キャラメル

映画館に時間通りに着いた。

朝早くだというのにすでに人で溢れている。

人混みをかき分け、麻美と篤人を探す。


「あ、あそこにいたよ。」


指を指した先に麻美と篤人が楽しそうに話していた。


「麻美、篤人君、おはよう!」


「おはよう!すごい人だね。あ、ダイチーうちの彼氏だよ。」


「はじめまして、青山大地です!」


「はじめまして、蔭山篤人です。今日はよろしくー。」


「ごめん。最初に真海とトイレ言ってくるから売店に並んでてくれる?間に合わなかったら買っておいてね。よろしく!」




「映画久しぶりだね。楽しみー!」


「ねー!ダイチ、篤人君に初めて会うから緊張するって言ってたよ。でもダイチならすぐに仲良くなるよね。」


「うん。あの二人は大丈夫だよ。心配要らないよ。」


「だね。今日映画観たらどうする?ご飯食べた後。」


「そうだなぁー。カラオケなんてどう?久しぶりに行かない?」


「いーねー。行こう!」




「お待たせー!あ、もう買ってくれたんだ。ありがとう。」


「ありがとう。何買ったの?」


「二人ずつ食べれるように、セットで買ったからね。」


篤人が塩味、大地がキャラメル味。飲み物とポップコーンのセットだ。


「マミ、キャラメル味好きでしょ?買っておいたよ。」


「ありがとう。やったー。」


「あっちでチケット発券してくるね。ちょっと待ってて。」


麻美が発券機に走っていく。


「あとでプリクラ取らない?」


篤人が向こうにあるプリクラ機を指差す。


「いいよ。皆で取ろう。最近取ってないなぁ。篤人君は麻美と結構取ってるもんね。」


「うん。麻美プリクラ好きだからね。どんどんたまってくよ。」





係に券を渡し、切り取られた半券を受け取る。自分の席に座り携帯をオフにする。大きなスクリーンを前に、自然とポップコーンに手が伸びる。

お茶で喉を潤し、ポップコーンに手を伸ばすとタイミング良くダイチの手に触れた。


「ごめん。」


思わず真海は呟く。


館内のライトが消え、大きいスクリーンが明るく映し出される。

キャラメルの甘い香りが漂っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る