第24話


 明らかに違う現状だった黒い靄が消え。


 俺は慌ててステータスを確認していた。



――ステータス――


『ディオ』Lv7 ポイント「7」


【固有能力】・睡眠耐性Lv10(MAX)

 「おまけ」・ステータス閲覧権限


【能力】

 『身体能力』

 ・体力Lv1  ・スタミナLv2 ・自然回復Lv4

 ・腕力Lv1  ・脚力Lv2


 『魔法』

 ・土属性Lv1 ・無属性Lv3

 ・魔力量Lv2 ・魔力質Lv2

 ・魔力強度Lv1・魔力操作Lv4 

 ・魔力放出Lv2


 『武器』

 ・剣Lv2 ・弓Lv3


 『耐性』

 ・睡眠耐性Lv10(MAX)


 『技能』

  ・解体Lv3


 【スキル】

 ・異空間Lv1 ・鑑定Lv3 

 ・インパクトLv1


「おっ、ちゃんと増えてる」


(けど、このスキルはこんな所で使っても大丈夫なのだろうか。想像とは違うものだった場合、どうなるかなんて全くわからない。でも使ってみないとわからないよなぁ…さぁ、いざ!なるよになれだっ)


「スキルを使ってみるから、少し離れてて」


「え?嫌だよ」


(ん?今なんと?、えっ?)


 俺は一瞬自分の耳がおかしくなったのかと本気で思ったが、リアは俺の斜め後ろから俺の肩を掴んでおり、離れる気はないようだ。


「え~っと、離れてはくれないの?」


「うん!だって危険ならなおさら離れないよ?私の方が魔力強度もあるんだし、死ぬ時は一緒って、さっき決めたの」


「お、おう。わかった…」

(さようでございますか、ならリアを死なせたくはないから頼むぞスキルくん。安全なのであってくれ)


「異空間」


 スキル名を口に出し、目の前には斜めになった黒い正方形の形をした、黒い何かがそこにはあった。


 試しに松明の予備として持って来ていた枝を黒い正方形に向かって、刺してみたり引き抜いてみたりし、抜き出した枝見ても異常はなかった。


(これは安全なのか?後はこの枝を完全に入れてみて、その後に手を突っ込んで一度手から離れた枝を回収出来るかだ)


 枝を黒い中に放り投げ、これまでに無い程にゆっくりと手を入れた。


(…怖い、けどッ……えええいっ!入れてしまえッ)


 そして音も無く手は、黒い正方形に飲み込まれる様に入っていた。


(あれ何もないこれは回収出来ないのか?あの枝はどこに…あれ、)


 確かに何も無かった場所に、いきなり枝が現れ触れていた。


(これはもしかして取りたいものを想像したら手の前に現れるのか?)


 試しにもう一度枝を離し、違う事を考えながら手を動かし周りを探す。だけど枝は離した途端どこかに消え触れず。再度、枝を掴みたいと思うと触れていた。


「どうだったの?」


後ろから袖を軽く引っ張って、リアが小声で話しかけてくる


「メッチャ凄いスキルだぞ、これがあれば、素材とかしまいたい放題だ!」


「本当に!?それってかなり、便利なスキルだよね!?」


「リアのおかげだな、これでバックを持たないで行動できるぞ」


「やったぁ!!」


 リアは大喜びでジャンプしながらはしゃいでいた、素直な子ってなんでこんなにも可愛いのだろうか分からないけど、俺はリアが落ち着くまで静かにその光景を眺めていた。



「さてと、そろそろ帰るか。外が明るい事を願うよ」


「そうだね、暗くなったら大変だもんね」


 夜になってしまえばブッラク・ラビットが出てきてしまう、未だに好んで奴らを狩ろうとした試しも無く、況してやリアが居る今は遭いたくない。


 倒していたスケルトンは復活しておらず、俺とリアは足を止めることなく進め、帰りは三十分ぐらいで洞窟から出ることが出来ていたものの、洞窟の外の森は陽が沈みかけ、辺りが暗くなり始めていた。


「急いで帰るぞ、走れるか?」


「うん、走れる」


 完全に暗くなっていれば洞窟内に引き返す考えだったが、走れば拠点としていた大樹までは間に合う程の時間は見て取れ、走り出した。


 大樹の方に向かう道中で何頭かのレッサー・ウルフや、リーダー・ウルフに遭遇するが瞬時に矢で射殺すか、リアがアイス・バレットで吹き飛ばしては、ウルフを丸ごと異空間に放り込んでいた。


 異空間はウルフを異空間に入れたいと考え使うと、入口の大きさが試しに使った時よりも大きくなり、入れるのに苦労はなかった。


 何度か使っていく内に、この異空間は俺がスキルを使う時に必要としてる大きさの入口が出て、欲しい位置に入口が現れる仕様が判明し、考え方としての使い方の幅が広がった事が嬉しかった。


――

――


 急いで大樹に戻って来た俺とリアは、昨日のように階段を作り、上に登ってはリアが床を魔法で作り、砂を敷いていた。


「さて、ご飯だ」


 異空間からウルフを出したが、やはり異空間内は時間が止まっているのか、血がまったく固まってなく。そんなウルフを解体すれば、やはり血は辺に飛び散ったり流れ出、リアが床を見ては眉をひそめていた。


 肉を切り分け焚き火をおこし、焼く。


 そして肉が焼けてしまえば、昼ご飯も食べていなかった俺は肉にかじりつき、リアもお腹が空いているためか、昨日よりも勢いがあった。


(流石に女性に肉ばっかりはあれだよな、明日は違う食べ物、果物系とか用意してあげたいな、あればだけど…)


 二人とも食べ終わり片付けをするが、昨日よりも残骸の片付けには困らず。


 下に放り投げようものなら、どれ程の魔物が集まるか想像もつかなくとも、これからは一旦異空間に入れては翌日にでも離れた場所で捨てれる。


 眠る場所が不衛生なのは流石の俺も勿論リアも許容できず、地面の汚れた部分の氷と砂は新しく魔法で変えると、リアから話しかけてきた。


「ねぇ、ディオ」


「どうかしたか、リア?」


「私ね。もっと、魔法を上手く使えるようになって強くなりたい」


「十分強いよ?」

(実際、今日だって君の魔法威力には色々と考えさせられたし…)


「でも、今日だって私の壁が強ければ、もっと楽に勝てたじゃん。だから私に魔法を上手く使えるような方法教えてよ!」


「今のままでも、本当に十分強いって、あのスケルトンが強すぎだんだよ」


「だからだよ!もっと強い敵に出会うかもしれないのに、私だけ弱いのはやだっ!」


(母さんが教えた後の今のリアに、俺が教えられる事って、ん~~~ん。あっ、一つだけあるか)


「お願い少しでも約にたちたいの」


「リアは、リアが思ってるよりも約にたってるよ、俺も凄く助かってる。だからそんなに自分を責めないで、でも今教えられそうなのは教えるからさ」

(それに、それが約束だもんな)


「ありがとう。ディオ」


「良いってこと!気にしない気にしない。それじゃ、リアに俺の素晴らしい考え方を授けましょう」


「はいっ先生!」


 ノリの良いリアが座ったまま手を上げ、声を出していた。


「リア一様、夜だから声落として」


「はいっ」


 少し太く低くなった声に変わっていた。


「まず今日の戦闘から分かる事だけど、俺達のは破られてた。単純に敵の手数と一発の威力が強かったから仕方ないのかもしれないけど、魔法をもう少し早く展開する方法と、壁の強度を上げる方法がある」


「魔力強度に関係なく、そんな事出来るの?」


「ああ出来るとも、簡単だ、その魔法の現象に、名前をつけるんだ」


「名前?」


「俺達の壁は、魔力の形を壁状に変え厚みを持たせた物だ。それは魔力の塊で在って複雑な構造も無ければ、頭で塊をイメージしてるに過ぎない」


「でも私の氷はちゃんと作ってるよ?」


「水が固まって氷になるイメージだろ?」


「うん」


「ならリア氷で細い棒を作って、その先端に三角に尖った形の物を作るって考えるより、矢を作るって考えたら矢の方だろ?」


「当たり前じゃん」


「当たり前なら、壁にも名前をつけた方が良い。壁の強度を上げるなら構造を複雑化させなきゃいけないし、それを毎回構造から思い返してたら遅い。仮にオリジナルの魔法が百個あっても、名前無しじゃ覚えづらいし、構造も更にぐちゃぐちゃだ。だから名前は重要なんだ」


「それに名前をつけるとオリジナルでも、ステータス欄にはその技が表示されるから、Lvがつけば、Lvが上がれば恐らく威力も上がる」


(練度で上がるだろうから意味ないかもしれんが、やる気は重要だろ)


「だからまずは名前をつけることだな、リアは」


「う、うん分かった、名前ね。って!あのインパクトって、オリジナルだったの?」


「無属性はLvが上がっても、使える魔法が増えるとか今の所無いからね。自分で考えて作った、それに俺は普通の人より時間はあるからさ」


「ほんとに、ディオって、凄いよね」


「凄くないよ、時間があるからどうにか、なってるだけだよ」


「それが凄いのっ、その分誰よりも努力してるって事じゃない」


 リアにそう言われ、少し下を向いてしまっていた。


「ありがとう、でもリアのおかげなんだよ」


「え、わたし?」


「さぁ、もう寝るぞ!リアは明日起きたら、魔法の名前考えないとな」


「分かった。うん、名前ね」


 星に囲まれた俺達の話は終わり。


 リアだけが、

 眠りについた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る