お供物

バタン


「ねぇ、お母さん。車クーラー付けてなかったの?暑すぎるよー死ぬー。」

「窓全開にして走れば涼しくなるわよ。さ、行くよ。」


窓辺から見えたキラキラと光る海には、海水浴ではしゃぐお客で賑わっている。


(海かぁ。久しぶりに見た。眩しい…)






「真海、これ持って来て。それにしても暑いね。帽子忘れないでよ。」

「分かってるよー。あー!日焼け止め忘れたー!」

「ほら、お母さんの貸すから使って。先行ってるから鍵閉めてきてよ?」

「うん、ありがと。」


顔、首、腕、足にこれでもかと日焼け止めを塗る。


(小さい時なんて日焼け止めなんか塗ったことなかったのにな。今は少しでもシミ作りたくないもん。)


帽子を被って、袋を持って母の所に行く。





「お待たせ。お母さんの日焼け止め塗りやすかった。ありがと。」

「でしょー?いいやつだもん。水汲み終わったし、行こうか。」

「うん。私持つよ。」




久しぶりのお墓。

カラスのフンや枯葉などで汚れている。


「少し前に掃除来たのに、すぐ汚れるのよね。」

「カラスもお供物狙いに来るからね。生きるために必死なんだよ。」

「そうね。前はそのまま置いてったけど。帰る時に持っていかないともっと汚くなるからね。仕方ないわよね。」


母と娘は黙々と墓掃除に取り掛かる。

キレイになったお墓にキレイな花を供える。

父にはみたらし団子、妹にはスイカを供える。二人の大好物だ。

線香に火をつけ、手を合わせる。


ここに、父と妹が眠っている。


二人とも一緒に過ごせてる?

みたらし団子とスイカ、仲良く食べてるよね?食べ終わるまで待ってるから急がなくていいよ。お父さん、葵。

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