クジに書かれた番号の席に座る。


(窓際から少し離れちゃった。でも後ろの方だから良かった。)


麻美も大地も、真海の席から離れてしまった。


隣の男子と少し話し、いつもの癖で窓の外を見る。その目線の先には大地と楽しそうに話す女子の姿が見えた。


(あの子、ダイチの事気になるって前に言ってたな。嬉しそう。)


この席に早く慣れなきゃ、という気持ちで午後の授業に挑む。

何故か分からないけどとてつもなく長い時間に感じた。




「真海ーまた離れちゃったね。」


「そうだね。やっぱりこの前の席替えでクジ運使っちゃったかな。」


「真海の前の席、神だったよね。憧れるー。」


「ついに神から見放されちゃった。」


「なぁにうまいこと言ってんのー。私なんて最初から見放されてるよ。」


「あはは。麻美の方こそうまいこと言っちゃって。」


「こうなったら先生にワイロでも渡すしかないかな。」


「よし。今からワイロ攻撃して次の席替えに備えよう。」





「帰ろっか。」


「うん。」


いつもと同じ帰り道。すぐ隣にダイチがいるのに遠く感じてしまう。

それはきっと、授業中にいつも話すことができた『当たり前の事』がもう出来ないからだ。ダイチの隣楽しかったな。


そんな事を心の奥で考えながら、大地と雪道を歩く。




「りんごありがとう。また明日ねー。」


りんごを半分に切った。蜜がたっぷり入ったりんごだった。重苦しい気持ちを誤魔化すように、甘いりんごを夢中で食べた。

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