第20話・衝撃
地平線の奥から登ってきた太陽が、森の木々の背丈を超えた時点で、俺とリアが眠っている大樹の寝床には朝陽が差し込み、目を手で覆いながらリアは目覚めていた。
「おはよぅ、ディオ、やっぱり眠らなかったの?」
「おはようリア、いや少しは寝てたと思うよ」
起床直前のリアに言葉を濁しながら伝えていた。
「なら、いいんだけど気おつけてね」
「分かってる、心配してくれてありがとう」
目の周りを指で触っていたリアが手を離すと、ニッコリと笑いながら俺を見ていたが、それがともて可愛く。心配してくれたリアの気持ちが嬉しく、俺が笑いそうになるとリアも笑い出し、結局いつものように二人で笑っていた。
――
――
急がずに、ゆっくりと身体を起こし狩りに行く準備を始めていた。
昨日狩った素材は大樹に置いて行く、持っていても仕方ないし、此処なら取られる事の方が少なさそうだからだ。
階段で降り始めるとリアが振り返り、魔法を解除し寝床の床の氷は消え、階段を降りきって地面に着いたら今度は俺が魔法を解除すると階段は消え、恐らく上の砂も消えただろうが、素材は落ちないように大樹の枝に置いてある。
魔法は解除すると意識するまでか消える事はないが、維持したままだと最大魔力量が減少している状態のため、俺はまだしもリアは魔力量のLv1もない為、寝床の氷を維持したままでは、全方位に氷の壁を出現させる魔力量は無い、だから解除して魔力量に余力を残して狩りに向かう。
素材も置いてきたのでカバンの中は空だ。
今日もまた沢山のウルフ狩りである。
「よし!リア、ウルフを沢山狩るぞ」
「おぉぉ!」
声は小さくとも、リアは張り切っているような返事をしてくれていた。
そして俺達は森に入った。
リアは魔法を解除したばかりで魔力量が少なく、無理はさせられない。
最初は俺が黙々と弓で射殺し、途中でリアが何回か攻撃に加わり、アイス・バレットでウルフ達を吹き飛ばしながら、魔力量を考えながら狩って行く。
暫く経てばリアの魔力がある程度戻りリアの攻撃でリーダー・ウルフを倒そうとした戦闘で、アイス・バレットをリアが放つが、リーダー・ウルフがアイス・バレットを弾速に対応し避けた。
慌てて掴んでいた矢を俺が放ち攻撃するが、リーダーウルフは俺とリアに完全に気づいている為、その矢すらも避けられてしまった。
飛び退いたリーダー・ウルフが雄叫びを轟かし、近くに居たレッサー・ウルフが次々に茂みや木々から姿を現し、四頭のレッサー・ウルフが辺りを取り囲んでいた。
元々はアイス・バレットでリーダー・ウルフを攻撃して、居場所が分かっていたレッサー・ウルフに俺が矢を放つ予定だったが、リアの攻撃が外れ急遽狙いを変えた俺の攻撃も外れ、結果的にレッサー・ウルフが一頭も減らないまま、対峙するという最悪の状態になってしまった。
「リア!先にレッサー・ウルフの数を減らすぞ」
「わぁ、わかった!」
リアは外してしまった失敗からか、またはウルフ達に囲まれた緊張感からか、いつもより多い汗を見せ、覚束ない口調で話す顔色は良いとは言えない状態だ。
「リア、大丈夫だから、まずは後ろのレッサー・ウルフを攻撃するぞ俺は右だ、リアは左だ」
「うん」
俺は弓を構え矢を放つ、リーダー・ウルフの動体視力と俊敏性はレッサーなどとは比べ物にもならない為、気取られていれば矢を躱されるも、レッサー・ウルフではおよそ時速一五○キロは出るだろう矢を避けられない、矢が命中したレッサー・ウルフが走り出した勢いで身体を地面に擦りながら倒れる。
そして左のレッサー・ウルフにはアイス・バレットが、水平に並んだ三発が同時に放たれていた。アイス・バレットの速度は魔法では速い部類でも、俺の矢と比べると遅い、だから逃げ道がないようにリアは放っていた。
レッサー・ウルフは横に逃げようと横に飛び、中央の一発は避けたものの避けた先のアイス・バレットは避けれず、飛来する氷の塊と細身の体は衝突し、その勢いで吹き飛ばされていた。
「次ッ」
「うん!」
振り返っていた俺達の後ろ側、先程までは前方だったリーダー・ウルフとその右側の二頭のレッサー・ウルフが襲いかかろうと距離を詰め、地を駆けていた。
それに気づいたリアが、二頭のレッサー・ウルフを氷の壁で足止めをしている。
左のリーダー・ウルフは俺に向かって大きく跳躍し、前足で飛びかかり押さえなが噛みつこうとする歯が鋭く飛び出ていた。
「ヴァ"ア"ア"ッ‼」
俺は左腰に添えてあった剣を咄嗟に抜き両手で構え、真正面からリーダー・ウルフの攻撃を受け止めるが、大人並の体格に上から押されては明らかにジリ貧だった。
「ディオ!!」
リアは心配そうにこちらを見ながら叫んでいたが、リアは目の前でレッサー・ウルフを相手に壁で足止めしているため、リアの意識と魔力量的に加勢することは出来い状況だ。
「クッ、こままじゃ(まずい…)」
横に倒した剣の切先付近に、左腕の前腕を綺麗に重ね合わせ支え直し、手首と自由になった左手の平をリーダー・ウルフに向け、そして夜な夜な徹夜して完成した魔法を放つッ――
「インパクト!」そう叫んだ瞬間、
手の平から透明の丸い小皿が現れ、小皿から微かに離れた場所には、真ん丸く丸みを帯びた十センチ程の透明な球体が浮かび上がり。
その球体が一瞬小さくなったと思った次の瞬間にはリーダー・ウルフの方向に爆風のような風が放たれ、リーダー・ウルフが軽々と吹き飛び、その突風を生み出した反動で俺も後ろに仰け反っていたが、リーダー・ウルフに比べると問題はない。
「わぁああ、ちょっ」
リアが顔を手で覆い、風圧に耐えるように踏ん張っていた。
「よっと、」
姿勢を戻した俺も、目の前を見れば草は吹き飛び、木の枝は無数に折れ、壁の左右から出ようとしていたレッサー・ウルフも体を低くし止まっていた間に、慣れた動作で引いた矢で仕留める。
「終わったよ、リア」
「え?」
リアは自分が相手していたレッサー・ウルフが倒れている事に気がつき、キョトンと棒立ちした状態でレッサー・ウルフと俺を交互に見つめ数秒で我に返り、
「ちょっと!!ディオ、今のは何なの!」と叫ぶのであった。
「今のはまぁ、新しい魔法? 夜中に暇な時に考えていた新魔法さ!うん」
今の魔法は俺が魔法の練習をしてる時に吹き飛ばされた経験を元に、その風圧を一方向に向かうように意図的に爆発させたものだ、自分にくる風圧は手前の小皿で受け流し、自分にはなるべく来ないようにしていても耐えないといけない。
「うん、じゃないでしょッ私も吹き飛ばさる所だったじゃない、あんなのは最初っから教えてよ!」
「はい、ごめんなさい」
リアの気迫に気圧され、俺にも非があるため素早く謝り。色々と話をして、どうにかリアに許してもらった後も、数分間はリアの機嫌を取る時間が存在していた。
そして俺達二人が落ち着いた所で、素材を回収していたその時、
「ねぇ、ディオあれ見て」
「ん?どうしたん?」
リアに言われた方向を見るとそこには山の壁に穴が空いていた、あれは洞窟だ。
「いつからあったんだ?あんな洞窟、来たときは見えなかった」
俺がそう言うと、リアが思い出しかように話し出していた。
「ディオ!あれだよ、あの方向は私が最初にリーダー・ウルフにアイス・バレットを放って避けられてアイス・バレットが当たった場所!」
「ああ、そうか、あの時に塞がってた入口付近の壁が壊されて、洞窟の入り口が顔を出したのか」
(そうだとすると、リアのアイス・バレットは、想定以上に凄いという事になるけどさ、外壁の壁を壊すって一体どんなけ強度が高い氷なんだよ…)
「たぶん、そうだと思うよ、どうする?」
「そりゃ、調べるっしょ!」
素材回収を終えた俺達は、洞窟の入り口に向かって軽快な足取りで歩いていた。
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