最終話 月に照らされた佩玉
冷たい川の水に入ったのに、平気だった
「短い休暇……だったな」
天籟はかなりグチグチ言って休暇を伸ばそうと捧日を困らせたが、月鈴も後宮に帰るので渋々部屋をでる。森を出る前に見送ろうとする月鈴に
「これは佩玉ですね‼ もしかして手作りなのですか」
「日数がなかったから、職人に手伝ってもらったけどな……」
月鈴は佩玉を太陽にかざした。翡翠はおうとつのある半円だった。
「ところで、この翡翠の半円の形に何か意味はあるのですか? ふつうは穴のあいた円形だから不思議だと思って」
「
「天籟さまとお揃いですね! わたしお揃い、欲しかったんだ」
嬉しそうに腰に佩玉をつけ、笑う月鈴。
(たまには素直になってかわいいな……よし)
「……ゴホンッ。月鈴、たしか隠ノ領で取れた翡翠は、満月の光に照らすと光ると聞いたが……」
「ええ、常世川から流れてくる特別な翡翠なんですって」
天籟はさりげなく月鈴に近づき甘い声でささやく。
「今度……いっしょに月を見よう――な?」
天籟は月鈴の手に触れ、つうと指を滑らせて絡め、きゅっとにぎると、手を引き寄せ指先に
天籟は長い髪をなびかせ、切れ長の艶めいた瞳でのぞきこみ顔を近づけた。月鈴の鼓動はトクンと跳ね耳まで真っ赤になった。
「は……はぁぁ。もう! そうやって各国の公主を口説いていたのね⁉」
いい雰囲気になったつもりの天籟だったが、月鈴の反応は違った。
「何の話だ……?」
「宴の日、諸侯に捧日さんが言ったらしいですね。わたしの故郷だから御戯れしませんって、じゃあ他所ではしているのね? 侍女が話していたって
月鈴は鋭い鷹の目のように睨む。
「それは、誤解だ~」
天籟の叫び声が森にこだまする。
***
ガラガラガラ……。
再び本土に戻り、馬車にゆられ頬杖をつき憂鬱そうな天籟は捧日にぼやく。一話冒頭とほぼ同じ状況。
「妻を口説いて怒られるのって何なんだ? オレたち両想いのはずなんだけど、ブツブツ……」
「ははぁ。月妃さまは森の中で鷹とばかり会話していたので、恋愛経験はほぼないかと……。長期戦ですね。それならば、他所で女を作ればよいのです。あなたは帝ですから」
天籟に同情しつつ、ぴしゃりと捧日はいう。
「い・や・だ。もし見つかったらそれこそ二度と口を聞いてくれなくなりそうだ。女人の情報網は早い上、歪曲しているのに皆信じるから余計に
月鈴に睨まれたことを思い出し身震いする。
「相手を理解するには、まず夫婦の会話がたいせつですね。では、なるべく早く会えるように日程を組みますね」
「そうしてくれ。それと
「はい」
腰に佩いたお揃いの佩玉が揺れる。天籟は扇子を仰ぎ窓の外を眺めた。
月夜の佩玉 完
「月夜の佩玉編」までお読みいただきありがとうございます(≧◇≦)タグ通りこれで溺愛になりましたか? たぶんなりましたね(゚∀゚)⁉ ここまでお読みくださり感謝ですペコリ(o_ _)❀
まだ10万字達成してないので、ここからは雲嵐編です。
よかったらお暇なときにでもどうぞ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾📚
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