銀世界
秋から冬に季節が移り変わり、雪がちらつく日が増してきた。
学生や会社員はマフラーや手袋、コートを纏い早歩きで目的地に向かう。
「おはよー!雪少し積もったね。」
「おはよー。マミ鼻赤い。ちゃんと着てきた?」
「うん。カイロも貼ってる。でも足寒い。」
「ズボンで登校出来ればいいのにね。女子は大変だ。」
「だよー。寒くて風邪ひきそう。」
学校までの数分間、今日も大地と歩いていく。
「そうだ、またおばさんからりんご貰ったから帰りうちに寄って。食べるよね?」
「やったー。いつもありがと。おばさんに感謝だ。」
「いっぱい送ってくれるから食べ切れないんだよね。有り難いけどね。」
「うん。超有り難い。」
「そうそう。この前、親父のとこ行ったんだよ。相変わらず部屋散らかってたわ。」
「お父さん元気にしてた?」
「うん。最近趣味見つけたらしい。何だと思う?」
「えー何だろう。ヒントは?」
「広い所、そして座って楽しむ。分かる?」
「んー、カラオケ?座るもんね。」
「ハズレ!正解は…映画だって。」
「へー良いじゃん。一緒に行ってきたら?」
「この前早速行ってきたんだよ。二本続けて観たんだけどお尻痛くなった。」
「連続で?半日じゃん。相当はまってるんだね、お父さん。」
「うん。楽しそうに観てて、何か安心した。帰りにラーメン食べて帰ってきたよ。」
「いいね。趣味見つかって良かったね。」
大地とお父さんの話を聞くのはすごく楽しい。それと同時に『もし私のお父さんが生きてたら…』と想像する自分もいた。
「あ、千葉のお土産は?忘れたでしょー?」
「あ!普通に忘れた。ごめん。」
「今度絶対お願いね。結構楽しみにしてたんだよ。」
「分かった。食べるの好きだもんな、マミ。」
「そう。趣味、食べる事だから。何でも来いだよ。」
「あれ?マミの趣味ってマンガじゃなかった?」
「多趣味なのー!そうだ。前に貸したマンガ、新しいの出たから読む?りんごと物々交換しよ。」
「もちろん読む!ようやく続き読めるー楽しみ!」
「あのマンガ先が読めないよね。だから面白いんだよ。絵も上手で好きだな。」
「俺も。読みやすいよね。」
昼休み、数人の生徒が校庭に集まって少し積もった雪で遊ぶ。
雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり、手が赤く冷たくなっても楽しそうな笑い声はしばらく続いていた。
「冷たーい!ストーブで早く温めよー!」
「真海、去年霜焼け出来てたよね。痛そうだったよ。早く温めよ!」
「今年は絶対霜焼け作りたくない。麻美も気をつけないと出来るよー!」
あと少しで昼休みが終わりそうになっても、ストーブの周りには手を温める生徒で溢れていた。
「はーい、みんな席に着いて。早速だけど、久しぶりの席替えしまーす。クジを引いて、黒板に書かれた番号の席に座って下さい。」
(やだな。ずっとここの席がいいのに。)
真海は悶々とする気持ちを抱きながら、箱の中にそっと手を入れた。
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