トウモロコシ

空を見るとカラスがバサバサと飛び回っている。『早くよこせ』と鳴いてるみたい。

あげないよーだ。




バタン


「うわー、また車暑くなったね。サウナみたい。」


「窓全開にしよう。コンビニでアイスでも買おっか。」


「いーねー!」


ようやく見つけた駐車場に車を停めアイスを買った。

袋を開けると、すでに溶け始めてるアイスが顔を出す。

甘いチョコが暑さで疲れた体を癒やしてくれる。




「ただいまー。暑かったぁ。」


「クーラー付けてたから涼しいね。」


「そうだね。生き返るー。」


汗を吸ったシャツがひんやりと冷たく感じる。真海は別の服に着替えベッドに横になる。


(起きたばっかなのに疲れたな。全然動いてないから体力落ちたんだな。)


目を閉じた真海はいつの間にか眠ってしまった。






「真海!ちょっと来て手伝ってちょうだい。」


うわー。また寝ちゃった。

私は寝太郎か?いや、寝太郎じゃなくて寝太子か。




田舎のおばさんが送ってくれたトウモロコシの皮を剥く。


「全部剥かないで少し皮残してね。ヒゲは取っていいよ。」


「分かった。何本茹でるの?」


「今日は6本茹でて隣の青木さんにお裾分けするわ。」


「超いっぱい送ってきたね。ありがたい。今年も豊作だったんだ。」


箱いっぱいキレイに並べられたトウモロコシ。毎年この時期に送られてくる。


「わっ!」


「どうした?」


「虫いた!ビックリしたー。」


「新鮮だからね。真海の声の方がビックリだよ。」


「ごめんごめん。」


おばさんから貰う野菜はほとんど農薬を使ってないため、ほぼ虫がいる。


「話変わるけど、お母さん最近二人の夢見た?私全然見ないよー。」


「夢ねぇ。確か一ヶ月くらい前にお父さんの夢見たわ。いつもの椅子に座って新聞読んでた。」


「いーなー。何で私の所には来ないんだろ。」


「そのうち来るよ。葵の夢は去年見た以来見ないわね。」


「結構見てるじゃん!ずるーい!」


「今度夢に出てきたら二人にお願いしておくよ。『真海の所にも遊びに行ってちょうだい』って。」


「夢と現実の区別つくの?」


「どうだろうね。分かった時はお願いしとく。」


「怪しいなぁ。」


皮を剥き終わり鍋にトウモロコシを並べる。


「あ、お母さん団子とスイカどっち食べる?」


「どっちもあげる。お腹壊さないようにね。」


お墓のお供物を持ち帰って食べるのが笠井家のルールだ。

といっても、いつも私が食べてるんだけど。


お供物を食べ終わった頃、トウモロコシが茹で上がった。


「お母さん一本もらうね。」


「ちょっと本当にお腹壊さないでよ。」


「大丈夫。任せなさい。」


黄金に光る甘いトウモロコシが口いっぱいに広がった。

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