『あ、葵見て!カモメが飛んでるよ。ほらあそこ。』

『うわーほんとだ!ふたりいるね!』

『ふたり、じゃなくて二羽っていうんだよ。』

『ニワ?お家のおニワ?』

『違うよ。それとは別なの。』




ズキッ ズキッ


頭痛がして頭を抑えながら時計を見る。


「やばい!遅刻だ!」


バタバタと慌てて居間に行くと、母がテレビを見て笑っている。


「真海おはよう。慌ててどうしたの?」


「え?………あっ今日休みじゃーん。焦ったぁ。」


「あー勘違いね。今日土曜だよ。」


「びっくりした。朝から疲れた…。」


「凄い寝癖ついてるよ。鏡見てきな?」


頭を触ると髪があちこちに跳ねている。


「爆発してるね。ちゃんと乾かさなかったからかな。」


「それだね。ちゃんと乾かさないと風邪引くよ。朝ごはん何食べる?」


「パンといつものやつ食べたい!」




鏡の前に立ち自分の寝癖を見る。

どうやったらこんな寝癖がつくのかという程凄い事になっている。

頭全体を濡らしてタオルでゴシゴシと水分を取る。髪に軽くスプレーをしてドライヤーで乾かす。何とか寝癖が直った。


「お、綺麗に直ったね。」


「うん。朝ご飯できた?」


「もう少しで出来るから待ってて。飲み物は好きなの作ってね。」


「オッケー。何にしようかな。」


コーヒー、ココア、レモンティーが目に入る。


「レモンティーにしよう。お母さんは何飲む?」


「お母さんもレモンティーがいいな。」




真海の朝食のおかずは半熟の目玉焼きとベーコン、そしてトマト。このおかずは定番で、主食がご飯かパンかは朝起きて決める。


「今日の目玉焼き、少しかたくなっちゃった。意外と目玉焼きって難しいんだよね。」


「確かに難しいね。明日は私作ろうかな。でも朝起きられないしなぁ。早く起きれたら作る。」


「いつ真海の目玉焼き食べれるかなー明日日曜だし尚更起きれないじゃん。」


「うん。だから期待しないで待っててね。」


「えー真海に作ってもらう気満々なのに。」


「朝苦手なんだもん。そういえば夢で葵出てきたな。久しぶりに葵の夢見た。」


「どんな夢だった?覚えてる?」


「さっきまではっきり覚えてたのにほとんど忘れちゃった。カモメが飛んでてそれを一緒に見たのは覚えてる。」


「葵何か言ってた?」


「会話したけど覚えてないなぁ。」


「そっかぁ。夢ってすぐ忘れるよね。お母さん前はノートに書いてたな。」


「見た夢を書くんだ。面白そう。」


「真海もやってみたら?」


「んーでも毎日見るわけじゃないしなぁ。」


「お母さんは毎日見るよ。すぐ忘れるけどね。」


「そういえば前も言ってたね。葵とかお父さんの夢、最近見た?」


「ここ最近は見てないなぁ。たまーに見るよ。起きたとき、嬉しさと悲しさで複雑なんだけどね。」


「だよね。夢で会えて嬉しいけど、寂しいよね。」


「うん。夢見ながら『これは夢だ。会えて嬉しい!』って分かってる時もある。そして起きると涙流れてたりしてさ。」


「すごいな。超リアルだね。それは経験ないなぁ。」




家族4人が揃うこと。それはもう決して叶うことの無い『夢』。

夢の中で4人揃うことがあったらどんなに嬉しいだろう。夢だとは気付かないまま、夢の世界でずっと生きられたら…

そんなあり得もしない事を想像しながら目玉焼きを頬張った。

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