第3話 変態が拷問器具に拘束された
スライムを倒した変人の集まりである、勇者一行は冒険者ギルドに行って成功報酬をもらった。
冒険者ギルドというのは、魔物のことを倒す狂人集団。中には薬草だとかを採取する、まともな人間もいるが冒険者ギルドに属して働いている人たちはほぼ全員狂人なのだ。
その狂人集団の中にも、ランク付けがある。
一番下からGで、F、E、D、C、B、A、Sとなっている。その中で勇者である渚たちはそのどれにも入らない、超特権SSSランクなのだ。
なのでもちろん、ほかの狂人たちから羨ましく思われる。何もしないで優越感を覚えたのは、渚だけの秘密だ。
まぁ、なんやかんやあり終わった最初の魔物討伐。
報酬を受け取った渚たちは、今日の宿を探そうと仕事帰りの人たちが賑わう大通りのような場所を歩いていた。
「いやぁ〜。まさか、ココちゃんの剣にくっついてたスライムが希少価値があるものだったなんて。おかげで王は1グリスも金くれなかったのに今じゃ、10万グリス。マジでありがとう。もし、この金がなかったら俺たちが明日食う飯もなかった……」
そう。渚のことを勇者だとかのたまったくせに王から渡されたのは、いい感じの剣といい感じの服。まさかの、軍資金0なのだ。
「これでどうやって生きていくんだ!」そう言ったら、「勇者なんだからなんとかしろよ!」と言われたときの絶望感と言ったら渚の人生の中でもかなりトップクラスのものだった。
「いえいえ……あれは、みんなで倒したものです!」
あっ可愛い笑顔。
そんなの見ると、本当に勘違いしちゃうぞ!!
「ま、そういうことにしとくか」
「はい!」
「いやよく、ぷよよんぷよぷよ第一号の説明をきかずに、ココちゃんのことをスライムの中に閉じ込めた張本人がそんなこと言えるわね……」
なんかまた、小声でグサグサ刺さる言葉が聞こえてきた気がしたんだけど。
無視だ。無視。まぁ、たしかにシュラットが言ってることも事実なんだけどあいつはただの欲望に忠実な変態エルフだからな。
あぁ〜あ。スライムとの激戦は俺たちが勝ったんだし、早く宿で休みたいな。(何もしてない)
宿屋を探し始めて、早1時間。
いつの間にか、賑わっていた大通りも人気がなくなりさっきまで空にあった太陽は沈んで真っ暗になっていた。
「なんでだよぉ〜……」
ま、まぁ? ちょぉ〜と出店の串をみんなで食べ歩いたり、ちょぉ〜と見たこともない場所にウキウキしていたってのもあるかもしれないよ?
だけど。だけどさぁ〜。
「全然宿屋見つからねぇじゃん!!」
さっきからあっち行ったりこっち行ったりしてるけど、どこにも宿屋がない。
「むぐ? ほんなの、はありまえ。このくひには宿屋なんへ、ひっほもないんらから」
シュラットがなにか肉を頬張りながら言ってるから殆ど、何言ってるかわからん。だけど、「宿屋」「ない」っていうのは聞き取れた。
「……まじで?」
「うん。まひまひ」
こくこくと首を縦に振りながら肯定してきた。
まじか。まじでまじなのか。
うん? てことは、俺たち今日泊まる場所ないってことじゃん。
「どうしよ……」
宿屋がないってことは、まさか野宿!?
なにそれ……。ここに旅に来た人って、泊まる場所一体どうしてんだよ。
「まさか、今日の寝床がなくて困っているのか?」
どうしようかと悩んでいると、後ろからリージュがひょっこりと顔を出して聞いてきた。
困っているっちゃ困ってる。
だけど、スライムの時みたいなキラキラしている目を見ると素直に答えると嫌な予感しかしない。
はぁ〜でも、嘘はつけないし……。
「まぁ、宿屋がないんなら俺らどこで寝よっかな程度には困ってたんだけど……」
「ふっふっふっ……それなら、ちょうど近くにあるわれのラボに案内しようではないか!!」
ラボ。ラボって言ったら、研究所みたいなそんな感じの場所か。
あれ? なんかもっと、「ふふふ……こんなところで、いつでもどこでも永遠に眠ることができる最強の薬を使うことになるとはな……」みたいな感じの返しだと思ってたのに普通だな。
ラボ。ラボ。ラボ。
まぁ、野宿するより建物の中のほうがいいよな。
「ありがとう」
そんなこんなあってついに到着したマッドサイエンティストのラボ。
やはり……というべきか、ラボの中は一切整理整頓されておらずものが錯乱している。さらに地面には、なにかの発明で使ったと思われる得体のしれない緑色の液体まであってとてもじゃないが、寝れるような環境ではない。
「ひゃー!! ま、ま、ま、まさかこれって最新作のべびべびどーるプラスあるふぁですか!?」
「ぐひひぐひひ……。ご、う、も、ん、き、ぐ!」
なんなんだよもぅ……。
少し引いている渚とは違って、ココとシュラットはラボにあったものをみて興奮を隠しきれていないようだ。
「皆の衆! われの可愛い子どもたちが気になるのもいいのだけど、あんまりベタベタ触るんじゃないぞ。誤作動を起こして大変なことが起きてからじゃ遅いからな」
……なんかすごくフラグのように聞こえて仕方ないんだけど。
ガチャガチャガチャ
「きゃぁああああああ!!!!」
うん。やっぱりなんか起きるよね。
渚は苦笑しながら、悲鳴が聞こえてきた方を見てみる。
「ぐひひ。ぐひひ……。きょ、きょ、きょ……きょれしゅごい!!」
いたのは両足を、拷問器具のようなものです固定されている変態。足が真上にVのように固定されてるので、パンツが丸見えだ。
白いパンツって……。一応エロフなんだから、まピンクの色気ムンムンのパンツにしろよ。変に見えないところで清楚っぽかったら、なんかパンツを見せられてる俺が恥ずかしくなるじゃん。
「はぁはぁ……しゅご、しゅご。見られ、見られりゅと興奮しゅりゅぅうう!!!!」
あっ。そうだ。こいつ、マジで変態だったんだ。
何、エロゲでしか見たことない女の下着をリアルで見れて変な感想のたまってんだよ。これじゃあ、俺も変態の仲間入りじゃねぇか。
「とりあえず、どこかに布団でも敷いて寝るか。リージュ。なんか地面に敷くものとかないか?」
「ん? あぁ、それなら……」
一人は拷問器具に体を拘束され「しゅごぉ〜!!」と奇声を発しているのだが、他の三人は川の字のようにかりながら眠りについたのだった。
このときは知らなかった。
マッドサイエンティストのラボで寝るということは、どれほど危険なのか……。
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