第8話順調の先には葛藤が待っている

 なんで、なんでこんなことになってしまったのか。

「ミリル、田川……」

 バグは私を痛めつけるための存在なんだろうか。

 今1000人以上が私にライドしている。

 投げ銭がバンバン飛んでくる。

 でも、それよりも――



 ***



 インスタンスダンジョンに入るためには貢ぎ物が必要となる。


 ちょっとした神殿風の建物内に、インスタンスダンジョンに入るために貢ぎ物をセットする台座がある。

 貢ぎ物のセットはミリルさんにおこなってもらった。私初心者なので……。

 ジャイアントシルクスパイダーであれば、ゴブリンの魔石で十分みたい。


「インスタンスダンジョンに入るための貢ぎ物のセットが出来たわ。いつでもいけるわよ」


 若干緊張している。初めてのダンジョン、初めてのモンスター。緊張しないはずがない。

 でも、蜘蛛糸を取ってきていい防具を作るんだ!


「準備OKです! 蜘蛛糸がっぽりいただいて来ましょう!」


 台座のスイッチミリルさんが押す。

 台座前方の空間が歪み、インスタンスダンジョンへ入る入り口となる。


 ミリル、田川、私、の順番に空間に突入する。


 空間を抜けた先は、広い草原だった。でけえ。


「これ……ダンジョンなんですか?」


「インスタンスダンジョンはそう言うものね。どこかの場所を再現したりするのよ」


「草原には昆虫がいるやばいよ。それを捕る蜘蛛もいるってわけやばいよ」


 田川はやばいよしか言わないのかな。


 三人でジャイアントシルクスパイダーを探す。草むらの中や木の近くによくいるって田川が言ってた。


 草むらの中をガサゴソと――


 二人が探す。私はから、そのまま動けなくなる可能性が高いのだ。二人は現地人といえど補正がかかって痛み軽減してるからね。


 うろうろとしていたらそこそこ大きな木の茂みに蜘蛛の巣がもそっと張られている場所を発見。

 明らかに蜘蛛がいる!


「ここは私の出番ね。一度糸を燃やすわ。ファイアショット!」


 ミリルさんの放つ炎の魔法弾がクモの巣に突き刺さり、巣が炎上する!


 火が木の真ん中くらいにまで進むと木の上から何かがゴトッと二つ落ちてきた。


 蜘蛛だ! でけえ! 一番大きいところで60センチメートルはあるんじゃないか!?


「丁度よかった、煙でいぶされて窒息死したみたいだやばいよ」


 ああ、蜘蛛って呼吸器官が進歩していなくてガスに弱いっていうの、異世界でも通用するんだね。やったやった。


 さてさて、火あぶりにしちゃうと蜘蛛糸が劣化しちゃう。

 私のテレキネシスでぴょいっと蜘蛛二匹を自分たちのところへ移動させちゃいます。

 念力ねんりき師の上位職、念動ねんどう士のスキルなだけに便利だなあ。重さも感じないし。


 さて移動してきたジャイアントシルクスパイダー、あーんこわいよーきもいよー。

 そう思いながら解体していきますよ。私のナイフさばき、とくとご覧あれ!

 ナイフと解体・ぎ取りはスキルで補正してるからね、解体と剥ぎ取り自体に時間はかからない。

 ざっくざっくとやって、蜘蛛糸をゲット!

 普通の蜘蛛とは違って糸そのものをため込む袋があるんだねー。

 現実世界ではドロドロの粘液をため込んで、それを射出して糸にするのだよ。

 執筆しているときに生態を調べないときがあったので調べたことがある。


「これは火にやられてダメだけど、外骨格も堅いのに柔軟性があるから売れるわよ、丁寧に殺せたら持って帰りたいところね」


 ミリルさん、物知りである。


「マジックバックとかあれば全部持ち帰るんですけどねえ……。今回は蜘蛛糸優先でお願いします」


「わかってるやばいよ」


 それじゃあ、ということでクモの巣が張ってある木にファイアショットをドンドン撃ち込んでもらい、一方的に殺しまくる。本当一方的。

 たまに1メートルくらいある”マザー”が出てきて戦闘になったりする。


「やばいよスラッシュ!」


 ズシャア!


 マザーの複眼を切り裂く!


「どいて! 三発斉射!」


 バァンバァンバァン!


 さらにマザーの複眼を撃ち潰す!


「目は処理しましたよね、鎌になっている前足を狙ってトリプルアタック!」


 バンバンバン!


 関節部に当たり向かって左の鎌が宙ぶらりんになる!

 九ミリロング、破壊力あるぅ!


「左鎌がやばいよスラッシュ!」


 鎌が切り飛ばされた!


「どたま吹き飛べやあ!!」


 ショットガンの斉射! 頭が吹き飛んでいく!


「蜘蛛は脳みそが大きいから念入りに頭部を破壊しないとやばいよ!」


「わかりました! 桜花打開おうかだっかい!」


 アキちゃんがマザーに接近し、半身の状態から一度体をねじり、裏拳を繰り出すような形で身体からだを開く!


 ドォォォン!


 衝撃波が蜘蛛を襲う! それまでの攻撃で中身が出ていた部分が、衝撃波を受けてズタボロになった!


「……活動が止まりましたね。脚が固まって裏返れば勝ちでしょう。どうですかごしゅじんさまー!」


 真剣になっているときのアキちゃんはちゃんと喋るんだよね。


「おっけーい! よく頑張ったー!」


 こんな感じでマザーも順調に倒し、いい感じに蜘蛛糸が集まったので帰還。



 するはずだったんだけれど……。



 ずしーん。ずしーん。


「なんかデカい足音がするね……このクラスではそんな大きいやつはいないと思うのよ」


 ミリルさんが警戒心をあらわにする。


 ずしーん。ずしーん。


「出入り口になってる空間の歪みの方に向かってない? 本当にやばいよ!」


 田川が危険だと騒ぐ。


「入り口まで駆け抜けましょう!」


 私の声で一斉に入り口まで駆ける私達。


 出入り口まで走ることがで来た私達。そこで見たのは、


「出入り口が消えてる……。そしてあのワニのようなトカゲのような、緑色のデカいモンスターは何ですか……!?」


 そしてミリルさんがそれに答える。


「サラマンダーよ。四大精霊の一つ」

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