第27話・生息地


 倒したコボルトの周りを遠目で確認してから、他に敵らしき生物が居ない事を確認してから俺が先頭で近づき、コボルトが死んでるかを確認するも、リアの氷に頭部に受けたコボルトが生きてる筈もなく、硬い頭蓋が不自然に凹みコボルトは生命活動を止めていた。


 四匹の生死を確認し、一匹だけを残し他を異空間に閉まってから、残したコボルトの解体を始めては魔石の取り出しを試みる。


 慣れた手作業と、解体スキルの後押しで作業は進み。


 心臓辺から取り出した魔石は、普通の石と大きさと形は変わらなく。色は紫っぽい色が石に内部で渦巻き、黒、赤、紫を混ぜたように色が変わり続け、なんとも言えない不思議な感じがあった。


「それが、魔石なんだ」


「良く分からないよな、綺麗って訳でもないし」


「そう?綺麗じゃない?普通の石とかって、なんも変わらないしさ」


 人と感性が基本ズレている俺は、リアが綺麗と言った魔石に共感を抱けない訳ではないが、基本的には魔石は魔石で、凄みがあると言った感じで強いて言えばカッコ良いとなら思っていた。


「なら他の個体から取れる魔石は違うかもしれないし、頑張って沢山集めてみるか」


「魔法でバンバン蹴散らしていくね!」


 両手を交互に前に突き出す動作をリアが行い、その可愛らしい笑顔だけを見ていれば平和だが、言動と合わて考えると物騒極まっていた。


(リアは怒らすと危険なのかもしれな、気おつけなきゃ)



――

――



 コボルトは果物でも好むのだろうか。


 コボルトを倒した場所から北に数百メートル進むと、辺りにはリンゴ、サクランボ、ブラックベリーが至る所に観られ、変わらず肉生活をしていた俺とリアからすれば嬉しい結果だった。


(ようやくリアに肉以外の食べ物を食べさせてあげられる)


「ディオ!果物が沢山あるよぉお、やったぁあああ」


 リアは屈んでから溜めていた力を解き放ち、両手を上に広げては足も両かかとが太ももに当たりそうなぐらい曲げながら飛んでいた。


(まさかこの喜び方をする人を直で出会えるとは人生、生きてたら良いこともあるもんだ)


「観たことない物は触るなよ」


「うん!速く集めようっ!」


 コボルトが近くに来ないのなら、敵が視界に入るまでは果物を取ろうという事になったので、今は見える範囲で別々に別れ果物を取っているものの、俺は終始リアが変な物を手に取り、触ったり食べないか気が気じゃなかった。


 リアは一旦カバンに詰めて、後で俺がそれを異空間にそのまま放り込む。


 俺はそのまま果物を枝から切り取っては手を離し、その下に異空間を開いておけば勝手に果物が異空間に落ち、重みも感じない楽な作業だ。



――

――



 一時間も果物を回収し続けているとコボルトが、

「ヴァンッ!」

 怒った犬の様な声で遠くから威嚇した事で、俺が弓で仕留めようとしたら、「アイス,,バれぇ、っと」

 となんとも歯切れの悪い発音で魔法名が聞こえ。


 コボルトは胸辺りに巨大な氷の塊を受け、数メートルは軽く氷の塊に押されては後ろに吹き飛び、木に打つかっては更に大きな音を立て倒れた。


 コボルトが木に打つかった衝撃で、その木からリンゴが数個落ちてはゴブリンの頭に落ちて跳ね返り、辺に転がっていた。


 そして魔法を放ったリアを見るとやはり、リアはリンゴをもぐもぐと食べながら魔法を使った様子が見て取れ、片手はコボルトに向いているが、もう片方はちゃんと口元でリンゴを口に運んでいた。


「リア、きみは……いや、なんでもない」


 リアはリンゴをくわえたまま首をかしげていた。


「俺がコボルト回収してくるから、そのまま果物よろしく」


「わぁかったぁ」


(食べるか喋るかどっちかにしてほしいと、これ程思った事が俺の過去にはあっただろうか..いや、無い気がする。今度リアには色々込みで教えなければ)


 俺はコボルトをさっと放り投げ異空間に送る。


 解体は時間がある時にやれば良く、今の俺は他の事に時間を使いたい、リアは果物気に入ってるみたいだし、沢山集めて少しでも喜んでもらいたい。



――

――



 それからさらに二十分程頑張っていたら、見える範囲の実がなっている物は全部取ってしまい。リアからカバン二つパンパンに入った果物達をカバンごと異空間に入れて大半の作業が終了していた。


「だいたい全部取っちゃったね」


「あぁ、これでリアはしばらくは果物が食べれるぞ」


「うん!で、これからどうする?コボコボさがす?」


(リアさんよ、さっきから何かおかしくないですか?あの果物は何か良くない成分でも入っていたのか、明らかにテンションが変だ。まさかアルコールか?異世界なのだから不思議じゃないが、そんな話は父さんからも、料理が得意な母さんからも聞いてない、なんだ…)


「コボルトが居るなら高確率で鉱山があるはずだから、それを見つけたいかな」


「わかった、なら行こっか」


「おう…」


 リアのテンションの高さに疑問を持ちつつも、深くは考えずにコボルト達が来た方向の北側に進路を決め、いつもより木々の間から奥を凝視しながら、鉱山を見逃さまいと歩いていた。


 次第にコボルトとの遭遇率も増し、遭遇する集団のコボルトの個体数も増えて来たように感じ、既に一七匹のコボルトを討伐し終え、今視界の先には六匹のコボルト達が居た。


(明らかに増えて来ているが、巣が近づいていると考えて良いのだろうか、単純に此処が奴らの食料などの調達先だとしたら、また違う方向とかだろうか…)


「ここは私がやるね、ディオは考え事してるみたいだし」


「頼んだ」


 リアは何事もなかった様に、コボルトに向けアイス・バレットを放ち。


 流石に六発も同時に氷の塊を生成すれば、一つひとつの大きさは小さくなるが、それで倒せなくなる事はリアに限っては起こるはずも無く、俺が意識を向けた時には五匹が地面に倒れていた。


(はは、強すぎだろ……ん?五匹?)


「リア、後もう一匹いなかったか?」


「あぁ、それねワザと外したの、仲間がやられてビックリして、急いで走って逃げていったよ。だからあのコボコボ追えばあいつらの巣につけると思うよ♪」


(……なんとも頼もしいぜ、俺が考えている必要はあったのかこれ?)


「おお、なら急いで追った方が良いな」


「うん」


 リアの機転を活かす為に俺とリアは、コボルトが走って行った方向に慌てて後から走り出し、一分程全力で走っていたらようやくコボルトを視界の奥で捉え、速度を落としていた。


「この距離で追おう」


「う,うん」


 隣を走っていたリアの様子を見ると、走っているだけでかなりの体力を消耗している様で息が荒く、走る事に集中していた。


 森に入った頃と比べても今は格段に走れていても、自然回復Lv差が俺とリアでは2も違うのだから持久走になればその差は広がっていた。


(これは、行った先で急に戦闘にならないように注意しないと危ないな、走り終えた後に的確に氷を形成し、それを敵に当てられるか。いや敵が少数と目算がつけば戦わせても良いか)



――

――



 コボルトを見つけてからは速度を落としたまま二十分は走り続け、恐らく五キロは軽く走りながらコボルトの後を追っていた。


 そし森の木が途切れる場所に来たので一旦足を止め、進行方向に目をやると、そこには洞窟の入口らしい穴が空いている岩壁が存在していた。


「見つかったな、リアナイスだ」


「はぁ,はぁ、そうでぇ,しょ。わたしは、優秀な,こ、なぁんだから…ね」


 息が上がり、苦しそうに言葉を並べ会話を行うリアに、異空間から飲料の水を入れてある水袋を取り出し渡す。


「ほら、一旦ゆっくり休むぞ」


「ありがとう」


 水袋を受け取ったリアが近くの木に凭れながら座り、水を飲んでは空を見上げ、荒い呼吸を落ち着かせようとしていた。


「ほんとお疲れ」


「なんで、ディオは、そんなにぃ、平気なのよっ。ズルい!」


「無茶言うなよ、自然回復の差が有るんだし、こっちは持久力においてはピカ一の身体なんだ。リアは魔法の上達が凄まじいんだから、良いじゃないか」


「やだっ」


「なら、もっと走るんだな」


 俺の場合起きていれば勝手に自然回復Lvは上がけど、リアがそのLvを上げたいのなら、意図的に魔力や体力を消耗させ回復を繰り返す他ない。


「うんっ、頑張る」


「今は取り敢えず休んでて、いつ戦闘になるか分かんないし」


(それにしても、これだけ早く見つけられたのは大きいな。これで洞窟じゃなくて鉱山なら、コボルトを狩りながら鉱石がとれるかもしれない。もし鉱石が取れるなら、魔石同様に今のうちに数を確保しておきたいが問題は、洞窟の内部の構造がどうであれ、外にコボルトが確認出来てる時点で、挟み撃ちされるのはほぼ決まっているようなものだ)


「リア、コボルト相手なら同時に何匹と戦える?」


(もし中に入って戦うにしても、大きな空間でもない限りインパクトは下手に使えない。使って崩落が起きようものなら俺とリアは生き埋めだ。弓を使うにしても直線距離が短いのなら、接近され剣を使わざる負えないがそれだと一匹を倒すのにどうしても時間が…)


「たぶん、七とかだと思う。それ以上多いと一回で倒せないと思う」


「十分だよ、頼りにしても良い?」


「任せなさい!このリア様がコボコボを蹴散らすのです!」


(とは言っても、休憩を挟まないとリアの魔力は直ぐに切れ、魔力が尽きれば普通に可愛い少女にグレードアップしてしまう。そうなったら俺が頑張るしかないが、俺は弓と剣でどこまで戦えるのだろうか…)


 リアが回復するのを待ち、俺は考え続けていた。



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