衣替え

少し肌寒くなってきた。もう夏もすっかり終わり季節が秋に変わり始めていた。


雑誌を広げ流行りの秋服をチェックする。

明日の休日は久しぶりに麻美とショッピングに行く。服をメインに買い物するつもりだ。


「少し衣替えしようかな。」


タンスを開けて半袖などの夏服をベッドに重ねていく。

お気に入りで頻繁に着てた、レースが付いたシャツともしばらくお別れ。キレイにたたみ、季節外のボックスに移す。


衣替えも殆ど終わりあとは明日の着ていく服を選ぶ。少し悩んだが、この前母に買ってもらったセットアップに決めた。


衣替えをしてたせいか部屋を掃除したい衝動に駆られ、もう読まない雑誌やくたびれた夏服、古くなった靴下、数年前の日記を処分する事にした。


「懐かしいなぁ。小6の時の日記だ。」


あの頃は既に反抗期になってて、イライラしては母に八つ当たりしてた。それでも、他の子供と比べると全然激しくない反抗期。


『こんなつもりじゃないのに』と思っても、次から次に出てくるのは母への不満だったり無性にイライラしたり、自分ではどうする事もできなかった。その時の感情が正直に当時の日記に書かれていた。


「あの時はすぐにイライラしてたからな。思春期って不思議。」


最後のページまでいったとき、一枚の栞が挟んでる事に気付く。


「これ…うわー探してたやつだ!」


小学1年生の時に本屋で母に買ってもらった栞。綺麗な青空に雲が描かれている。シンプルだからこそ飽きがこない。ずっと大事に使ってたのに無くしてしまって数年経っていた。


「掃除すると良いことあるんだな。見つかって良かった。」




早速読みかけの漫画に挟んだ。

上から少し覗く青空の絵柄は、キレイになった部屋にとても馴染んでいた。

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