第10話戦後処理と仲間の復帰
サラマンダーのバグを取り除いたことによって出入り口は復活したし、私はパワーアップした。
ステータスがどれも5上昇、システムのバグが少し取り除かれ、システムの動きが改善した。
――まだヘルプさんは動かないけど。動けばログアウトできるんだけどね。
……うん、行くか。傭兵の館に。
傭兵の館に入る。もちろん受付には誰もいない。チリン、と呼び鈴を鳴らす。
わんわんおが奥から出てきた。
「全員死んだみたいだな。今奴らは復活している最中だ、と言いたいがバグで復活しねえ」
え、それって死んだ……。
「感づくのはまだ早い。すげえ遅いだけで異常に時間がかかってるってわけだ。死んではいねえ」
「すいません、よかった。ジャイアントシルクスパイダーがいる程度のインスタンスダンジョンにサラマンダーが出て、それで――」
「全て言わなくていい。バグったサラマンダーに襲われたそうだな。ライドしたやつによる記録はもう都市中に広まっている。ま、傭兵のことは眼中になさそうだったが」
私は唇をかみしめる。バグったサラマンダーは絶対私のバグのせいだ。
なぜなら、
バグったサラマンダーなんて出現した瞬間に消え去るだろう。
そうではない、ということは私のバグでサラマンダーが消えなかったって事だ。
事実、サラマンダーのバグ修復データで私のバグも修復できた。
「下を向くな、前を向け」
わんわんおが私に声を掛ける。
「は、はい」
思わず背筋を伸ばしてはいと答える。
「ミリルも田川も、お前を助けるためにサラマンダーと対峙し、お前を助けるために死んでいったんだ。それが傭兵という物なんだ。現地人でも来訪人でも、傭兵をやっているなら変わらねえ」
わんわんおは一呼吸おいてさらに続ける。
「あいつらの死でお前の命がある! それでいい、それだけで十分なんだ」
わんわんおの熱い想いが伝わってくる。
「わかり……ました」
「何も、今すぐ全てを受け入れろというわけではない。逃げずにゆっくりと消化して飲み込んでくれればそれでいいんだ」
わんわんおはそう話す。
「はい、ありがとうございます」
「傭兵はイレギュラーな死と言うことで処理してある。無駄に死なせたということにはならない。また雇用してこき使え、ワハハ!」
……あはは。
礼を言って傭兵の館を出る。
今回傭兵は雇わなかった。アルダスさんとルウラさんの強化が終わったためだ。
「今回の件と投げ銭、相当な料金を大将から取っちまったみていだな」
「その分私たちも強化されましたので、お許しを」
「ううん、強くなって帰ってきてくれて嬉しい!」
このあとは、武器と防具をそろえ直しかな。武器は
しかし、ここで作ることは出来るのだろうか。
そう、世間は私のバグまみれの状態と、あり得ない職業と攻撃の仕方でものすごいことになっていた。
バグが消えて使えるようになったゲーム内電脳掲示板を見ると、私のアンチスレがいくつも立てられ、そのどれもが300や400もの継続スレが立っていた。
チートに見えるよね、そうだよね。
擁護……は少ないけど、解析部隊や運営通報部隊のスレも立っているようで。
解析と通報結果、どちらも進んでくれればやがてアンチも収まる、と思う。
アクセス・オーバードライブのせいか、見せ衣装のチップが燃え尽きていて、今は防具が見えちゃっている状態。
それもかなり壊れてる感じ。
次は『ドザールの洋服店』へいこう。
どざぁるちゃんは私を見ると抱き付いて、すぐに店の奥に連れ込んだ。
「今大変な状況にゃね。以前使用していた見せ衣装ならすぐ出せるからまずはそれを着るとよいにゃ」
「え、お金……」
「そんなのよいにゃ! まずは隠れるんだにゃ!」
そういって見せ衣装チップを私の無理矢理よこすので、装着してみた。
質の良いニットの上と黄色のフレアスカートが出現した。その上にトレンチコートが羽織ってある
「外ではトレンチコートをフードかぶりながら着るのにゃ。マスクをつければそうそうバレないと思うにゃ」
「見せ衣装とはいえ、いいんですかこんな素敵なお洋服を」
「構わないにゃ! それより、蜘蛛糸は全部燃えちゃったかにゃ?」
「即死したミリアの分は燃え尽きましたけど、背負い袋を投げた私と田川さんの分はあります。これくらいです」
そういって残っていた蜘蛛糸を差し出す。
「ふーむ。これだとちょっと量が足りないにゃ。アキちゃんの分しか作れにゃい」
「アキに作ってあげてください。私は……手直しすれば」
「私をなめないで欲しいのにゃ。とりあえず全裸になれにゃ」
え、ええ!?
「……採寸するのにゃ。にゃに考えていたんだにゃ」
というわけで採寸のお時間です。
何から何まで調べ尽くされました。
「えーと、身長は149.7センチメートル、体重は49.8キログラム。冒険者やってるから見た目以上に重いのはしょうがないにゃね、見た目ではわからにゃいかもしれにゃいけど、かなりの筋肉が付いてるにゃ。」
「そそ、そう、ですか」
取り調べを受けている感じがする。
「トップサイズが86.4センチメートル、アンダーバストがざっくりと64.3。お見事すぎるFカップにゃ、よこせにゃ」
「いやいやいや。その計測って必要なんですか?」
「鎧作るのにゃよ、バストサイズ違っていたら地獄にゃ。ただこれで運動するのは相当厳しいから、胸を潰すためにみっちりしたブラをつけるにゃ。今までどんなブラだったのにゃ?」
えっと……。今まで使っていたやつは……。
「小さめのスポーツブラですね。結構息苦しかったです。動きは止まったものの大きさはあまり変化しませんでした」
まあ、おっぱいデカねーちゃんで声かけられていたもんなあ。
私はおっぱいだけじゃないぞ!
「んじゃもう、『魔法のブラ』を作るにゃ。起きているときは締め付けて揺れないようにし、寝ている間は緩くなりつつもナイトブラをつけているかのごとく形を保ち、乳まわりの各種修繕をしてくれるやつにゃ」
そ。
そ。
そ!
そんな素晴らしいブラがあるのかー!!
激しい運動で胸回りの筋肉や
異世界すげー!!
「何考えてるかはしらにゃいけど次にいくにゃ。腰回りが58.8センチメートル、ヒップが85センチメートル。うらやましいくらいキレイなプロポーションにゃ」
腕周り、太ももの太さ、手の長さに股下、足のサイズ。
何から何まで調べ尽くされました……私もうお嫁に行けない、シクシク。
「さてこれで鎧が作れるにゃ。実は蜘蛛糸の在庫はあるのにゃ」
「えっ」
「最初に来たときはお金がなさそうだったから蜘蛛糸調達して安く仕上げてあげようって思っていたのにゃよ。今はライドの収益と投げ銭で懐が暖かそうだにゃあ。事が事だからうらやましいとは思わにゃいけど」
その言葉で私は下を向いてしまう。
ゆっくり消化すればいいと言ったけど、消化すること自体が難しいよ、わんわんお。
このお金だって、異常事態が発生して私が異常行動をおこなったから手に入ったわけで――
「ま、ぼったくるわけじゃにゃいから心配するにゃ。今の防具は廃棄するにゃ。見せ衣装の下に着る普通のつまらない服を用意するからそれ着て何週間かまってろにゃ。じゃあにゃ」
本当に簡素なジーンズとトレーナー、下着を受け取って着替え、見せ衣装を展開して外へ出る。
服装結構おしゃれ。トレンチがかっこいいんだわね。フードをかぶって顔が見えないように動こう。
次はデキアル銃器販売店かな。武器屋さんならああいうときどうすれば良かったのか教えてくれるかもしれない。
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