第1話・転生しちゃった
俺の名前は
最近物騒な事件が増えてるからと、気をつけてはいたが運悪く事件に巻き込まれた俺は、電車で刺され死んだ。そう思っていた。
しかし神様にも会ってないのに俺は、ディオ・オルトラークとう子供の身体に転生しちゃったみたいだ。
転生して数分が経ち、元の持ち主の記憶が俺の中に流れてくる。果たして人格の全てが俺かと問われたら怪しいだろうが、俺の意識がある状態で記憶が蘇る様に出てくる感じからして、元日本人の俺が基礎だと思いたい。
この身体の前の人格には申し訳ないが良かったのかもしれない、仮に逆だった場合年齢五歳の子に二十四歳という、実に四倍以上の記憶が流れ込む事になる、そうなれば元の人格はそれを理解出来ず、精神が壊れる可能性すらあった筈だからな。
それに日本人の俺は、転生や転移に空想上の知識がある為に混乱が少ない。
「ごめんな、返せるのなら返したいが、どうやって返すのかすら分からないんだ」
俺は聞いてすら居ないであろう身体の元の人格に言う様に声を発した。
「本当にごめん…」
そのままベットに座り込み、考え事をしながら謝り続けた。
どれぐらいの時間が流れたか分からないが考えが纏まる。
まずは転生した理由を探そう。
そして元の人格がどうなったのかを知りたい。今更どうにも出来ないかもしれないが理由を知らずに、この身体で一生涯を呑気に過ごすのは違う気がする。
それに、ただ生きててもダメな事を、俺は前世で思い知った。
力が無ければ、理不尽に淘汰される。
それなら理不尽に遭遇しても、抗える力を手に入れるだけだ。
頑張ろう。
俺は改て自分自身に強く言い聞かせ、覚悟を決めた。
冷静になり考えが纏まり現状を把握する為に周りを見渡す。
部屋を見渡しても目に入るのは木材のみだ。
少年の記憶をたどっても家の外の記憶が無く、家の作りや使ってる材料、家具だけで判断したが恐らく文明は中世とかそこらだと思う。
そしてこの世界には魔法があるらしい。
流れてくる記憶からその情報を読み取った瞬間から、俺の気持ちを高ぶり既に魔法の事が思考の大半を占領していた。
記憶を遡れば遡る程、この子両親が魔法で水を出して日常生活で応用していた、俗に言う生活魔法だろう。それが記憶でも今の俺には見れるだけで最高のアニメーションを見ている気分だった。
考えていたら勿論魔法を使いたいと思うが、そう思ってたら関連記憶がふと出て来て新たな知識を認知する。どうやらこの世界には固有能力というのがあり、それは一人一つ授かる特殊な力であり五歳の子供が集められ授けるみたいだ。
この子の固有能力は何だと思って記憶と探ると、この子はまだ授かって無かった、そして授かるのは、今日みたいなのだ。
こんな偶然があるのだろうか、固有能力を授かる日に俺が転生した。恐らく偶然では無いだろうな、これが最初の手掛かりかぁ。
そして固有能力の他にもスキルを一つ授かるみたいで、この世界で親はこれらの2つで将来を考え子供の育成方針を決め、育てるみたいだ。
固有能力には『片手剣+1~3』や『脚力+1~5』など多岐にわたり、『固有能力=大剣+2』と『スキル=腕力upLv1』 なら大剣使いの冒険者や兵士にするため、子供のころから剣を使わせたり少々の筋トレをさせたりと、教育が始まり、自力で能力Lvが大剣Lv3などになれば固有能力の効果が加算され大剣Lv5優秀な剣士の出来上がりであり。
そこまで行けば騎士団なら小隊長クラス、冒険者ならCランクと、まぁ普通に生活するのなら安定した収入で勝ち組のようだ。
めっちゃ楽しみだ。
それは同時に、この子も楽しみだっただろう事が容易に想像出来る。この世界の子供達がどれだけ将来に夢や希望を抱いていたのかは分からないが、俺がこの子の明日を奪った事を忘れてはいけない。
過程で何が有ったかは知らないが結果として俺がこの身体に憑依して思うがままに使ってる事に変わりはないのだから。
「ディオ、そろそろ朝ご飯食べに来なさい。いつまで布団に入ってるのっ」
ギシギシと木のドアが音を鳴らしながら開いた。
開いたドアから姿を見せるのはこの身体の母親のカルア・オルトラーク。
背は160cm程で見た目は大学生ぐらいの年齢に見えるが、実年齢三十一歳であり、長い茶色の髪は腰にまで行き届き、髪留めをしていない髪が背中を隠すように伸びた、綺麗なストレートロングで文句なしの美人だ。
今は白い三角巾とエプロンを付けてて、朝ご飯の準備姿をしていた。
「おはようございます、カルア母様。今向かいますね」
記憶を鮮明に呼び起こし違和感を与えないように挨拶をする。
俺自身が何も分からないまま、事実を話せば向こうが理解してくれるとは思えないので俺はディオ・オルトラークの演技をした、いや既に俺が今日からディオ・オルトラークである自覚で過ごすしか無いだろうが。
「先に行ってるわね」
ドアをゆっくりと閉め戻っていったカルア母様。
俺はどう接して良いのか分からないが、考えても答えは出ず筈もなく、時間が過ぎるのが分かっていた為、余り考えずに直ぐに後を追うように部屋から出てた。
向かった先は家族で食事をするダイニング。
「おはようございます。アギト父様」
「お、おはようディオ、よく眠れたか?」
「はい、沢山眠れました」
「それなら今日は大丈夫だな」
父=アギト・オルトラークは背丈が180cmの大剣を扱う狩人だ、そのため筋肉で半袖がぱっつぱつになってる程ガタイが良い、だけれど顔には怖さがなく優しい感じで短髪の薄いオレンジ色の髪をした父だ。
この二人実年齢詐欺コンテストが有ったら優勝しそう。二人共まだ大学生カップルと言われても違和感が全く無い程に若い。
「おはよぉう、おにぃい、さま」
「ユナおはよう」
小さな可愛らしい声が聞こえ振り向くと、妹のユナが居た。
顔も可愛く、髪は茶色のショートでめっちゃ可愛い。
何よりお兄ちゃんを慕っている。こんな嬉しい事はない!!まだ三歳になりたてで、ぎこちないけど会話が出来るようになってきた為、最近更にかわいいと記憶だったが本当に可愛いし癒やされる。
まさかと思ってたが本当にそうだとはな。
俺は部屋に居たとき髪の毛を一本抜き、色を確認していた。そしたらこのディオ・オルトラークは元々髪の色が黒だった、少し茶色も混ざってない気もしなくも無いが光の影響など誤差に等しい。
『捨て子か生みの親が違う可能性が出てきたな』
分からない事を減らしたいのに、考えれば考える程に増えていくのだった。
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