、アキちゃん派閥はアキちゃんに関しては本物だから、うまくまとめるだろう。アキちゃんを守る純粋な組織にしてくれたまえ。


 次の日。市場に行き、競りの結果を聞く。


「凄い盛況だったぞ! 三つ出たんだがどれも万超え! 1万2千と1万3千600、1万が1点だな!!」

「やったー!ありがとうございます!」

 実際に手にした金額は2万8千ドルエン。金額が大きくなると目減りが凄いや。


 市場から帰ってきてから云々とうなる。


「どうしたのですか、ごしゅんさま」

「スキル取得について考えてるんだよ、限られたお金の中でやりくりしなければいけない」

「アキちゃーん。ああここにいらっしゃいましたか。ご主人様が一番ですよね」

「るうらさーんずのうをごしゅじんさまにかしてくださーい」


 ルウラはクスッと笑った後。


「私でよければ何なりと!」

「まずねー、ドリアードは火に弱いのは明確だから、みんなに火を付与したいんだよ。「属性付与」ってのがあるので、それをみんなにばらまくためには複数ターゲットのLv3まで取らないといけないわけ。複数ターゲットがかなり高くて、ここ8万くらい飛ぶ」

「あらあら、厳しい出費ですね」


 私は一息置いて。


「で、私の強化としてずっと後回しにしていた他スキル同時使用ってスキルがあるの。トリプルショットのトリプルアタックのマジックキャノンとかね。こういうのオーバードライブ使用時でしか使えないじゃない。ドリアードは木で出来ていてタフだろうから長期戦になる。安易にオーバードライブするのためらっていてね。これが3500ドルエンから始まるから総額2万ドルエン以上使う感じだと思う。レア度的にはもっと行くかも。総額で10万ドルエンも12万ドルエンもかかることになる。料亭から頂いた代金を含めても、お金足らーん」


 しくしく泣く私。ドリアードたおせーん。


 そこに通りがかるアルダスさん。


「どうした大将らしくねえ顔してんな」

「いや、これこれこうで、強化資金が足りないんですよー」

「は? ならジダンアマール間で交易して来いよ」




 あ。



 その手があった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る