第4話今の時代、かわいい装備で戦闘できないゲームはくそ

 防具ってさ、まともなやつを装備しておかないと余裕で即死だからさ、ちゃんとつけてあるのよ。

 だから革の全身防具、そして内側に堅い布を詰めてる。最初の街だからこの程度しか用意出来なかった。

 でもこれかっこわるいんよねー。どうにかならないのか。


 どうにかなります。なるんです。


「ウチの店だとこれくらいしか合うやつはないや。太ももが見える前が短いスカートで半袖という、素肌面積が多い、明るくて元気な茶色の冒険者セット。かといって、来訪人がやっているお店は高いからご予算に合うものはない、絶対ない」


 若いおねえさんがそうおっしゃる。

 ”現地人”のお洋服屋さんに来ているわけよ。


「うんうん、これで大丈夫です! 現地人の人大好きー!」


「あり! じゃあこれを「AR衣装」として登録させちゃうから、まっててね!」


 VRの中にダイブすると何もしなくてもAR拡張現実が使える。実際には存在しないけど目には表示されてるって言うあれだ。

 最近のARは、AR表示された物体を触ったり動かしたりすることが出来るんだよー。


 TSSも同様で、ARが使える。それによって装備の上に違う衣装を乗せることが出来るのだ。

 スキンともARチップとも言われるらしい。



「出来たよ! 首にあるチップスロットに入れて使ってね」


 そういって私に小さなチップを手渡す。


「ありがとうございます。これで勝ったな、がはは」


 30ドルエンを支払い店を出る。早速見せ衣装を展開して華麗な女の子にチェンジ!

 ぽわわわーん、戦闘できる美少女に早変わり!

 兜は表示しない設定が出来るので表示しない。



 準備も済ませたので街の出入り口へ移動する。

 入り口にはアルダスさん、ルウラさん、、アキちゃんがいる。


「わーごしゅじんさまきれいです!」


「ありがとアキちゃん。ルウラさん、乗合バスは後どれくらいで来ますか?」


「はい、1時間後です。遂に外に出るときが来ましたね」


 そう、このときが来たのだ。外に出るときが。


 バスがやってくる。日本の大型バスとさほど変わらない外見をしている。

 変わっているのは内蔵機関が魔導でうごく魔導エンジンだ、ということくらいか。

 左手に内蔵されている電子カードをかざし搭乗する。

 

 大昔のように一枚一枚発行される整理券を取って車掌に見せて~という方式はさすがに今の人には合わなすぎて、世界規模で電子カードによる管理システム――生体内にある旧式の電子マネーみたいな感じ?――を整備した、って冒険者の館で聞いた。

 

 私も整理券~は、大昔を描いた小説くらいでしか登場させたことがないなー。

 電子カードでも古いかなあ。出入り口に「個人認識電子タグ:自動認識支払システム」が備わっているのが普通だわ。首の後ろ(ここはあまり成長しないからね)に電子タグがみんな子供のころから内蔵してあって、タグに自動支払い能力が付いてる。タグ情報で個人情報もわかるから、障害者でも障害者手帳とかを見せる必要がないので若干だけど障害者への見方が穏やかになったらしい。


 バスに揺られてのんびりと進む。あー、自分で走らないって最高だわ……。次の街でもトレーニングはしますけども……。

 途中、いきなりアキちゃんが「あ!」と叫んだ。なんぞー?


「バグを発見しました! とおりすぎましたけど!」


「本当!? すぐ降りよう!」


 次の停車場で降りて、バグがあるといったところへ向かう。


 アキちゃんはバグを見つけて修復する能力を持っているのだ。


 以前一つバグを見つけて修復したことがある。街のすぐ近くだったかな。

 そこにはカマキリデンデンムシが群れていたので、大慌てで冒険者の館に相談し、傭兵ギルドでNPC傭兵を雇って処理してもらった。その傭兵がアルダスさんとルウラさんだ。


「あと少しです、あまり大きくない気がします!」


 アキちゃんが言う。


「よし、荷物を降ろして進むぞ。ルウラ、GPS座標記憶魔法で荷物の場所をマークしておいてくれ」


「はい、わかりました。雪奈様は今回いかが致しますか?」


「私も参加するよ。トレーニングはたくさんしたし武器もある!」


 アキちゃんを先頭に、みんなで歩いて進む。


 なだらかな丘にを少し登ると、魔物の群れが見えた。


「あれです!」


「ありがとうアキちゃん。ジャイアントアントの群れかな。数は……何匹だ? アルダスさん、ルウラさん、どうしますか?」


「だいたい九匹だな。ジャイアントアントはそんなに怖かぁねえが噛みつきと酸を飛ばす攻撃に気をつけろよ」


「前回の通りだと、バグに群がっているときは周りが見えていませんから、わたくしと雪奈様の遠距離で多少数を減らしましょう。昆虫なので頭部を破壊しないと戦闘能力が残ってしまいますね」


 そういうわけでルウラさんがアイスニードルを放つ。

 アイスニードルはちょっぱやすごーく速くでジャイアントアントまで飛んでいき、頭部を吹き飛ばした。


 いやー、ゲームの魔法ってエフェクト見せるためにそんなに飛行速度でないけど、本当(?)の魔法ってめちゃくちゃ速いんだね。


 2匹破壊したところでジャイアントアントの怒りを買ったのか、こちらへ突撃してきた。


「きたー! マガジン交換、魔法弾セット! 種類は『爆発弾』! 拳銃には遠い距離だけど、狙うを使用すれば! ホーミング付与、当たれー!」


 パンパンパン


 かるーい発射音が鳴る。うん、拳銃と銃弾そのもののパワーがあまりないんだ……。安心と信頼のザーダプラス拳銃と六ミリハイパー弾だもんね。護身用には悪くないんだろうけど。魔物相手にゃ非力すぎるよねえ。


 バン! バン! バン!


 炸裂音が鳴り響く! え、すご!

 六ミリハイパーでも当たれば弱い威力ではないのだ、がはは! 腐っても魔法弾だからね!

 三発の銃弾が刺さったジャイアントアントは三回の小爆発によって顔を吹き飛ばされた!

 強い! 私でも戦えるぞ!


 アイスニードルと魔導拳銃によって数を減らされたジャイアントアント。しかし突撃は止まらない!


「ここからは俺の出番だな。オラァ!」


 アルダスさんが自慢のポールアックスを振り回し、ジャイアントアントをなぎ払っていく!

 ポールアックスが当たるごとにジャイアントアントが切り飛ばされる!


 ここで接近戦を避けたジャイアントアント二匹が酸をアルダスさんへ飛ばしてくる。


「酸が――」


桜花衛拳おうかえいけん!」


 わたしが叫ぶ、その刹那にアキちゃんが酸とアルダスさんの前に立って『桜花徒手空拳おうかとしゅくうけん』の技を放つ。


 べちゃ


 酸はアキちゃんが放ったに衝突して止まった。


 そう、アキちゃんは戦えるのだ。しかもかなり強い。

 体力がないのですぐにバテちゃうんだけれども。


「わたしがその2匹たおしまーす!」


「すまねえアキ! そっちは頼んだ! こっちは後二匹だ!」


 そうして前衛が激しく動き始める。こうなると誤射があるので通常の遠距離攻撃は出来ない。


 が。


「ホーミング銃弾を食らえ!」


 パンパンパン


 私はこの状態でも攻撃が出来る! どんどん撃って援護射撃だ!




「これで最後か。よし、全部処理したな」


「さすがに9匹を相手にするのはちょっと怖いねー」


 魔法があっても、多数はやっぱり有利なのだ。

 どんなに凄い武器があっても多数に無勢は絶対、かもしれない。いや、スペインのインカ帝国の例なんかもありますが……。


「ジャイアントアントからも魔石がとれますので死体を解体致しましょう。酸の袋を破壊しないようにして下さいね、ナイフが溶けてしまいます」


「あ、じゃあ私とアキちゃんはバグ修復しちゃいますね、アキちゃーん」


「はーい。バグのところにいきますー」


 そういってそういってバグのところへ向かう。


 バグは空間がバグっていて……なんと言い表せるのだろうか。空間がグニャグニャしていてかつ四角い空間の塊がいくつもうにょうにょ動き回っているのだ。


「バグにかいにゅうしますね。よいしょっ、と――」


 そういうとアキちゃんは手のひらをバグに向けて、そこから白いビームみたいなものを放射する。

 なんだろう、ゲームで見るリペアビームとか、リペアレーザーとか、そんな感じ。


 小さいバグだったので、アキちゃんの修復は五分ほどで完了。

 次は私に手のひらを向ける。

 すると私に向かって、アキちゃんからビームみたいなものが照射される。

 修復された情報を私に送って、私のバグを修復しているらしい。

 前回のバグでは、それによって旧式のシステムが使えるようになり、念じれば一応ひと通りのことが出来るようになった。


「……うん、修復終わり。今回はシステムに物やスキルを以前より少し詳しく説明してもらえるようになったかな」


「それ以外にもこまかい部分ではしゅーふくされてるはずです! もっともっとばぐをなおしていきましょー!」


「そうだね、もっともっとがんばろー! おー!」


 その後、無事にひと通り終わったのでばんざい音頭を踊ったのは言うまでもない。

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