第21話・洞窟

「かなり奥まで、ありそうだね」


「だな」


 リアの攻撃で壁が崩落し、姿を現した洞窟の入口付近に近づいた俺とリアは、無数に転がる岩の上に立ち最奥に目を向けていたが、外の光が届かない程にその暗闇は広がっていた。


「ねぇ、本当に。……進むの?」


「進んでみよう。リア、怖かったりする?」


「別に怖いとかじゃ、ないけどさっ、メッチャ暗いじゃん?…だから、これじゃ進め…ないよ?」


「あ~、大丈夫だよ」


 近くに落ちてる枝を何本か拾って一本だけを手に持ち、残りをカバンにも詰め。


 手に持っていた枝に、俺が魔法を放って火をつけいた。


「これで、松明の完成だ」


 そう言って俺がリアの方を見ると、光量が確保手に入り、足元の心配が減った筈なのに、リアは喜んでおらず、余り行きたくないようだ。


(リア、ごめん。洞窟には入ってみたんだよ!)


 俺は目の前に広がる洞窟、いやダンジョンに興味を湧き出させ、リアが後から付いて来る形でダンジョンらしき場所に足を踏み入れていた。



――

――



「ごめんな、リア」


「何よ、入った後に謝るなら最初から入らないでよ!まったく…」


 リアはちょっと顔をそむけ怒っていたが、何故かいきなり手を繋いで来た。


「これぐらいは、良いでしょ」


「もちろん」


 リアの手を握り返し洞窟の中を進んで行くと、壁に薄っすらとした青い光が纏っており、徐々に明るさが増していくと、松明が要らない光量にならば火を消し、洞窟の明かりを頼りに進んでいた。


「何で明るいのかな」


「う~ん、動く物に反応して起きる微生物が、壁に張り付いてるとかかな」


「蛍みたいな?」


(蛍か、そういえば見てないな、時期が悪いからか?)


 そんな話しをしながら歩いていた俺とリアの進行方向で何かが動き、慎重にその影を確認するために俺を盾としたリアと近づいて行くと、白い人影が見え始めていた。


 大人ほどの人形に、細い、細過ぎる骨に……衣類はなく…


(スケルトンだ!)


「いやぁあああああああああああ――」


 それを遅れて見たリアが大声で叫び、全力で後方に走り出そうとしたリアを止める為に握っていた手に力をいれ、引き寄せ抱き軽く抱きついていた。


「リア、落ち着いて!大丈夫だから」


 声は投げ掛けているものの俺の視線はスケルトンを捉えており、数秒してようやくリアは落ち着き始めた所で、スケルトンはガタガタと顎を動かしてるだけで動くことはなかった。


(もし今攻撃されてたら、リアを抱えたまま戦闘か、突き離してリアが外まで走ってくれる事を願うしかなかった…)


「リア、落ち着いた?」


「…うん。ありがとぅ」


「良いんだ、入りたくない洞窟に俺が連れてきた、俺の責任だよ」


「でも、ディオどおするの?進むの?」


「リアは進んでも大丈夫なの?」


「大丈夫…よっ!最初はビックリしただけで、今はね。でも…手は繋いでてよ?」


 こんな可愛い子から上目遣いで言われて、手を繋いで発言を断る理由があるだろうか!?否ッあってもそれは無視するべきだ!無理して洞窟に連れて来たんだ、それぐらいは安かろう。


(だけど、一つだけ問題があることに変わりはない。俺の片手が塞がってる、つまり弓を構えられない…)


「リア、その提案はすごく嬉しいんだけど、それじゃあのスケルトン倒せない」


「大丈夫よ!私に任せなさい!」


 先程までのリアとはうって変わってにっこりと微笑み、頼もしいリアが居た。


 手を繋いでいない右手で握り拳を作り、胸にポンっと置いているぐらいだ。


「お、おう、なら任せた」


「任されたわ」


 スケルトンに近づいて行き、そして十メートル程の距離に来たら、止まっているスケルトンに向かってリアが「アイス・バレット!」と言い氷の塊を飛ばし、その氷の塊はいつもよりも一回り大きかった。


 氷の塊が当たったスケルトンは吹き飛ぶかと思っていたら、氷が接触した箇所だけ分解するように骨が消し飛び、肋部分を大きく失ったスケルトンはバランスを崩し倒れていた。


「ほらね!」


 どうだと言わんばかりにリアが微笑み、顎を上げ、何かを誇っていた。


「うん…」

(うん…骨が脆く無かったとしたら、マジでリアの氷はヤバいってのが分かったよ…俺に飛んで来ない事を願っておこう)



――

――



 倒したスケルトンに目を向けても、骨しか無く。


 その骨を手に取り表面が崩れる感触が伝わり、手を動かして一例し。軽く地面に打ちつけると容易くへし折れ、残った骨も強く握れば真ん中辺りから折れてしまった。


(脆いな…)


「ディオ何してるの」


 少し距離を置いたリアが不思議そうに見ていた。


「ちょっと骨の強度をな」


「それで、何か分かったの?」


「自動生成ダンジョンなら簡易レベル、それか単にスケルトンの骨も劣化するなら此処は年季の入った場所」


「何で分かるのよ」


「だって、骨が握って砕けるって何だよ。俺はそんなゴリラになったつもりも無いし、最初っから脆いならダンジョンの仕組みって予想なだけ」


「ん?、意味わかんない」


(正直、自動生成なんて話しをどうしていいか分からないし、そんなのは戻っていくらでも出来る、今は――)


「どっちにしても、油断したら危ない事に変わりは無いから、このままゆっくり進むよ」


「うん、りょうかい」


 首を捻っていたが、変な話に思考を割くぐらいなら、このまま少し怯えてる人が警戒してる方が余っ程安全だ。


(この一本道の洞窟じゃ、逃げ道も一本道なんだから)


「ゆっくり行くぞ」


「うん」


 ゆっくりと、更に速度を落としてから、俺とリアは再び洞窟の中を歩んでいた。

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