第7話 ココちゃんの帰還
「師匠!! 先日言われていた、ゴブリンの脳を液状化させ探知レーダーにするやつが出来上がりました!!」
「ふむ。どれどれ……」
ガリくんがラボに入り浸ってから、早一週間ほど。
最初こそ、「こ、こ、こ、こりぇ……」みたいな感じでぎこちなかった二人だったが今はすっかり傍から見たら、いい感じの師弟関係である。
「ふぁ〜……」
ちなみに俺は、ずっとソファの上でゴロゴロしながら二人のことをチラチラ横目で見ながら格ゲーをしている。
この格ゲー、結構進んでて何とこの中世位の世界観でインターネット対戦ができるのだ。それがわかった俺は大はしゃぎ。
そうしてこうして今目の下にくまを作りながら、トップランカー目指してランクに入り浸っている。
つまるところ、引き籠もってゲームをしているのである。別に、前世と同じような生活をしていても全く罪悪感がない。だって今は、迷惑に思う人がいなかったり心配する人もいない。
よっしゃ! このまま一生、リージュの発明品を売ったときのおこぼれで生きていくぞ!
そう決意した。
したのだが……。
「なんだかなぁ〜……」
格ゲーをしていた画面を消して、ため息をついていた。
ゲームが飽きたわけじゃない。本当言うと、ずっとしてたい。だけど、自然と手を止めて画面を消していた。
俺の心は、一生ゲームをして暮らしたい。
だけど、無意識に心のどこかでこれでいいのか? と自分自身に問いかけていたらしい。
その結果が、ゲーム画面を消すだ。
もう、自分でも自分のことが嫌いになる。
何をしても中途半端でまともに自分の意志で、決めることもできない。そんな歯がゆさが嫌いになる。
コンコン
扉がノックされた。
渚は、どうせいつもくる変な宗教の勧誘だろう。そう思って無視したのだが……。
コンコン
二度目のノックをされた。
おかしいと思った。なぜなら、宗教の勧誘のノックはいつも一回だけだから。
「はぁ〜。なんなんだよもぉ……」
渚は重い腰を無理やり動かして扉に向かう。
ガチャ
「どちら様でぇ〜……」
扉を開けて、目の前にいた人物に目が止まった。
いるのは女の子。
紫色の長髪の女の子。
ここまでは、普通の女の子。だけどそれだけじゃ、目が止まることはない。
「ごくり……」
あるのは二本の角。
おでこから伸びている、虹色の角。
それはまるで、魔物のような……。
渚が目の前にいる、魔物らしき人物のことを怪しんで観察していると、
「勇者さん!」
見覚えのある茶髪をなびかせながら、ひょっこりと視界の中にココちゃんが現れた。
「ココちゃんか……。えっと、この子は知り合いなのかな?」
「はい……。その件なのですが、少しお話したいことがあります」
なんだろう。
マスコット的な存在のココちゃんが、どこに修行にいったのかよりも話したいことという方がすごく気になる。
「ささっ。その前にとりあえずこんなところで立ち話もなんだし、ラボの中でもはいろうか」
「われのラボだぞ」
後ろから小言が聞こえてきた気がするけど無視しよ。
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二人に疲れただろいと思って温かいココアをあげると、嬉しそうにしてちびちび飲んだ。
うん。
なんか、マスコットが増えた感じがしていいね。
「ふぅ〜……ありがとうございます」
「…………」
二人は、ぽかぼかした顔をしながら
ちなみに一度も、魔物らしき人物は喋っていない。ずっと無言でこくこく、と頷いて反応はしているので言葉が通じているのはわかる。
なんか喋ってほしいけど、無口っていうのもなんかマスコットとしていい感じのキャラ付けて、ココちゃんといい勝負をするかわよさ。
あっ、いやさすがにココちゃんにはかなわないけど。
「実はですね……」
渚がそんなふうに、のんきなことを考えているとココアの重たそうな唇が開かれた。
「私が、修行に行っていたってのは知ってますよね? 突然、行ったのは今謝ります。ごめんなさい……。具体的にどこに行ってたかというと、魔王軍幹部のことを倒してきました。そいつの名前は、ガリアリスって言うんですけど……あいつやばかったんです! ヘビみたいな体で……。あっ、ヘビってわかります? 体がニョロニョロしてる気持ち悪いやつなんですけど。って、そんなことはどうでもいいか。いけないない。私のバカ! ……で、その魔王軍幹部のことを倒したあとの帰路でたまたまであったのが、このチロちゃんっていう子なんです。チロちゃん……チロちゃんつて名前、かわいいてすよね。うへへ……。って、そうじゃなかった! ……おっほん。本題に戻ります。チロちゃんは木陰で、寝ていたのです。別に私は、お人好しじゃありませんし? 最初は通り過ぎて早く帰ろうと思ってたんですよ、急に修行に行っちゃったし! ですが、私と同じ位の女の子が一人ぽつんといるって思ったら見てみぬふりなんてできなくて……。それから、一緒にご飯を食べてお話して今に至るんです。あっ、別に私チロちゃんにここに来いって強制なんてしてませんよ。一緒に行こ? って言ったら行く! って、言ってくれたから同意の元なんです! あっ……でもやっぱり、勝手に連れてきたのは迷惑でしたよね……」
渚は……というよりか、このラボにいた人たちはココのめちゃくちゃ長い報告を聞いて唖然とした。
まず、俺たちに一言も途中で質問などさせずに言い切ったというのがすごいのだがそれよりも、内容だ。
この紫色の髪の毛で、角が生えている子はチロちゃんっていうらしい。二人のときは喋っていたらしいから、緊張でもしてるのかな……?
って、そんなことじゃなくて……。
ココちゃん、修行しに魔王軍幹部を倒しに行ったとか言ってなかったか? それも、当たり前かのようにココアをちびちび飲むくらいの軽い感じで。
魔王軍幹部。
その人たちが、どんな奴らでどれだけ強いのかなんて戦ったことがないのでわからない。だこど、魔王の幹部なのだ。そこらへんにいる魔物よりかは数倍、強いに決まっている。
「えっと、その……えっと……」
ココちゃんは、俺が何も反応しないで考え込んでいたのであわあわし始めた。
うん。まぁ、魔王軍幹部だとか聞きたいことは山ほどあるんだけどそれは今じゃなくてもいっか。
「大丈夫。全然、迷惑じゃないよ? えっと……チロちゃん。これからよろしくね」
「…………」
相変わらず、無口で何も言わないけど首をこれでもかと何度も何度も縦にこくこくと触っているので嫌な感じはしない。
別段、嫌なわけじゃない。だけど、ココちゃんだけしか聞いたことのないチロちゃんの声が気になる程度。
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