ティラミス
「ただいまー。」
「お帰り!焼きそば作っておいたよ。あと豆腐としめじも安かったから買っておいた。」
「ありがとね。助かるよ。そうだ、忘れないうちにお金渡すね。」
「いただきます!」
「んー美味しい。やっぱり焼きそばにはもやしがないとね。」
「確かに。シャキシャキしていいね。」
「真海、久しぶりの学校どうだった?」
「んーまぁまぁ楽しかったよ。そういえば転校生の男の子来た。」
「そうなんだ。珍しいねー。なんていう子?」
「青山…大地だったかな。親が離婚してこっちに戻ってきたみたい。5歳までこっちに居たんだって。隣町にいたみたいだし誰だか分からないよね。」
「そうだね。青山さんは知らないなぁ。どんな子だった?かっこよかった?」
「背高くて顔もかっこよくてモテそうな感じだったよ。落ち着いてる感じがした。」
「あらーそれじゃ彼女いるかもね。聞いてみたら?」
「えー別にいいよ。興味ないし。」
「何よー年頃の娘らしくないなぁ。高校生になれば付き合い始める人達も出てくるでしょ?」
「ていうか小学生から付き合ってる人達いるよ。」
「え?今そんな早くから付き合うの?すごいわ。」
「みんなマメだよね。私付き合うのなんて面倒だよ。漫画読んでる方が断然楽しい。」
「人それぞれたろうけど…お母さん少し真海が心配だわ。」
「別に心配いらないよー。私はちゃんと育ってるから!」
友達みたいに何でも言い合える母のことが大好きだ。母になら何でも話せる。いつも私の事を気にかけてくれる。
「そうだ。スーパーで新商品見つけて買ってきたよ!ティラミス!」
「お、いーじゃん。楽しみ。たまにはケーキもいいね。」
「だよね。新商品見ると試したくなるんだよね。」
「分かる。お母さんもそう。ティラミスといえば、お父さんの事思い出しちゃった。」
「何?」
「真海が5歳の誕生日の時の話なんだけどね。真海が『チョコレートケーキ食べたい』って言って、お父さんがケーキ屋で頼んできたのがティラミスだったの。それで、こんな苦いの食べられないって真海が泣いてね。」
母が楽しそうに笑う。そんな事あったっけ?
「それでお父さん慌ててスーパーにチョコレートケーキを買いに行ったの。帰ったら真海は泣き疲れて寝てるし、お父さん困った顔してたなぁ。懐かしいな。」
「お父さん、ティラミスの味知らなかったのかな。覚えてないなぁー。」
「多分写真探せば見つかると思う。」
「じゃあ見つけたら見せてね。」
お父さんとの思い出が詰まってるティラミス。
これからも食べる度にお父さんの困った顔が浮かんでくるだろう。
お母さんの笑った顔もセットでね。
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