第8話


 落ち着くに落ち着けない状況を耐え。いつの間にか眠っていたリアが、一時間程でゆっくりと目を覚ました。


 固有能力が有ろうが無かろうが、眠れる筈も無く。隣に居たリアの方を見ていたるがその距離は、手の平が一つ収まるかどうかの近さだ。


「おはよう。リア」

  

 五秒ほど経つと、時間が動き出した様にリアは慌てて飛び起き、上半身を起こしていた。そして前を向いているが、横からでも分かる程に顔は真っ赤であった。


「ぉ、おぉ、おはよぅ。…ディオ」


「大丈夫か?顔真っ赤だぞ」


「だ、大丈夫よ。そ、それで、なんでディオは私を見てた、の?」


「ん?あぁ、手も塞がってて、他にやる事も無かったから。リアの寝顔を見ていた」


 一時間も耐えたんだ、ほんの少しの仕返しだ。子供だから許される発言、一定年齢を超えたらキモいなどと、絶対に引かれる発言であったが、


ボっ―っと何かが爆発したようだ。

 リアは更に顔を真っ赤にして、横に倒れ。


 リアが正常に戻るのに、三十分は時間を要していた。


「まったくディオたらっ」


「俺がどうかしたか?」


「な、なんぃでもない!」


「そうか」


 まだ何処か焦っている事が伝わって来るが、今日はそろそろ戻って、母さんの説得をした方が良いだろうな。


「今日はそろそろ、帰るか」


「もう?」


 仕返しとばかりに言ったが、無邪気さが無い分。時間が経てば経つ程に、こっちが勝手に気まずい。


「そんな顔するなよ。早めに帰って、母様に魔法の話をするからさ」


 リアはしょんぼりと顔を下に向けていたが、魔法という単語を聞いた途端に明るくなり、こちらをみながら、


「わかった!ディオよろしくね」


 と言ってきた。


「おう。なら明日も、とりあえず昼にこの場所で良いか?」


「うん、ここで良いよ。なら私は先に帰るね、バイバイディオ。また明日ね」


 その言葉を残してリアは走り出し、帰って行った


「本当に自由だな」


 いきなり来ては、突然隣で寝始めて、我儘言うだけ帰って行くって、どんなけ自由何だよ、まぁ別に良いけどさ。


 帰ったら母さんに相談だな…





「ただいま、戻りました」


「おかえりディオ!ちゃんと帰って来れたのね。お母さん心配だったのよ⁉」


 扉を開け家の中に入ると、駆け寄って来たカルア母さんが、俺の肩を盛大に揺らしながら心配だったと言うが、それなら心の準備無しに、追い出すなと言いたかった。

 

「はい。ちゃんと帰って来ました。それと早く帰って来たのは、カルア母様に話があって…」


「わたしに?」


「実は今日。フィンダ家の、リアと外で偶然会いました」


「もうそれは友達!!?…あのディオくんに!」


 母さんよ。

 なんか今、物凄く酷い事を言わなかったか?


 まぁいいや…


「それで。カルア母様は、リアに魔法を教えていると、昨日の教会で聞き及んだのですが、リアが僕が手に出していた魔力の塊を見て、私も使いたいと言い出して泣き出したので、母様。リアにも、使える所まで魔法を教えていただけませんか?お願いします」


「そ、そう。魔法をね。あの子も使いたいって、泣き出した?! ちょっとディオくん!」


「は、はいっ」


「あら、あら、ついにディオくんが泣き落とされて彼女に…母さんうれしい」


「ちょっ、母さん友達だって!!」


 母は涙を出す演技をし、顔を傾け涙を拭う仕草をしていたが、何処までが本気なのか分かったもんじゃ無い、それに泣き落とされたっ誤解だ。俺は泣くのを止める為に、この交渉を引き受けたんだ。


「本当に~!?」


「友達です」


「怪しいぃー顔も少し、赤いわよ」


「なっ―」


 そんなつもりは無かったが、母さんに誘発されてしまい、言われて意識し始めた今は、顔が恐らく赤いであろう事は確かだった。


「ディオに魔法を教えるときに言ったけど、魔法は危険なのよ。だから私はリアちゃんには、魔法の話とか見せたりはするけど、まだ使わせてないの」


 確かに、それは俺も良く分かっているつもりだ。


 木を倒せないにしてもあの威力は、間違いなく容易に子供を殺せてしまう。それは同時に使用者の危険にも繋がり、そんな力をいくら仲が良くても、他所の子に教えるには厳しいのだろう。


 それでも、

「魔法を使える友達が、僕は欲しいです。母様、お願いします」


 叶うのなら。

 俺は魔法を使える友達がほしいんだ。

 

「分かったわ。それに、メリスの子なら教えても、大丈夫でしょ」


「本当ですか!?」


「でも!教えた後は、ちゃんと面倒を見て。ディオくんが責任を取りなさいよ?約束できる?」


 えっ、後の面倒も見て。責任も俺?これはちゃんとしないと、いけなくなって…俺のぐうたら日向ぼっこ生活は、終わりか。


「わかりました、僕が面倒を見て、責任も取ります」


「ほ、ほぉ~言うわね。男に二言はね?」


「はい」


「なら、請け負いました。リアちゃんに母さんが魔法を教えてあげます」


「ありがとうございます」


 そうして、無事に?

 魔法を教えてもらえる形で話は終わり。


 何故か母さんが、いつも以上にニヤニヤしていた。


 




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