第12話
「うそだろ、寝れたぞ…」
目を覚まし身体を起こした俺は、冷たくなった夜の草原の上に座り、固有能力を得てから一度も眠れていなかった事を思い出し、起きた思考は加速し始めていた。
周囲を見渡すも隣に居たリアの姿はなく、少し離れた場所に庭の壁に凭れかかり、俺を見ていたアギト父さんと目が合っていた。
(俺が外で寝たからずっと居たのか)
「起きたか、おはようディオ。と言ってもまだ晩方だけどな」
何事もなく父さんが俺に話し掛け、立ち上がっていた。
「ごめんなさい。僕が寝てしまったせいで」
リアが居ないという事は、彼女だけ夕方前にでも起こされて、帰って行ったのだろう。そして俺は、動かして起きてしまった場合のリスクを考え、父さんが外で見張りか…
「子供を外で寝かせて、放置出来る訳ないだろ」
「ごめんなさい」
「謝るな。別にお前が望んで、寝れなくなった訳じゃないんだからな。にしても寝てくれて助かったよ」
「えっ、それはどういう…」
「おら、さっさと家に入るぞ、飯だ飯だ」
理由を尋ねるも飯という言葉だけが強調され、歩みを止める事なくアギト父さんが玄関に向かい、俺もその後に続いていた。
「ディオが起きたぞぉお~」
中に居る人に周知する様に父さんが扉を開け、開いたドアから俺が入ると、飛び込んでくる人影が視界の左右に見えていた。
「にぃぃ、にい~」
「おはよぉディオ!」
右から飛びついたユアが腰辺にしがみ付き。
左からはリアが…
(リア!?)
ユアよりも身体の大きな…とういか幼い子供の男女に体格の違いは無く、俺と変わらない背丈の人間が飛びついてきたので、耐えきれなかった俺は倒れ。
ユアを避ける事に精一杯だった俺は、背中を硬い床に打ち付けられていた。
「ぁ”、ぁ”ぁ”……」
(ヤバい永眠コースだ…)
強く背中を強打したことで肺の空気が吐き出され、一時的に呼吸困難に陥った俺は、冷静に笑えない程度には死にかけていた。
「ディオッ!」
「にぃっにぃッ‼いやッ」
「うぉぇッ、ッホ、ゴッ…」
肩に手を置いたリアと違い、盛大に両手を腹に落したユアの攻撃は、追い打ちになったものの、早めに呼吸を取り戻していた。
「ありがとぅ―」
お礼を言うと声は掠れていたものの、身体を起こした事で、再度攻撃という名の救済措置をされる事も無く、二人は落ち着いていた。
「でも、どうしてリアも…?」
「だってっ、カルアさんも、ディオのお父さんも、ディオがもう目覚めるか分かんないとか言うんだもんッ!」
何を言ってるんだと思った俺は、目をパチパチとさせながら両親を見るも、目が合ったと思った途端に逸らされ、アギト父さんは鳴らない口笛を行い、母さんは目を片手で覆うも指の間から見ては、俺と目が合っては閉じていた。
(何なんだよ…でも確かに、寝ない子供が寝れば怖いだろうが、それにリアを巻き込むだろうか。普通は心配でも、他人の固有能力をそこまで覚えてない子供なら帰す筈だ、つまりこれは仕組まれた展開だ)
見れば観る程に、二人が笑い堪えてる気がし始め、困った様に見ていると、
「とういう事で、リアは今日ディオの部屋で寝てくれ」
「分かりました」
「何言ってるんですか!?というか、リアもどうして了承してるの!?」
「何が?だってディオのお父さんがそう言ってるじゃん」
「そうそう、リアちゃん今日は泊まって行きなさい、メリスさんには伝えてあるから」
「ありがとうございます!」
俺が寝てから何がどう動き、どうあればこの短時間でこうなったのだろうか。この時代はスマホアプリも無ければ電話も無い。それなのに、既にリアの両親には連絡済み?んな馬鹿な話しがあるか。
最初っから仕組まれてた、そう考えれば…
俺が今見ても既に互いに二人はニコニコしているが、両親二人が仕組んだものだと考えても、俺が寝てしまったのは偶然の産物だと思う。なんせ固有能力Lv10 は存在事態が稀だ。
「母様、父様、どうして僕は眠れたのでしょうか」
「悪いなディオ、流石の俺もそれは分からねぇ」
神妙な面持ちでアギト父さんが言葉を発し、少し考えれば親が子供状態を考えてない場合の方が少ないんだ、分かっていれば教えてくれていただろう。
「寝れたんだから良かったじゃない。さっ、冷めない内に食べましょうか」
手を合わせ音を出した母さんが皆を食卓に誘導するが、寝ないと過信してる状態で不意に寝てしまう事があるのは危険過ぎる。
「そうだな、リアちゃんは此処に座ってくれ」
「はい」
「ほらディオも」
考えていた俺の動き出しは遅く、見かねたカルア母さんに再度呼ばれ、俺とリアが横並びに座り、向かいにカルア母さんとその隣にユナが居て、俺と母さんの間に違う向きにアギト父さんが座っていた。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
「いたぁあきますっ」
(考えるのは後にしよう)
今すぐに何か起こる訳が無いと考えた俺は、一旦考える事を止め。家族とリアが隣に居るこの時間を大切に、噛み締めながら味わっていた。
「ディオってさ、時々見てるよねっ」
「何が⁉」
そんなリアの余計な一言で、楽しく気楽に過ごせる筈の食卓は、俺にとって地獄へと、変わり始めていた。
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