第14話
のぼせ上がったリアがカルア母さんに運ばれ、俺の布団に寝かされていた。
実に大人気無い、負けた鬱憤に頑として俺が先に上る事は無かったのだ。
「リア、大丈夫か?」
「わたしはぁ"ぁ"ぁ"――」
リアは目をかっぴらき、口元をぎこちなく動かしていた。
(精神が崩壊したか、ご愁傷さま)
「ほら、冷たいぞ」
カルア母さんが用意した桶には、ひんやりと気持ちいい冷たさの氷水が張っていた。その水をタオルに含ませリアのおでこに置いていた。
「ぅぅうっ……」
冷たいタオルが触れリアが呻いていた。
しかしリアの身体は内部から、カルア母さんの魔法で冷やされ回復しており、現在の体調も全然大丈夫との事だ。
(それでもリアが伏せっているのは、精神的なものなのだ。大人気無かったか…)
そっと置いたタオルから両手を離し手を引こうとすると、唐突に片手が掴まれていた。
「負けてな、ぃ!」
「そうだな、また今度決着つけような」
「ぅん」
意味の無い意地を互いに張り、黙った後に笑っていた。
「それで、リアは」
普通の子供がそうであるなら、少し羨ましいと頭の片隅に浮き出た気がした。声を掛けながら視線を向けると、リアの両目は閉じられ眠っていた。
(子供って、疲れたら寝るのが普通……だもんな)
「おやすみ」
無造作に寝ているリアに毛布を被せ、その寝顔を眺め終わる前に、寝返りを打ったリアの身体から毛布は離れていた。
(くっ、まさか…)
偶然だろうと思い、俺は直ぐに毛布をリアの身体の上に戻し、様子を見ていた。
「ん”んっぅ...」
身体の上に置かれた物に反応したリアの身体は動き、足先に毛布を引っ掻けて解き放っていた。
「はは、まぁ、ね。こども、だもんな…」
リアらしいと言えばそれまでだが、良い意味で期待を裏切らないリアは予想通りだったのかもしれない、俺は独りで微笑んでいた。
(これで寝相良く、可愛い寝顔をされていたら、それはそれで俺が困ったからな。手が掛かる分可愛い妹みたいな感じになれる)
「俺も、寝たかったな」
共に学び一緒に遊んだら同じ時に眠る、そんな当たり前の事を今日みたいに出来たら、俺にとっても本当に分かち合う意味では求めていたのか。
(どうして一度は寝れたんだろうか、固有能力を授かって一週間程でついに精神的な限界が来たか?それならまた一週間後か?)
思考を巡らせど巡らせても何が正しいのか分かる筈は無く、今現在も寝れないという状況を活かし、暗くした部屋の中で考えていた。
(身体に溜まった疲労の限度か、脳の一時保存の限界でショートさせ整理、または俺の睡眠に対する意識レベルの問題か)
「だめだわからん」
いつもの感覚でつい独り言を言った後に、手を動かせば触れる距離にリアが寝ている事を再認識し、気になったものの相変わらず、安らかに寝ていた。
(よく人様の家でこうも寝れるな、五歳でも友達の家や祖父母の家だと、寝付きが浅くて常に睡眠不足だったぞ。それが異性の部屋で二人っきりとか…)
悪戯心に負けた俺は、頬をつついてみたが微動だにせず。
時間が経ちリアの身体の側で丸まっていた毛布を手に取り、再び被せてやると僅か数秒でリアの喉は唸りながら、手で毛布を払い退けていた。
(なんで頬を突かれて無反応なんに、毛布にはそんなに素早い反応なんだよ!普通逆だろ)
流石に体温の変化が激しかった日だけに、俺はどうにか毛布を被せた状態を維持させたいが、無理に手足の下に毛布を滑り込ませて自重で押さえては、寝ているリアが金縛りと感じられては意味が無く、難攻していた。
(しかも回数を重ねて眠りを浅くするのも駄目だ、この任務に残された挑戦回数は後二回、いや一回と考えるのが良いだろう)
謎の思考で被せようか悩んだまま、毛布を下ろす既の位置で左腕を止めていると、寝返りを打ったリアの腕に俺の腕は巻き込まれ、毛布を掴んだままリアの身体の上に乗っていた。
数秒待っても巻き込まれた腕は解放されず、俺の腕が退かされない間は一緒に毛布もそこに在り、リアが毛布を被ったまま落ち着いていた。
右側に寝ているリアに左腕を取られては、魔法の練習すら出来ず、睡魔に襲われ眠る事も出来ない俺は、リアの寝顔を横から眺めていた。
(それにしても、普通に可愛くて困る……)
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